第28話「この後、ホテルにでも行きますか?」


「どうですか?」



俺の目線の下から、上目遣いでそう聞いてくる年上のお姉様は、俺の顔を紅潮させるのに十二分の可愛さがあったわけで・・・。



「あはは。秋斗様また顔が赤くなってますよ」



そう言われる度に、恥ずかしくて死にたい気持ちになりました。



「あ、でも美味しいです」


「そうですか? 高崎だと、結構食べられてるんですよ」



年上のお姉様こと財務大臣のアーヘンと、今現在は夜ごはんを食べている最中。


お店選びをアーヘンに任せたところ、「どうせなら国民食的なものを食べましょう」ということになり、今はそれを食べている。


その国民食というのが、『キーザ・サンド』。


サンドウィッチ形式で、中に目玉焼きとチーズ、ベーコンなどが入っている、朝食とかで食べそうなあれだ。


焼きそばパンの焼きそばが入っているところに、スクランブルエッグとスライスチーズをぶち込んだのも、同じ『キーザ・サンド』として扱われるらしい。


そしてここで一つ疑問。



「キーザ・サンドの、キーザってどういう意味ですか?」



サンドは何となく・・・というか、ほぼ確実にサンドウィッチとかのサンドだろうけど。



「そうですね。恐らくですけど、ドイツ語のKäse(キーザ)からきていると思います」


「それ、翻訳するとどんな感じなのか?」


「チーズですね」


「あぁ、まんまだな」



なぜキーザだけドイツ語にしたのか不明だが、まぁチーズサンドってよりかは馴染みがなくてカッコいい気がしなくもない。



「えっと、この飲み物は・・・?」



ワイングラスに入っている時点で何が入っているかは察しているのだが、一応何が入っているのか分からないので聞いてみる。



「ワインですよ」



ですよね。



「あ、もしかしてワイン嫌いでした?」


「いえ、ワインは好きですよ」



まだ一回しか飲んだことないけど。



「そ、そうですか。私なんかに気を遣ってくださり、なんだか申し訳ないです」


「いやいや、本当に嫌いじゃないから」


「本当ですか?」


「も、もちろんだ」


「では、なぜ今言葉がつっかえたんですか?」


「え・・・いや、まぁ」



アーヘンが「本当ですか?」と言っている姿に見惚れていたから・・・なんて痛々しいこと言えるわけがない。


だって可愛かったんだもん。しょうがないでしょう? うん、しょうがない。


とはいえ、このままではアーヘンにあらぬ誤解をされてしまう。



「あ、アーヘンさん」


「はい?」


「その、今日は付き合ってくれてありがとうございました」


「え・・・ふぇ!?」



いきなりお礼を言われたことに、表情からわかるほど驚いている。


とりあえず話をそらすことには成功した。


もちろんお礼も口だけではなく、心からのお礼だ。


実際今日は色んなことを勉強したしな。



「えっと、世間知らずなとこもあるけど、良ければこれからも、俺の勉強に付き合ってくれると嬉しいかな」



これもこれで痛々しいかもしれないが。



「はいっ!」



アーヘンが嬉しそうなので良いとしよう。


その後、食事代は本当に割り勘となりました。



「本当に割り勘なんだな」


「これが普通ですよ」



もしかしてこれもドイツ式なのか? と思ったけど、適当なことを言ってはドイツの人に失礼だよな。


うん、帰ったら爆速 Wi-Fi を使って調べてみよ。



「秋斗様はこの後、どこか行きたいとことかあるんですか?」


「俺はないかな」


「そうですか。まぁでも、もう夜も遅いですし・・・」



現在の時刻は22時頃。


少し名残惜しいけど、もう帰ってもいい時間だろう。


と、思ったのだが・・・。



「この後、ホテルにでも行きますか?」


「はい?」



斜め上すぎる質問をされて、正直戸惑いを隠せない。



「いやいやいや、俺、まだ十七ですよ!?」


「それがどうかしたのかしら」


「え・・・いや、そういうのはですね、もっと・・・その」



なんか、恥ずかしくて言葉に出せなかった。

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