30.バナナ、ホンマちぃちゃい。

明王朝みんおうちょうの交易船の行き先は、ポルトガルの占領地、伴天連バテレンはイエズス会の拠点、マラッカでございました」


 小早川こばやかわさんが、途中から堂々を話始めたんで、わたしは、途中からほとんど意味ワカランようになりました。

 でも、海に落ちた小早川こばやかわさんが、助かってよかった思いました。ホンマ助かってよかったって思いました。


 わたしは、ニコニコしながら「良かった」思ってたら、鼻と口の間に、おっきいホクロがある三成みつなりさんが、目を見開いて興奮してしゃべりました。


「なんと! 小早川こばやかわ殿は、マラッカに訪れた事があったのですか?」


「そう、そこで、毎日バナナ食べてたの。コメの代わりにバナナ。三食バナナ。寝ても覚めてもバナナ。もう毎日バナナ。バナナしかない。バナナだけは、もう、二度と食べたくない」


 小早川こばやかわさんは、うんざりしながら言いました。


「ですが、甘くてメッチャ美味しいのであろう?」


 三成さんは、わたしを見ながら言いました。わたしはちょっと恥ずかしくなりました。


 小早川こばやかわさんは、手と首を左右に振りながら言いました。


「全然! マラッカのは甘くもないし、モサモサしてて口の中の水分とられてもう最悪! 多分、信長しんちょう公や、ソロリちゃんが食べたバナナと、種類が違うんじゃないかなぁ。三成みつなりのバナナと同じくらいの大きさだったし」


 そう言って、小早川こばやかわさんは、右手でちぃちゃくバナナの大きさを表現しました。


 わたしは思いました。マラッカのバナナ、ちぃちゃい。三成みつなりさんのバナナも、ちぃちゃい。


 三成みつなりさんは、これ以上ないくらい目を見開いて、これ以上ないくらい大きな声で、小早川こばやかわさんに言い返しました。


「それがしのバナナの大きさは、断じてマラッカではない! それがしのバナナは、ソロリちゃんが食べたバナナである!」


三成みつなりさんのは、食べたことないです!」


 わたしも、これ以上ないくらい大きな声で言い返しました。


 大阪城の大広間は、大きな笑いに包まれました。


 わたしは、メッチャ恥ずかしくなりました。まさかバナナで、二回も恥ずかしくなるなんて、思ってもいませんでした。


 わたしは思いました。小早川こばやかわさん、めっちゃイジワル。これ、わたしがもといたご時世やったら、間違いなくアウト違います? 

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 それから、ちょっとだけ不思議なことに気付きました。関白かんぱくはんが笑っとらん。一切笑っとらん。さっきは、バナナでお腹がよじれるくらい笑ってたのに・・・なんでやろ? 

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