待って

「待ってよぉ」

 この言葉をいうのは、いつだって私だ。

「待てなぁいよぉ」

 その言葉に、彼女は決まって無邪気に微笑んだ。

 待ち合わせだって、告白だって、プロポーズだって。

 いつだって、彼女に先を越されてしまった。

「たまには、あなたが先になれないとね」

 また、彼女は無邪気に笑う。

 私の余命を、医者からききながら。

「待ってって、いってくれないの?」

 ダメだとわかっていながら、私は訊いた。

「待ってっていえば、あなた死なないの?」

 彼女はそういって、私の胸で泣き崩れている。

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