第6話「またドイツの地名か」


「アーヘンから提案書を出さないとぶっ○ろすって言われたわ」


「かなり物騒な言い方だな」



俺が異世界転生してから三日という月日が流れた。


いやまぁ、たった三日でこの世界、この空間に慣れてしまっている俺もどうなのかと思うけどさ。


それで、今は昨日グダグダで終わってしまったことについて話している。


『こと』と言っているのは、既にこの話の方向性が迷子の迷子の子猫さんになっているからだ。そんな状態で話を進めても、またグダグダになるに違いない。そう思っていたのだが。



「あの、アーヘン・・・さん? って誰ですか?」


「アーヘン・ヴェストファーレンよ」



あぁもうわかった。ヴェストファーレンという名前は聞いたことある。



「またドイツの地名か」



ドイツの地名が人名で出てきたのは初めてだが、ドイツ関連はよく出てきているので、いい加減飽き飽きしている。



「ちなみにアーヘンも地名よ」


「はいはいワロスワロス」


「あの人真面目すぎるのよ」


「貴方が不真面目すぎるだけだと思います」


「いい度胸じゃないか。私に向かって」


「それで、提案書とは?」


「無視かよ。まぁそうね。政策の提案をするもので、何をどうしたいのか、そしてその予算はどんな感じか、それによる効果はどのくらいなのか・・・みたいな感じのをまとめたものよ」


「完全に雑務だな」


「よろしくね」



にこっ☆。みたいな表情をされる。これはつまり。



「俺に丸投げか」



そういうことです。



「よろしくね」


「わかりました」



忘れかけていたが、俺はこの人の側近だ。雑務は本来の仕事と言えよう。



「これがそれよ」



そう言い、エマは自身の机の引き出しから、一枚の紙を取り出す。



「これは?」


「提案書の書き方よ。いつの日かアーヘンがくれたのよ」



その紙には、書くべきことが事細かく記載されていた。


こんな書き方の参考書があるというのは、この人(エマ)の書く提案書が余程酷かったのだろう。あいや、それは俺の前の側近がやっていたのでは?



「そう言えばなんだけど、俺の前の側近は誰だったんだ?」


「側近? あなたが初めてよ」


「いなかったのか?」


「だから大変だったのよ」


「は、はぁ・・・」



色々とツッコミたいところだが、まずはこの提案書を作成しよう。


今手に持っている書き方の参考書を見る限り、かなり面倒なことをする必要がありそうだから。

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