第12話「なんなら今からでもいいわよ」
「国土省のメルン・シュレース・ヴィヒホル・シュタインと申します」
エマのワークルームにやってきたミドルネームが二つで金髪ロングの女性。
そしてもう一人。
「経済産業省のアルトナ・ハンブルクです」
こっちも金髪の女性だが、ショートである。
二人とも見た目は大人っぽいのに、綺麗な金髪だ。
そんな二人、様相は似ている・・・と感じるのは、同じ制服を着ているからだろう。
だが、昨日会ったアーヘンは制服を着ていなかったな。まぁ細かいことは気にしない戦法でいこう。
うーん、やはりと言うべきか・・・どっちもドイツの地名だよな。
国土省のメルンに関しては聞いたことがないが、さすがにハンブルクは知っている。ドイツの港湾都市だ。
この流れだと、国土省のメルンもドイツの地名だろう。
そう思って調べたら、案の定でした。
いやー、スマホって便利だなぁ(棒)。
「どうした?」
エマがスマホ片手に、訪れた二人の大臣に向かってそう言うと、国土省のメルンの方が数枚の束になっている紙をエマの机に置く。
「鉄道建設に関するそれです」
「どれよ」
「それです」
「それなのね」
「それなのです」
何のコントですか。
「まぁいい、そういうのは秋斗に回してよ」
すっげぇ投げやりだな。この人たちって、国王であるエマの印が欲しいんじゃないのか?
とはいえ、俺が一回 目を通さないといけないんだろうし、ここは受け取っておきますか。
「もらいます」
そう言うと、その紙の束を俺の手の上に乗っけてくれた。
紙は八枚程度、だが文字やら何やらがぎっしり詰まっているので、確認作業は大変だろうな。
それからメルンが退室していったので、さっそく確認作業に入ろうと・・・って、なぜかまだアルトナが残っていた。
彼女はなぜここに居座り続けるんだ? と思ったら。
「エマさん、沼田の方から美味しい林檎酒が届いたんです。今夜どうですか?」
「いいね。なんなら今からでもいいわよ」
ただのお誘いでしたか。
まぁでも、聞き捨てならないことを言っていたので、こっちも言いたいことは言います。
「公務が終わってからにして下さいね」
昼間っから飲むなんぞ言語道断だ。
「秋斗、私はすでに公務をしていないわ」
「じゃあ早くしてください」
「え・・・するって、秋斗のえっち」
「なんでそうなるんですか!?」
アルトナには帰ってもらいました。
気を取り直して、確認作業に移るとしよう。
「交流電化、標準軌、カーブ半径・・・は?」
書いてあることが専門的すぎて全く理解できないのだが・・・。
とりあえず、予算が5兆6800億円で、工事期間が四年半ということがわかった。
予算はこちらで用意しないとな・・・。
「ほら、エマがここに印を押せば採決だ」
「わかったわ」
ポンっと、エマが重々しい印鑑を押して、正式に採決がされた。
その調子で、前々から考えていた所得税に関しても、一律 3パーセントの増税を行った。
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