第15話「アル中しかいなさそう」


カリホルニウム王国。俺が転生してきた『異世界』にある国だ。


人口は8000万人ほどで、経済は資本主義。主産業は都市によって様々だが、主にモノづくり、つまり製造業が多い。


政治に関しては、カリホルニウム家が取り仕切る立憲君主制だ。


以上のことは、今現在で分かっている。


そして現職の国王というのが、エマ・ロステリア・ヒーテリック・アルカナ・カタルシス・フロンティーナ・ファーニング・ラストフェルト・アリーヌ・フェルゼン・ミリーナ・ソフィア・カリホルニウムと、まぁとてつもなく長い名前なんですけどね。


そのエマさん、見た目はすごく幼く、身長は150センチほどに見える。


んで、俺は気になったわけなんですよ。



「エマって、何歳なんだ?」



国王であるなら、それなりの年齢なのだろうとは思うが・・・まぁでも、政治的、社会的な知識は皆無だし、ある程度の年齢なら、そのへんの教養はあっても良いような気はするが・・・とにかくなんとも言えないところなのだ。



「そういう秋斗は何歳なのよ」


「あれ、俺の年齢言ってなかったっけ?」


「聞いてないと思うわ。聞いていても、今分からないのだから教えなさいよ」



このいちいちムカつく言い方、なんとか出来ないんですかね。



「俺は十七歳だが」


「え・・・まじで?」



目をポツリと開けたまま固まるので、恐らく想像していた年齢とかけ離れていたのだろう。



「ってきり、二十歳以上だと思っていたわ」


「さすがにそれはないだろ」



俺ってそんなに老けて見えていたのか・・・少しショック。



「んで、エマは何歳なんだよ」


「私は十九歳よ」


「え、年上なの!? 年下だと思ってた」


「私もよ。秋斗は頼れるお兄ちゃんだと思ってたのに」


「頼れるって、頼りすぎなんですよ」


「いいじゃん別に」


「お姉ちゃんなんだから、しっかりと公務して下さい」


「弟に甘える姉もいると思うのよね」


「いや、そもそも俺 弟じゃないし」



というか、十九歳でその頭なのか。この人本当に大丈夫なのか?


いや・・・あれ待てよ?



「お前、この前酒飲んでなかった?」



確か、経済産業大臣のアルトナと。


あの時は公務中という理由で、飲むことを阻害したが、よくよく考えれば「なに未成年のくせに酒飲んでるんだよ」って話になるわな。



「なに言ってるの?」


「いや、それはこっちのセリフだわ」


「はぁ・・・ガッカリだわ」



やれやれ・・・と、首を左右に揺らす。



「秋斗、ドイツについて勉強したんじゃないの?」


「あぁ・・・まぁ少し」


「勉強不足ね」


「えぇ」


「ダメだね最近の若い子はぁ」


「答えを教えてください おばさん」


「誰がババァだ」


「言ってないがな。んで、どういうことだよ」


「我がカリホルニウム王国は、十八歳から全ての種類の飲酒が可能よ」


「アル中しかいなさそう」


「そして、十六歳からはアルコール濃度が低いビールやワイン、シャンパンなどが飲酒可能よ」


「アル中しかいなさそう」(二回目)


「さらに、十四歳からは親同伴で、さっき言ったアルコール濃度の低いお酒が飲めるわ」


「アル中しかいなさそう」(三回目)


「それしか言えんのかいこの猿」


「というか、俺も飲めるんだな」


「今日あたり乾杯しましょう」


「なぜそうなる」


「んでこれ、ドイツと同じ制度なのよ」


「ドイツってアル中しか」


「おっと、それ以上はご法度」



日本だと「お酒は二十歳から」っていう謎の決まり文句的な何かそう言ったものがあるが、まぁそこら辺は文化の違いなのだろう。


ドイツやその周辺のチェコ、オーストリアの人たちは、日本人からすれば異常なほどビールを飲むというのは聞いたことがある。



「んで、私と飲むの?」


「飲みます」


「飲むんかい」

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