52.眼福にござった。

 わたしと、三成みつなりさんと、服剥ぎ取られて、ふんどし一丁の策伝さくでんさんは、「バサァ」言わして、白い布をはぎとりました。


 ふんどし一丁の権兵衛ごんべえさんを突き落とす、熱湯風呂のセットが丸裸になりました。


 おくにさんが舞台袖に素早くはけると、おさんに釘付けだったお客さんは、熱湯風呂のセットに釘付けになりました。


 三成みつなりさんが、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんの側にいる、三成みつなりさんの同僚に目配せすると、三成みつなりさんの同僚さんがふたり、キビキビと動き出しました。

 同僚さんのひとりは、ふんどし一丁で縄でグルグル巻きにされた権兵衛ごんべえさんをひったてて、熱湯風呂のワキっちょにそなえ付けられた飛び込み台に登らせました。

 同僚さんのもうひとりは、長い棒をわたしと三成みつなりさんにわたしました。長くて、先っちょが枝分かれしてる長い棒を、わたしと三成みつなりさんにわたしてくれました。


 わたしと三成みつなりさんは、先っちょが枝分かれしてる長い棒を持って、熱湯風呂のワキっちょにそなえ付けられた飛び込み台に登りました。


 熱湯風呂のワキっちょにそなえ付けられた飛び込み台に登った三成みつなりさんは、大きな声で叫びました。


「これより、仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひでの熱湯風呂の儀、執り行う!

 この仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひで関白かんぱく殿住まうご予定の、桃山は伏見城ふしみじょう城絵図しろえずを紛失せしめし!


 その罪、熱湯風呂にて御仏みほとけに問うでそうろう

 それがし、干支かんし廻る六十数えしにて、御仏みほとけ、罪下すにそうろう


 罪、だいなりなれば、仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひで、熱湯風呂に沈むでそうろう

 罪、しょうなりなれば、仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひで、熱湯風呂より生還するでそうろう!」


 わたしは、三成みつなりさんが観客に熱湯風呂のルールを説明してる間、権兵衛ごんべえさんに、熱湯風呂のを教えました。


「・・・わかり申した」


 権兵衛ごんべえさんは静かにうなづくと、そのまま静かに話し始めました。


「ソロリ殿の舞、まっこと見事でござった。拙者せっしゃは、ソロリ殿に終始釘付けでござった。まっこと、眼福がんぷくでござった。最後に、本当に良いモノを見れ申した・・・」


 わたしは、権兵衛ごんべえさんの言葉を聞いて、複雑な気分になりました。なんとも言えない、複雑な気分になりました。


「ではこれより、仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひでを熱湯風呂に突き落とすにそうろう!」


 三成さんが叫ぶと、権兵衛ごんべえさんは、すっくと立ち上がりました。覚悟決めた顔して、大きな声で叫びました。


仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひで、参る!」


 権兵衛ごんべえさんは、息を整えると、熱湯風呂のを言い始めました。


「押すなよ・・・!

 押すなよ・・・!!

 絶っっっっっっ対に、押すなよ・・・!!!」


 わたしと三成さんは、先っちょが枝分かれしてる長い棒で、権兵衛ごんべえさんを思いっきり突っつきました。

 先っちょが枝分かれしてる長い棒で、権兵衛ごんべえさんの体をガッシリはさんで、思いっきり突き飛ばしました。


ドッボーーーーーン!!


 権兵衛ごんべえさんは、めっちゃ派手な音立てて、熱湯風呂のワキっちょにそなえ付けられた飛び込み台から突き落とされました。


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