第14話「德永◯明さんかな?」


「あーーーーーーーー」


「どうした、また叫んで」


「An èiginn as motha ann am beatha」


「え? なにどうした?」


「Cha robh dùil agam gun tachradh seo!」


「あのー、エマさん?」


「はっ!?」



やっと日本語を話してくれた。



「んで、どうしたんですか? 急に・・・ドイツ語? を喋り出して」



英語には聞こえなかったし、この人のことだからドイツ語だろう。



「いや、あれはドイツ語じゃないわよ」


「えぇ・・・じゃあ何語なんですか」


「スコットランド語よ」


「またマイナーな・・・和訳して下さい」


「人生最大の危機、まさかこんな事になるとは思ってもいなかった。みたいな感じよ」


「は、はぁ」



もはやそれが正しいのかすらわからない。


アクセントも強ければ、スピードも速かったので、英語が得意でもない俺からすれば、聞き取るのは至難の業だ。



「それで、何があってスコットランド語なんか喋り出したんですか?」



というか、どこでスコットランド語なんて習得したんだよ。



「あぁそれね。私の壊れかけのrラディオがとうとう壊れてしまったのよ」



德永◯明さんかな?



「ってか、今のラジオの発音、ドイツ語意識したでしょ」


「なぜバレたし」


「レディオって発音するのが英語だと思うので」



あとはRのところで巻き舌にしていたせいか、rラディオって感じで聴こえて、それがなんとなく英語じゃないと思ったからです。


イタリア語に近い感じかな?



「英語も色んなアクセントがあるから、分からないわよ?」


「ソウデスネ」


「棒読みやめぇ」


「というか、ラジオ壊れちゃったんですか?」


「そうなのよ。何も聞こえないし、何も聞かせてくれなかったラジオが、ついに壊れたのよ」



德永◯明さんかな?(二回目)



「というか、それもう壊れてたんじゃ?」


「僕の心をノックしてたから、壊れていなかったわ」



德永◯明さんかな?(三回目)



「そして毎晩、本当の幸せを教えてよ、とか、ラジオに問いかけていたんですか?」



さすがにこれはないか・・・。



「なぜわかった!?」



と、思っていた時期が私にもありました。


この人 ものすごく德永◯明さん大好きだな。


しかもエマの机に置かれてるラジオ、黒色なんですよね。


もはや意識しているのは明々白々だな。


もし歌詞通りにいくのなら・・・おや?



「恋に破れそうな胸」



歌詞にそんな言葉があった気がする。



「エマって恋してたの?」


「何言ってるのかしら、この人」



あ、そこは違うのね。

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