27.ウソつきのろくでなしは裏声です♪

「理由は、来島くるしま村上氏の党首に騙され、はるか南蛮なんばんに島流しったからでございます」


 大阪城の大広間は、「えぇえぇ」と、と驚きの声に包まれました。

 小早川こばやかわさんは、話を続けます。


来島くるしま能島のしま、両村上氏を調略するにあたり、私はまず、組み易しとにらんだ来島くるしま村上氏に取り成そうと考えておりました」


能島のしまの村上は、厄介な海賊やったからな」


 ちぃちゃいゴリラで、年末に大閤たいこうはんになる関白かんぱくはんが言いました。

 わたしは、わけわからんのでニコニコしていると、小早川こばやかわさんがニヤニヤしながら言いました。


「・・・さようでございます。三年前の海賊禁止令かいぞくきんしれいにより村上海賊むらかみかいぞくは、我ら毛利もうり、そして、年末には尊い大閤たいこうになられる関白かんぱく殿を御護おまもりする【水軍】に変わりました。なれど、当時の能島のしま村上むらかみ氏党首、元吉もとよし殿は、その御心みこころに誠の任侠にんきょうを持つ、誠の海賊でございました」


 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんの顔が、ほんのちょっとだけ「ピクッ」ってひきつりました。村上むらかみ元吉もとよしさんのことを【誠の海賊】言うた小早川こばやかわさんのことを、にらんでるように見えました。・・・なんでやろ?


 小早川こばやかわさんは、話を続けます。


「そんな訳で、わたしは、海賊として瀬戸内を闊歩かっぽしておりました来島くるしま村上氏に取り入ろうと、当時の党首、通康みちやす殿と会見をすることになりました。

通康みちやす殿は、とても怖い風貌の海賊でございました。巨大な体躯たいくで丸坊主。海のものも、ひとニラミで逃げてしまいそうな鋭い眼光、そしてなりより、その【声】に特徴がありました・・・」


「『”通康みちやすです! ワワワワー!♪”』」


 小早川こばやかわさんは、いきなりトンデモナイ裏声で叫びました。

 わたしは、背筋が「ゾゾゾゾッ」ってしました。通康みちやすさん、絶対悪い人や思います。ウソつきや思います。ろくでなしや思います。極悪人や思います。


 小早川こばやかわさんは、ろくでなしの裏声のまま、話を続けました。


「『”もちろん、毛利もうり勢に協力するしんよ! 能島のしま元吉もとよし殿にも、協力をお願いするしん♪”』」


「・・・私は安堵あんどいたしました。能島のしま来島くるしま両氏を束ねれば、200艇を超える大軍勢です。厳島いつくしまの戦いにも光明が見えてまいります。」


 どうやら、通康みちやすさんのセリフの時は、裏声を使う設定みたいです。

(ちょっとわかりづらいけど、ろくでなしの裏声は【 『”♪”』 】でくくっときます。ウソつきの極悪人の裏声を脳内再生してください)


「『”折角だから、このまま能島のしまに行って、元吉もとよし殿にもお願いするしん♪”』」


「私は、通康みちやす殿に言われるがまま、来島くるしま海賊の関船せきぶねに乗り込みました。愚かにも、言われるがまま乗りこんだのでございます」


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