第11話「前にもこんな会話あった気がする」


「エマ、少しいいか?」


「なによ」


「叫ぶなよ?」


「・・・あーーーーーーーー」



鼓膜があの世に召されるかと思いました。



「あの、私はこれから別の予定があるので」



そしてアーヘンも退室宣言。



「あ、そうなんですか」


「鉄道建設に関しての件は、国土省や経済産業省とも相談しつつ、こちらで進行させてもらいますね」



そう言い、アーヘンは退室した。


ということで、税目の話に戻る。



「エマさん?」


「なによ」


「いい加減ソシャゲやめません?」


「いまイベラン中なのよ」


「知らんがな」


「ちょっとは空気読みなさいよね」



いや、それはこっちのセリフだわ。


そんなの仕事中にやるもんじゃないだろ。



「はぁ・・・仕方ないわね」



大きくため息をし、ソシャゲをやめてくれました。



「私、少し気になったことがあるのよね」


「お、何ですか?」


「アーヘンって、あなたに気があるんじゃない?」


「なんだ、税目の話かと思いましたよ・・・って、えぇっ!」


「だってそうじゃない。アーヘンって普段あんなキャラじゃないわよ?」


「そうなんだ」


「秋斗はどうなの?」


「と、言いますと?」


「アーヘンのことよ」


「あー・・・」



そういうことに関しては疎いからな。まぁ年上はタイプだけど。



「まぁ秋斗じゃねぇ・・・アーヘンは後悔することになるだろうね」


「おいそれはどういう意味だ」


「いろんな意味」


「話変わるけど、俺がこの世界にやってきた時にいた、あのメイドさんはどこにいるんだ?」



あのメイドさんとは、俺と咲を国王であるエマのところまで案内してくれた、あのメイドさんだ。


国王直属のメイド・・・みたいなことを言っていたけど、あれから姿を見ていない。



「会いたいわけ?」


「もちろんだ。くっそタイプだったし」


「はぁ・・・ちゃんと仕事しなさい」


「そのセリフ、そっくりそのまま返します」


「あらまぁ、国王様になんてことを言うのかしら」



こいつ、ほんとイラつくな。



「税目増やすんでしょ? このエマ様が付き合ってあげますよ」



こいつ、ほんとイラつくな(二回目)。


とはいえ、仕事をしてくれるのならこっちとしては好都合だ。


この際、決定まで持っていこう。



「やはり、直近で楽にできるのは、所得税の増税だろうか」


「じゃあそれで決定ね」


「適当だな。まぁエマがそう言うならいいけど」


「面倒だからね、仕方ないね」



面倒という理由で振り回される国民たちカワイソス。



「ちなみに、三パーセントの増税でどのくらい歳入が増えそうか?」


「秋斗・・・歳入って何かしら」



なんか、前にもこんな会話あった気がする。


さっきからスマホ弄ってるんだから、それで調べろよな。



「行政機関の収入のことだ」



まぁ時間がかかるので、今回は俺が先に答えを出す。


というか、君主様なら歳入ぐらいは知っていてほしいところ・・・と思ったが、公共サービスという単語も知らなかったぐらいだし、仕方ないのか。いや、仕方ないで終わらせていいわけないんだけども。



「私のパソコンだと、所得税は年間で20兆円ほどよ」


「労働人口は?」


「自分で調べなさいよ」



こいつ、ほんとイラつくな(三回目)。


調べたところ、カリホルニウム王国の人口は8000万人ほど、労働人口はその中の4800万人ほどということがわかった。


4800万人で20兆円とは、かなり多いんだな。


日本の労働人口は約5500万人ほどと聞くが、それで所得税の歳入が19兆円ほどなので、差は明らかだ。


税率が高いのか、そもそも国民の給与が高額なのか。


まぁ何がともあれ、所得税を三パーセント増税すると・・・。



「電卓あるか?」



さすがに暗算は無理です。


電卓を叩いた結果、年間6000億円ほどの歳入が見込めることがわかった。



「まだ・・・足りないかな?」


「なんで疑問形なのよ」



6000億にプラスして、現状のままでもらえそうな年6000億を加算すれば、1兆2000億円になる。


ってことは、予算的には足りているのだが。



「悩ましい」


「悩ましいのか」


「そう、悩ましいのだ」



何が悩ましいって、予算云々もあるけど、それよりもエマが公務中にエ◯ゲをやってることだよ。


さっきソシャゲをやめたばかりなのに、いつの間にかパソコンでエロゲをやっている君主様。


国民よ、こんな国王でいいのか?



「今すぐやめろ」


「いいじゃない。女の子だって、えっちなこと考えるときは考えるのよ」


「そういうことを聞いてるんじゃない」


「じゃあどういうことを聞いてるのよ・・・まさか、秋斗は私でそういことを考えて・・・」


「あ、それだけは絶対にないんで」



冷静沈着になり、声のターンを一定にしてそう言う。



「それはそれで、なんだか傷つくわね」

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