38.おっス! いっちょやってみっか!

拙者せっしゃ(じゃらら)!、仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひでが話ますのは(じゃらら)! 天下の大泥棒(じゃらら)! 石川いしかわ 五右衛門ごえもんの話でございます(じゃらじゃらじゃららんら)!!」


「やぁかましいわ! ボケぇ!! そのうっとうしい服、脱いでからしゃべれ!!!」


「はぁい(じゃらら)!」


 関白かんぱくはんにキレられた権兵衛ごんべえさんは、汗ダクダクになりながら服を脱ぎ始めました。

 

 じゃらら・・・じゃらら・・・じゃらら・・・


 権兵衛ごんべえさんが、鈴鳴らしまくりながら服脱ぐと、畳の上に放り投げました。


 ズッシーーーーーーーン!


 鈴の服は、畳に落ちると、めっちゃ大きい音立てました。ちょっと地響きあったくらいです。


 わたしは思いました。これ、武道家が修行んとき着るヤツや、思いました。

 手から弾出せる「おっス! いっちょやってみっか!」みたいな人が、着るヤツや思いました。試合の前に脱げばええのに、なんでか、試合中にわざわざ脱ぐヤツや思いました。


 わたしは、権兵衛ごんべえさんが、めっちゃ汗かいてる理由がわかって安心しました。三成みつなりさんみたいに、緊張しとるんやない。重い服着とるから疲れたんや、思いました。


 鈴がついた武道家が修行んとき着る服を脱いで、上半身裸になった権兵衛さんは、改めてわたしの目の前に座りました。正座して座りました。


 そして、大きく深呼吸をすると、めっちゃ声張って話し始めました。


「拙者! 仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひでのは・・・あっ・・・!!」


 権兵衛ごんべえさんがは、思いっきりかみました。よくよく考えてみたら、鈴の服着てる時も同じ場所でかんでました。(冒頭読み返してください)

 さっきは、鈴の音でようわからんかったけど、権兵衛ごんべえさん、めっちゃかんでました。


 さっきまで、鈴の音でじゃららじゃらら騒がしかった大阪城の大広間は、ウソみたいに静かになっていました。キンキンに冷えていました。キンキンに冷えてる大阪城の大広間で、権兵衛ごんべえさんだけ、めっちゃ汗かいてました。


 わたしは、ヤバイ思いました。これ、絶対すべる。て思いました。

 なんとかせな、思いました。


 でも・・・アカン。


 無理や思いました。助けるん無理やと思いました。


 わたしのハンカチは、ビチョビチョになって、三成みつなりさんのふところに入ってるからです。替えのハンカチは、持ってませんでした。

 わたしは、未来からハンカチの替え持ってこんかったんを、めっちゃ後悔しました。バナナですべる前に、ポケットをハンカチでパンパンにしとけば良かったって、めっちゃ後悔しました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る