第22話「五分で帰ってこい」


「前々から思ってたんだけど、秋斗ってなんで中途半端に敬語なの?」


「そりゃ、エマは一応、一応 国王様ですから」


「今なんで二回言ったの? まぁいいけど、私的には、敬語じゃない方がやりやすいわね」


「メリハリは大事だと思うけど」


「それは貴方の価値観。私は私の価値観に従ってやってるのよ」


「そうですか。まぁ敬語じゃなくてもいいけどさ」


「じゃあ決まりね」



ということで、話の続きをします。


カリホルニウム王国には、中央政府の他、地区と呼ばれる、日本の都道府県みたいな立ち位置の行政機関が存在する。そしてその下に、市区町村がある。


今回議題になっているのは、その地区の財政難に関してだ。



「調べたところ、ほぼ全ての地区が財政赤字なんだよね」


「へー、そーなんだー」


「他人事じゃないぞ」


「私に何ができると言うんだね」


「だから、支援するんだよ」


「お金をばらまけと?」


「正確には交付。各地区の財政を考慮して、年に一回お金を交付

するんだ」


「そんな予算どこにあるのよ。というか、お金のことはアーヘンを頼ってちょうだい」


「じゃあここに呼ぶしかないですね」


「いや、他でやってよ。私を巻き込まないで」


「それが貴方の運命(さだめ)です。運命と書いて定めと読むのです」


「I don't understand what it means」


「日本語以外の言語なら本人の目の前でも悪口言っていいわけじゃないですからね?」


「ナゼワカッタ」


「いや、意味はわからなかったけど、何となく想像できるんだよ」



知らない言語でも、バカにされてる感じはしっかり伝わってくるからな。



「マジかよ天才じゃん」


「すげぇバカにされた気分だ」



ということで、アーヘンに来てもらいました。



「すみませんね。仕事中に」


「いえいえ、秋斗様の・・・いや、国王様のお呼びですから」


「ありがとうございます。では早速話を・・・って、どこいくねんわれぇぃ」



ひそひそと部屋から逃げようとしたエマを、睨みつけるように呼び止める。



「いやほれ、あれよ。お花を摘みに・・・ね?」


「五分で帰ってこい」


「女の子にそんなこと言わないの」


「じゃあエマの性別は今日からその他だ」


「その他!?」


「男の方が良かったか?」


「いや、そもそも私は女の子なのだが」


「五分で帰ってこい」


「五時間だね」


「五分だ」


「え、五日?」


「五分だ」


「あ、五年」


「五分って言ってるだろ?」


「五十年記だね」


「頭ありますか?」


「あるわぼけぇ。というか、早く行かせてよ。なに秋斗、ここで漏らす私が見たいわけ? そんなエ○ゲみたいな展開がいいわけ?」


「エ○ゲにそんな展開あるのかよ」


「エ○ゲは広義だからね」


「わけのわからんこと言ってないで、さっさと行ってきてください」



絶対五分じゃ帰ってこないだろうけど、だからと言ってこの部屋に閉じ込めて漏らされても困るからな。


まぁしょうがない。



「じゃあ、先に始めますか」



どうせ帰ってこないんだし、待っても仕方ないかな? と思い、そう提案してみたが。



「一応、エマ様が帰ってくるまで待ちましょう」


「あ・・・はい」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る