目覚め

 夕暮れ近くなり、ひぐらしの鳴く声があたりに響いている。だいぶ気温が下り涼しくなった神社の境内で眠っていた優人は自分の悲鳴で目を覚ました。


「わぁぁぁ……あれ生きてる? 夢?」


 ホッと息を吐いた優人のそばには、カブトムシの死骸が入った虫かごとバスのブザーが置いてあった。


 優人はバスのブザーを見てまた、小さな悲鳴を上げて青ざめると、虫かごだけを持ち走り去って行く。


「返品はきかないんだけどなぁ。まぁいいか……」


 何処からともなく現れた、着物にカンカン帽を被った男がは置いていったバスのブザーを拾い上げ、背負っていた風呂敷のなかバスのブザーを投げ入れると、カランコロンと下駄を鳴らして歩いていく。


「復活ボタン。なかなかいい商品だったな……」


 一人呟き方を揺らして笑いながら神社を出て細い路地を曲がると、男の姿は見えなくなり


――カランコロンカランコロン


と下駄の音だけが響いていた。

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復活ボタン 直弥 @ginbotan

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