私は不倫をしました

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　不倫に対する謝罪会見へ臨む中堅芸人に台本が送られた。

　内容としては要所要所の受け答えが書かれた凡庸なものであったが、最後に記された以下の一文においては芸人の肝を冷やさせるに十分な効果を持っていた。曰く、アドリブで厳しい質問するから対応4946。との事である。それは集中砲火を浴びてしどろもろとなる様子を茶の間に流し、同情による慈悲を促そうという作戦であったが、しかし。

「どうしたもんか」

　思わず芸人は一人ごちる。アドリブ芸など経験のない彼は、さばく自信がないのだ。

　それを先輩に相談したところ、「好きなようにしたらええねん」とのアドバイスを賜った。芸人は「なるほど」と、眼から鱗のように納得し、タダ酒を大いにかっくらった。

　そして会見当日。集まる記者団に向かって、芸人はこう宣言する。

「お前らには関係ないやんけ！　何が世間の迷惑じゃ！　知るかボケ！」

　立ち上る罵詈雑言と誹謗中傷。それに対してあくまで個人の問題だと宣う芸人。もはや台本どころではない様相に会見は泥沼。ああ言えばこう言うくだらぬ問答が繰り広げられ、世間は賑わった。

　そうして芸人は干され工場でつつがなく働くようになった。テレビではまた、不祥事を起こした人間が取り沙汰ざれて、ネガティブな反響が渦巻いている。衆愚とは、かくの如し……