31.♪ 東から東から「何か」が来てる ♪

「それがしのバナナの大きさは、断じてマラッカではない! それがしのバナナは、ソロリちゃんが食べたバナナである!」


三成みつなりさんのは、食べたことないです!」


 大阪城の大広間の大爆笑がひと段落ついたのを見計って、小早川こばやかわさんが話を続けました。


「さて、持ち前の恥運ちうんを活かし、なんとかマラッカにたどり着いたものの、私が今話しておりますのは、厳島いつくしまの戦いの話でございます。なんとしても、父と兄が大合戦を繰り広げる厳島いつくしままでたどりつく必要がございます。

とはいえ、遥か南蛮なんばんのマラッカでは、言葉も通じずほとほと困り果てていたところ、またも恥運ちうんが救いの手を差し伸べてくれました。

マラッカに、あるあきないをする日の本の御仁ごじんがいたのです。名は【ヤジロウ】と申します。」


 わたしは、小早川こばやかわさんの話はさっぱりわかりません。しゃーないんで、黙ってニコニコしていると、背が高くて顔が長い策伝さくでんさんが驚きの声を上げました。


「ヤジロウはんですか!

 そのお方なら、学もコネも信じている神さんも違いますけど、よう知っとります。フランシスコ=ザビエルさんの通訳さんでございますな」


 策伝さくでんさんの言葉に、小早川こばやかわさんがうなづきました。


「いかにも、そのヤジロー殿でございます。フランシスコ=ザビエル殿は、日の本での布教を終えたのち、明王朝みんおうちょうでの普及を目指すも、道半ばで病に倒れたそうでございます。ザビエル殿の亡骸なきがらは、マラッカを経て、故郷へと送り返されたそうでございます。

 ヤジロウ殿は、マラッカでザビエル殿の亡骸なきがらとたもとを分かち、ああきないを始めたとのこと」


 小早川こばやかわさんの言葉に、三成みつなりさんが、目を見開いて話に割り込んできました。


「ヤジロウ殿のあきないとは、いかなる品を扱っておったのですか? そうか! 信長しんちょう公とソロリちゃんが食べた、おっきくて、甘くて、メッチャ美味しいバナナでございますな!?」


 目を見開いた三成みつなりさんの質問に答えたのは、小早川こばやかわさんではありませんでした。ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんでした。


「・・・奴隷やろ」


 関白かんぱくはんは、メッチャ不機嫌そうな顔して、吐き捨てるように言いました。


 小早川こばやかわさんは、話を続けます。


「さよう。ヤジロウ殿は、奴隷貿易で巨万の富を築いておりました。

 酒をあおったヤジロウ殿が歌ってくれた歌を、私は今でも忘れません。


  『♪東から、東から、奴隷が来てる、

    それを、私は、西にうけながす〜♪』


私が聞いた歌の中で、最も下劣で卑劣な歌でございました」



 大阪城の大広間は「シーン」となりました。

 私は、子供のころ芸人さんが歌ってた歌ネタを思い出しました。


 あん時は、お腹がよじれるくらい笑ってたのに・・・あの歌、本当はメッチャ怖い歌やったんや。

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