42.ダメ、絶対!!

「(腹を切るのでございます。自分で自分を殺すのです)」


「アッかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」


 わたしは、思いました。強く強く強く強く強く思いました。

 自殺はあかん! ダメ、絶対!!


 わたしは、関白かんぱくはんは、バカ殿や思いました。山名やまなさんみたいな良いバカ殿やなくて、悪いバカ殿や思いました。


 わたしは、悪いバカ殿の関白かんぱくはんに、バシッと言ってやりました。


「切腹はあかん! ダメ、絶対!!」


 すると、「ニカッ」としとった悪いバカ殿の関白かんぱくはんが、わたしをにらんできました。


「なんやと! コラァ!」


 わたしは、ちっとも怖くありませんでした。もし、グループのメンバーん中に間違った事しとるがおったら、をコッソリしてるおったら、ちゃんと報告しろって、めっちゃエライプロデューサーさんがいつも言っていたからです。


 めっちゃエラくて、ついでに作詞も上手いプロデューサーさんは、こうも言ってました。


「”間違いは誰にでもあります。だから、例えばテレビ局のエライ人が、と言いながら食事に誘ってきても、キッパリと断ってください。そして必ず、事務所に報告をしてください。お願いします”」


 間違った事に、エライもエラく無いもありません。

 私は、間違ってる悪いバカ殿の関白かんぱくはんを、めっちゃ怒りました。


「人の命をなんや思うてるんや! 関白かんぱくはんは最低や!!」


 怒られた関白かんぱくはんは、ビクってしてました。エライ人すぎて、怒られ慣れて無いんやと思います。


 ビクってした関白かんぱくはんを横目で見ながら、カカシの山名やまなさんがわたしに向かって言いました。


「・・・とはいえ、権兵衛ごんべえ殿は、尊い大閤たいこうとなられる関白かんぱく殿のお住まいたる伏見城ふしみじょう城絵図しろえずを紛失した挙句、ウソをついて逃げおうそうとしたのでございます。とてもとても無罪放免むざいほうめんとはなりますまい」


 ホンマや・・・私は、山名やまなさんの言うことは、いっつも正しい思います。山名やまなさんは話を続けました。


干支かんし七度廻る未来よりこられたソロリちゃんなら、妙案があるのでは?」


 わたしは考えました。やらかして文春砲喰らった人が復帰する時は、大抵、年末の特番で恥ずかしい役やらされます。もしくは罰ゲームやらされます。

 そして思い出しました。打ち首獄門って聞いた時、ある罰ゲーム考えてたこと思い出しました。わたしはその罰ゲームの名前を、ソロリと答えました。


「熱湯風呂かな?」


「熱湯風呂ぉ?」


 さっきビクッとした関白かんぱくはんが、怖い顔して聞いてきました。わたしは、ホンマはビビリの関白かんぱくはんに、熱湯風呂の説明をしました。


「めっちゃ熱い風呂入って、めっちゃ我慢するんです。やらかした人が入るんやったら、めっちゃ我慢する必要ある思います」


 私の説明に、策伝さくでんさんが割り込んできました。


「聞いたことあります。南蛮なんばん魔女審判まじょしんぱんの刑法のひとつですな。罪人の罰を、神さんに裁いてもらう刑法ですな。例えば、重石おもしをつけて川に落として、そのまま浮かばんかったら神さんが許さんかった。浮かんできたら、神さんが許してくれはった言うことですな」


「なるほどなぁ・・・」


 関白かんぱくはんがうなづきました。今度は、小早川こばやかわさんが話に割り込んできました。


「先ほど拝見する限り、権兵衛こんべえ殿は、充分に反省しているご様子。ですが、つい今し方、関白かんぱく殿にウソをおつきになられた。いささか信用に足らぬ所がございます。

 果たして、権兵衛こんべえ殿が、充分に反省しておられるのか・・・ここは、ひとつ御仏みほとけに問うてみるべきかと」


 関白かんぱくはんは、小早川こばやかわさんの話を、「うんうん」と、うなづきながら聞きました。そしてしばらく考えると、突然大きな声で叫びました。


三成みつなりぃ!」


「ははぁ!!」


 大阪城の大広間を出て行ったはずの三成みつなりさんが、物凄い勢いで戻ってきました。汗ダクダクさせながら、戻ってきました。


権兵衛こんべえの切腹の儀は取りやめだ! 代わりに熱湯風呂にする!」


「熱湯・・・風呂?」


 三成みつなりさんは、はぁはぁ息切らして、汗ダラダラ流して、わたしが貸したビショビショのハンカチでビショビショ汗拭きながら聞き返しました。


「詳しい話は、ソロリちゃんに聞いとけ! ええか! 絶っっっっっ対、間に合わせぇ!」


「ははぁ!!」


 三成みつなりさんは、頭を擦りつけておじぎをしました。畳の上は、ビジョビショになりました。


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