第21話 お話合い

カクヨムコン終わったので、更新再開します。

暫く更新できずすみませんでした。不定期更新ですが、

読んでいただけましたら幸いです。

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「ちょっとパパ。一体どういう事よ!」

 私は業務が終わるなり直ちに自宅に直行し、今日噂されていた旦那さん募集の件について、問い詰めることにした。

「友香ちゃん、会いたかったよーー」

 私がパパの書斎に殴り込むなり、パパに抱きしめられぎゅーっとされた。会うのは半年ぶりくらいだからそんなに会っていない訳ではないと思うのだが、パパ的には、毎日でも会いたいらしい。

 っと、そんな場合ではない。

「ちょっと、離してよ! それよりも、あの募集は一体どういう事なの! ちゃんと説明して!」

「もう、久しぶりに会ったというのに、相変わらず冷たいなー、友香ちゃんは」

 いっこうに説明しようとしないパパをギロリと睨む。

「わかった、わかったから、そう睨まないで。可愛い顔が台無しだよ。般若みたいになってるよ」

 私は履いていたスリッパを脱ぎ、右手に装備した。

 パパの顔が青くなった。

 私のスリッパは内側にいぼいぼのついた、健康サンダルの様なスリッパだから、なかなかの重量がある。これでしばかれるとかなりの衝撃を受けることは必至だからだ。過去に数回しばいた事があるからパパはこれの威力を経験済みである。

「友香ちゃん、ちょっと落ち着こうか。説明するからそこに座ってくれるかな」

 書斎に備え付けてあるソファへ腰をおろす。

「友香ちゃん、パパとの約束は覚えてるかな」

「うっ、お、覚えているわ」

「だよね。友香ちゃん、今年で何歳だっけ」

「えっと、二十歳はたちかな」

 くるしい言い訳だとは自覚しているが一応足掻いてみる。

 パパがじとーっという目で私を見つめている。

「に、25歳です」

「だよねー。もうすぐ約束の25歳だよね。だからね、いつまでも彼氏を作らない友香ちゃんの為に、候補を絞ろうと思ってね。立候補者の中から友香ちゃんが選んでいいから、その人と婚約してくれるかな」

 一応、まだ私に選ぶ猶予は与えてくれている辺りが断り辛い状況を作り出している。これもパパの策略だと分かっていても蹴ることができない。

 さて、どうするか。一つは彼の事をパパに告げる。でもパパは会社の後継者を選ぼうとしている。でも彼は社員の皆に嫌われている。パパが望む後継者としては不適合だと思われる。

 もう一つは、彼に立候補してもらう。そのためには彼に私が社長令嬢だという事を告げる必要がある。これはいずれは告げないといけないと思っていたことである。そろそろ頃合いということだろうか。覚悟を決める必要がある。

 でも、彼の性格上、社長になりたいと絶対に思っていないはずだ。もし、私が社長令嬢であることを知ったら、どうなるのだろうか。別れるって言いだしたりしないだろうか。

 怖い。やっと心から愛する人ができたのに、彼を失うのが怖い。


「友香ちゃん、どうしたの? そういう事で近日中に候補者をリスト化して渡すから、その中から選んでね」

「待って。パパ」

 私は決断した。

「私、付き合っている人がいるの。だから、その、今回の募集? 公募? 止めてくれないかな」

 結局、私が選んだのは彼の事をパパに告げることだった。これ以上、パパを昔の事で心配させたくないし、会社の皆さんを私事で混乱させるのは間違っていると思ったからだ。

「えーーーー。そんなのパパ聞いてないよー」

「言ってないんだから、当たり前じゃない」

「なんで教えてくれないの!」

 逆に何で教えないといけないの――と言いたい所だけど、過去の事件の事とかあるのだから、教えるべきではあったんだけど、どうせ心配するだろうから言えなかったんだよね。

「ごめんね。あんまり心配させたくなかったから黙ってたんだ。もう2年くらいになるかな。私、彼と別れるつもりないから、後任の事は諦めて欲しいんだけど……」

 勝手に約束破っといてなんですけど、好きになってしまったものは如何しようもないのだ。諦めてください。次の社長はお義兄さんでいいじゃないですか。あの人いかにも脳筋っぽいけど。お姉ちゃんがサポートすれば大丈夫でしょ。何ならお姉ちゃんが社長でいいのではないだろうか。すでに欧州方面の責任者しているのだから、適任だと思うのだけど。


 ふとパパを見るとプルプルしている。流石に怒ったかな。そうだよね。約束破ったんだし。

「友香ちゃん、よかったね」

 良く見るとパパは泣いていた。

「やっと、心を許せる男性が見つかったんだね。よかった。良かったよぉ―。パパは、パパはこれ程嬉しい事はない。今日は最高の日だ」

 なんか予想していた反応と大きく乖離している。てっきり怒られるとばかり思っていたのだが、まさかここまで喜んでくれるとは思ってなかった。

「それで、それで、彼氏はどんな人。って言うか会わせて。パパ会ってみたい」

「えっと、パパは良かったの? 今回の話を蹴ってしまったも」

「いいよ、全然いいよ。パパにとっては友香ちゃんの幸せが一番なんだから。あっ、ちょっと待っててね」

 そういうと、パパは携帯電話を取り出し、電話を始めた。

「あー、新藤君か。私だ。例の件だが、取消だ。明日の朝に通知したまえ。わかったな。頼むぞ」

 新藤君とは我が社の専務の名前だ。それにしても、パパも彼と一緒で会社と家の顔が全然違うよね。そんなものなのかな。

「友香ちゃん、婚約者の募集は取り消しておいたから、安心してね」

 うん、聞いてたから分かってるよ。

「それで、友香ちゃんの彼氏にはいつ会わせてくれるの?」

「えっ、会いたいの?」

「そりゃ、会うよ。明日にする。それとも今からにしようか」

 ちょっと待ちたまえ。気が早すぎる。

「会わなくてもいいと思うよ」

「やだー。会わせてくれなきゃやだー」

 子供か。

「だって、パパも会った事ある人だし」

「そうなのかい。誰だい?」

「西園寺さん」

 彼の名を告げた時、パパからピキッと固まった音が聞こえた。

「えっ、誰だって聞こえなかったなー」

「会計課の西園寺課長だよ」

「えっと、友香ちゃん、別れるつもりはないかな?」

「無い!」

 やはりパパは彼との交際は反対なのだろうか。

「彼かぁ。会いたくないなぁ」

「なんでよ。さっきまで会いたい、会いたい言ってたのに」

「だって、彼、怖いじゃないか」


 それ、おまいう。

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私の彼は会計責任者 細かすぎてちょっと困ります 間宮翔(Mamiya Kakeru) @KUMORINOTIAME

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