かけっこ

二人は駆け出した。

けれど、彼女がいつだって私の前を行く。

「はやくはやく」

彼女の明るい声がした。

「そ、そんなにはやく走れないよぉ」

五十メートルあたりで、私は肩で息をしながら立ち止まった。

「へへ。今日も私が一番」

「はいはい、一番一番。どうせ私はあなたに勝てませんよ」

私はぷっくり、頬をふくらます。

ふいに、彼女が私の手を取った。

「じゃあ、ずっと一番で居続けるから、結婚しよ」

彼女は笑った。けれど、ちょっと真剣な目をして。

「好きの気持ちは二番のくせに」

「なら、OK?」

私はうなずく。

この一番に追いつかれるのは、もう少し先だと思っていた。

でも、ゴールは二人一緒でないと、ね。

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