プレゼント

鯨飲

プレゼント

 四年に一度、神様たちが集まって、この世界のことについて話合う会議が行われている。

 

 今回の議題は、もっぱら人間に関することである。というよりも前回も前々回も、人間が議題だった。

 

 人間は神様たちにとって、悩みの種なのである。

 

 なぜなら、人間はいつまで経っても戦争を止めないからである。

 

 人と人が殺し合っている、この状況を、よく思っていない神様が多いのである。

 

 どうすれば、殺し合いがなくなるか、神様たちは頭を抱えながら、悩み続けていた。

 

 戦争は、人間の命だけ失われるわけではない、その他の生命や、地球の自然までも失われるのである。

 

 しかしながら、この状況を良く思っている神様がいた。

 

 それは死神であった。

 

 死神は亡くなった生命の魂を冥界に持っていくことが仕事である。

 

 というよりも、そのために存在している神様だ。

 

 戦争では、多くの人間が亡くなるので、死神からすれば自分の活躍できる機会が増える最高のイベントであった。

 

 そのため、神様たちの会議中も、鎌の手入れをして、暇を持て余していた。

 

 しかしながら、死神にとって困ったことが起こった。

 

 刑罰の神が、「私が、人間に対して更なる罪悪感をプレゼントする」と宣言したのである。

 

 殺戮という行為の異常性を改めて人間に認識させ、その行動を今後一切行わないようにさせる、という決定が下されたのである。

 

 死神は困り果てた。

 

 死人が減れば、自らの神としての威厳を保てなくなってしまうからだ。

 

 しかしながら、そんな死神を尻目に、最大限の罪悪感を人間に与える日がやって来た。

 

 それは何の問題もなく実行された。


 プレゼントが失敗することを期待していた死神は落胆した。

 



 しかしながら、その日は死神にとって最も忙しい日になった。

 

 

 多くの人間が、これまで人類が行なってきた罪の重みに耐えきれずに自殺したからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

プレゼント 鯨飲 @yukidaruma8

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ