陰キャな俺は世界一理不尽な状況にいるが突然現れた天使と一緒にざまぁを繰り広げていきます
飴宮まる
第1話 理不尽な世界
この世界はクソだと思う。
「ねえ、見て·····あいつまたアザ増え得る·····」
「うっわ·····やばぁ·····陰キャの癖になんで毎日アザ増やして何してるんだよ」
俺が教室に入ると冷たい視線が飛び交う。
みんなの視線の先にいる俺は、人目を避けながらオドオドと自分の席へと向かっうことしかできない。
怯えながら教師を歩いていると、誰かが俺の肩にぶつかる。
「ねえ、私そこ通るんだけど。邪魔」
そこに居たのは、昔唯一俺と仲良くしてくれた幼馴染の
肩まで伸ばした髪と透き通った鼻筋、大きな目に大きな胸。誰がどう見ても絶世の美女だ。
「·····紗月」
はるか昔、俺の事を大切にしてくれたこいつなら助けてくれるんじゃないか。
そんな淡い期待を込めて、気づいたら紗月の名前を読んでいた。
もしかしたら、またあの頃に戻れるんじゃないかって·····
しかし現実は非情だ。
「私の名前を気安く呼ぶんじゃねえ!」
俺は紗月に胸ぐらを捕まれ、そのまま投げ飛ばされてしまう。
俺の淡い期待は、すぐに崩れ去って行った。
それを見た周りの奴らは、誰一人として止めにはいってこず、それどころか俺を見て笑っていた。
紗月が一歩、二歩と俺と方に近づいてきて、誰にも聞こえないようにそっと耳打ちをしてきた。
「私もこんなことしたい訳じゃないの。悪く思わないでね」
それだけを言い残し、彼女は取り巻きと一緒にどこかへ行ってしまった。
■
俺の名前は
誰にも目をつけられる訳でもなく日陰の生きていた俺が、なんでこんなことになってしまったのか。
それは他でもない、俺の親父のせいだった。
「た、ただいま帰りました」
俺の声が玄関に響き渡る。その声を聞きつけたメイドが俺の荷物を回収し、そのまま退散する。
広くて綺麗な俺の家。こんな大きな家、きっと滅多にないだろう。
俺はリビングの扉をそっとあける。
「すごいな!
「えへへっ。ありがとうお父様」
リビングにいるのは親父と双子の妹の成実
親父は、成実の頭をガシガシと撫でている。
「この調子で、これからも頑張れよ! そうだ、後でケーキも食べよう。成実はテスト頑張ったもんな!」
「本当!? やったあ! お父様だーいすき!」
ニコニコとしながら、成実は親父に抱きつく。
「それじゃあ私、そろそろ勉強してくるね!」
「ああ、頑張ってな」
成実は笑顔で親父手を振り、ドアの方へ一直線に来る。
「あ、なーんだ。居たんだ」
成実は俺を見るや否や、ツインテールを靡かせて胡散臭い笑顔を振りまく。
「·····なんの真似だ」
「やだ、こわーい! そんな顔しないでよ〜」
俺は成実のことを睨みつけた。しかしそれは逆効果だったようで、成実は俺の反応を見て楽しんでる。
「最近、またお父様の会社の株、上がってるんだって」
ニヤニヤしながら、親父が運営している大企業神代グループの株価速報をスマホで見せてくる。
「それがなんだよ」
俺は成実が言いたいことが何となくわかっていた。でも、怯えている素振りそ少しでも見せる訳にはいかないと思い、歯を食いしばる。
しかし、そんな俺の思いを全て見透かすかにように、さらに追い討ちをかけてきた。
「渚を押さえつけることが出来て本当によかったって言ってたよっ」
「·····!?」
その言葉を聞いた瞬間、顔に出さないって決めてたのに、涙が抑えられなくなる。
「あはは! いいね、その顔。絶望に満ち溢れてる感じ。これだからアンタを虐めるのはやめられない·····」
じゅるり、と舌なめずりをした後、成実はゲスの顔をして捨て台詞を吐く。
「お父様はアンタを愛してなんかないの。近いうち、お父様はアンタにこの家から出てくように命じる·····その時が楽しみだね」
俺は成実が言っていることが理解出来ずに、そのまま崩れ落ちる。
親父に愛されることを諦めていたはずなのに、気づけば涙が止まらなかった。
誰かに慰めて欲しい、そう願ったところで誰も助けてくれない。
「こんな世界·····無くなればいいのに·····」
誰に届くわけでもない、俺の独り言。
俺は涙を拭い、そのまま自室へ向かう。俺がこの世界で唯一好きな場所。
誰にも干渉されない、俺だけの空間。
俺は自分の部屋のドアノブに手をかけ、いつものように自室へ入った。
ようやく·····俺だけの世界になれr·····
「あーっはっはっは! なんですかこの漫画! お、面白すぎる·····ひーひー·····」
あれ、おかしいぞ。俺の部屋に同い年ぐらいの女の子が俺の自室で俺の漫画を読んでいる。しかもベットで寝そべりながら。
成実の友達か·····?いや、でも背中に白鳥のような白い羽が生えてるし·····
「お? やっと帰って来ましたね? ずっと待ってしたよ〜! それにしてもこの漫画面白いですね!」
俺に気づいた彼女はベットから起き上がり、俺の方を向いて漫画の表紙を見せてくる。
俺は反射的にドアを閉めた。
え、なになになになになに!? なんで俺の部屋に女の子がいるの!?
しかもめちゃくちゃ美人だった! サラサラで綺麗な金髪と大きくてくりくりの瞳、唇もプルップルで、まるで天使みたいだ·····!
そうか。これは夢か! 人間は辛いことがあると、幻覚が見えてしまう人もいるぐらいだし、きっとそれだ!
俺は大きく深呼吸をして、再びドアを開けようとドアノブを手に持とうとした次の瞬間。
バン、とドアが開いて、中からさっきの彼女が出てくる。
「渚くーん! この漫画の続きどこにあるんですか!?」
待ってくれ、幻覚じゃないのか·····?
誰なんだこいつは。ま、まさか不審者?
今の状況が受け入れきれず、そのまま立ち尽くす。
そのまま視界がぼんやりしてきて、貧血を起こしたかのようにフラフラとしてしまう。
バタン!
俺は今日の疲れが一気に出たのかそのままぶっ倒れてしまった。
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