第5話「また懐かしい単語ね」
「二刀流って、やっぱいいわよね」
「宮本武蔵のことか?」
「いや、某アニメの」
「誰だよ」
という茶番はさて置き、税目を増やす話を進める。
「何を増やすのかしら、楽しみだわ」
あ、これ早々にサジを投げられた感じですかね。
「うむ、エマは以前に消費税が良いみたいなことを言っていたが、正直あれはオススメできない」
「いや、あなたが提案したんじゃない。私は何も言ってないわよ」
もっともな発言すぎて全米が泣いた。
「結論から言うと、揮発油税をオススメする」
「きはつ?」
「いわゆるガソリン税だな」
「ガソリン? また懐かしい単語ね」
「え、懐かしい?」
「ずいぶん前に、ガソリン車は全廃したからねぇ」
どんだけ近代化が進んでるんだよこの国。
これもしかしなくても、俺や咲がいた元の世界より科学技術発展してるぞ!?
「ま、まさかガソリン車が全廃されているとは・・・。だったら、そこら辺にいる車の燃料は?」
今いるビルの窓から目線を下に向けると、点に等しいほどに動き回る自動車が見受けられる。そいつらの燃料はどうなっているのだろうか。
「そうね。電気と水素が主流かしら」
「電気・・・水素」
この異世界、現代なんかじゃない。近未来ですらあるぞ。
「なら、揮発油税は無意味か・・・」
「そうよ。もっと勉強しなさい」
なんかすごいブーメランが突き刺さってる気がするが、俺はもう何も言わない。
「というか、ガソリンに税を作って、何をするのよ」
「いや、高速道路を都市間で結んで、移動を活性化させようと思ったんだけど」
そもそも税目を増やす真の目的が、首都である高崎から、地方の各都市までを結ぶインフラ整備をするためだ。
んで、その代表格が高速道路、それを建設するお金は、利用権がある自動車を使用している奴らから徴収しようと思った、ただそれだけなのだ。
「まぁ電気や水素が燃料なら、それに税目を置けば・・・」
「それらのスタンドは国営だから、税金を課すのは気がひけるわね」
「マジか・・・」
「んで、どうするのよ」
「エマも少しは考えてよ。あんた君主でしょう?」
「別に、好きで君主になってるわけじゃないんだけど」
だったらさっさと民主化しろ。って言いたいけど、君主様に気に入られてるからこそ、俺や咲はこの異世界で暮らしていられる。なので、少なくとも俺と咲が生きている間に革命が起きるのは、あまり好ましいことではない。
「こんなのはどうだろうか」
そう言い、近くにあったメモ用紙を拝借する。
メモ用紙の中心に点を置いて、そこに『高崎』と書き込む。
「昨日見た国内地図だと、高崎が中心で、そこから各都市までは放射線状に散っているんだ。その距離も、近くて三百キロぐらい、遠くて一千キロぐらいと、非常にまばらだ」
「そうね。距離があるのがネックなのよね」
「これらの都市の移動を活性化させたいのなら、高速輸送をする他ない」
「だから高速道路なんじゃないの?」
「いや、高速道路だとまだ遅い」
さっきは高速道路を建設するみたいなことを言ったが、高速道路の最高速度は時速100キロ、海外だともっと速いとこもあるらしいが、俺は日本人なので、高速道路の最高速度は100キロのイメージだ。
時速100キロと言うと、非常に速いイメージがあるかもしれない。だが、鉄道で言うなら在来線並みだ。高速と呼べるのかは怪しいところ・・・。
「というか、高速道路が高速じゃないのなら、それ名称詐欺じゃない」
「いや、捉えようだろ」
一般道路よりかは高速であることに間違いはない。
「じゃあ聞くけど、どんな輸送方法が効果的なのよ」
これも難しい問題だ。
「高速性だけを重視するなら飛行機。大量輸送と高速性を兼ねるなら鉄道。運営費を安価にし、利益を上げやすいのが高速道路。と、言ったところだ」
「なら高速道路しかないじゃない」
「お前本当にお金大好きだな」
「当たり前だ」
「でも、都市間の大動脈になるなら、飛行機や鉄道の方が、むしろ大きな利益を上げることだってあるぞ」
「じゃあそれにしましょう」
「手のひらクイ○クルワイパーだな」
「あれいいわよね」
「普段掃除とかしないでしょ」
「は? 秋斗くん私が家事とか何もできないダメダメドジっ子なかわいい女の子だと思ってない?」
ドジっ子ではないと思うが、それより前者は事実でしょう。
「というか、話が脱線するから変に食いついてこないでくれ」
「あなたから言い出したことじゃない」
もっともな発言すぎて以下略。
「というか、秋斗は何が言いたいわけ? 税目を増やしたいって話から、なんで都市間の移動に関することに話が変わってるのよ」
「そりゃそうだろ」
直近で解決したい課題は、都市間の移動。
つまり、新たな税目の使い道はそれ関連になるわけだから、それに全く関係のない人まで納税を課せるのは、あまり良策とは言えない。
「私には秋斗の言ってることが分からないわ」
「これ何度も言ってるけど、よくそんなんで君主が務まるよなぁ」
「アタイったら天才ね」
「ばーかばーか」
結局、この日に話が進むことはなかった。
話が脱線しまくるし、大したことしてないのに疲れました。
これ、俺の前の側近の人は、さぞ大変だっただろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます