ふじのん短編集2

一番行きたい場所

「おはよー」

　彼女の明るい声がきこえる。

「おはよう……」

　私も、小さい声で返事をした。

「いやー、今日も暑いねー」

　八月。

　彼女とのデートは、これが二回目。

「前はさ、映画館行ったから。今日は遊園地行こうよ」

　いつも、彼女が待ち合わせ場所に着いてから、その日の行き先を決める。

「ごめんね。私、その日の朝にならないと、一番行きたいところわかんないんだ」

　舌を出してウィンクしている彼女は、やっぱり可愛い。

「たまには、あなたの一番行きたいところにも行ってみたいなぁ」

　彼女は私の手を握りながらそういっているが、その場所がどこなのかは、まだいわないでおこうか。