「石川五右衛門の話」

37.権兵衛さんうるさい。

「調子に乗りすぎだ! 隆景たかかげ! お前の悪いクセだ!!」


 小早川こばやかわさんが、めっちゃ威厳ある声で言うと、大阪城の大広間は、大きな笑いに包まれました。


 これは・・・小早川こばやかわさんのお父さん・・・かな?


 わたしは、小早川こばやかわさんのお父さんのこと全然わからんけど、みんなが笑ってるの見て、小早川こばやかわさんのモノマネ、めっちゃ似てんやなと思いました。


 笑いがひと段落すると、ちぃちゃいゴリラで、金色の服着た豊臣秀吉の関白かんぱくはんが言いました。


「ほな、次いこか〜」


 そう言うと、畳の上を「ツィー」ってスベって行った三成みつなりさんが、猛ダッシュでサイコロ拾って、関白かんぱくはんに渡しました。


 関白かんぱくはんがサイコロ受けとると、背が高くて顔が長い策伝さくでんさんが言いました。


「時間的にも、これが本日最後の話ととなりますな?」


「やな!」


 そう言うと、関白はんは、すぐにサイコロを投げました。


 サイコロは、てんてんと転がって、「豊臣秀吉とよとみひでよし」とかかれた目を出しました。その目だけ、キンキラキンに輝いていました。


「わしかぁ−ーー! うーん、どないしょう・・・」


 関白かんぱくはんは、悩んでるみたいな口ぶりやけど、早く話したてたまらん感じが、全身からにじみ出ていました。めっちゃ自信あるんと思います。めっちゃ鉄板ネタあるんやと思います。


 関白かんぱくはんが悩んだフリしてグズグスしてたら、わたしの隣にいるカカシみたいに動かない山名やまなさんが言いました。


此度こたび御伽噺おとぎばなしは、豊臣 秀長ひでなが様の四十九日の法要のうたげ

うたげは明日もございます。関白かんぱく様のありがたいお話は、大トリが相応ふさわしいかと」


「うーん、そうかぁ?」


 関白かんぱくはんは、残念そうな口ぶりやけど、褒められたんが嬉しくてたまらん感じが、全身からにじみ出ていました。


 嬉しさがにじみ出てモジモジしている関白かんぱくはんを見ながら、小早川こばやかわさんがニヤニヤしながら言いました。


「では、有志にて語り部を募ってはいかがでしょう?」


「おぉ! そらええな!」


 関白かんぱくはんは、モジモジするんをやめて、大広間にいるお客さんに向かって、大きな声で言いました。


「誰かぁ話したいヤツおるかーーーーー!?」


「はぁーい!!(じゃらら・・・)」


 お客さんの中から元気な声がして、元気よく立ち上がった人がいました。関白かんぱくはんは、そのお客さんと目が合うと、ご機嫌な顔して言いました。


「おぉ! 権兵衛ごんべえか! 自信はあるんか?」


「もちろんでございます!!(じゃらら・・・)」


「そうかぁ! じゃあ、こっちこい!」


「ははぁ!(じゃらら・・・)」


 そう言うと、権兵衛ごんべえさんが、ものすごい勢いでこっち向かって走ってきました。

 元気だから若い人なのかな? って思ってたら、結構なおじさんでした。


  じゃらら・・・じゃらら・・・じゃらら・・・


 結構なおじさんの権兵衛ごんべえさんが走ると、結構な大きなが音が鳴りました。


  じゃらら・・・じゃらら・・・じゃらら・・・


 権兵衛ごんべえさんは、全身に鈴つけた、みょうちくりんな格好をしてました。


   ・

   ・

   ・

 なんで??

   ・

   ・

   ・


 権兵衛ごんべえさんは、わたしの前に座ると、関白かんぱくはんにおじぎしました。


  じゃらら・・・って鈴がなりました。


 続いて、小早川こばやかわさんにおじぎしました。


  じゃらら・・・って鈴がなりました。


 今度は立て続けに、三成みつなりさん、山名やまなさん、策伝さくでんさん、わたしにおじぎをしました。


  じゃら、じゃら、じゃら、じゃららっ・・・って鈴がなりました。


 権兵衛ごんべえさんは、大きく深呼吸をすると、ちょっとうわずりながら、めちゃくちゃ声張って話し始めました。


拙者せっしゃ(じゃらら)!、仙石せんごく 権兵衛ごんべえ 久秀ひさひでが話ますのは(じゃらら)! 天下の大泥棒(じゃらら)! 石川いしかわ 五右衛門ごえもんの話でございます(じゃらじゃらじゃららんら)!!」


「やぁかましいわ! ボケぇ!!」


 関白かんぱくはんが、キレ気味に言いました。


「そのうっとうしい服、脱いでからしゃべれ!!!」



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