25.いろいろあったの!

 わたしは、尊敬しているオモロイ小早川こばやかわさんの話を、ニコニコしながら聞くことにしました。


「では、まず厳島いつくしまの戦いをご存知ない方はおられますか?」


「はい!」


 わたしは元気に、ニコニコしながら手を上げました。

 大阪城の大広間が、クスクスと笑い声につつまれます。

 小早川さんは、大広間を見渡しながら言いました。


「うーん、見たところ、ソロリちゃん以外はご存知の様子。では、細かいところはかいつまんで、ソロリちゃん向けにご説明しましょう。

ソロリちゃん? すえ 晴賢はるたか殿って知ってる?」


 わたしがニコニコしながら首をかしげると、小早川さんは別の人の名前を言いました。


「じゃあ、毛利もうり 元就もとなりは?」


 わたしがニコニコしながら首をかしげると、小早川こばやかわさんは目頭を抑えました。

 大阪城の大広間が、クスクスと笑い声につつまれます。


「えーっと、じゃあ、厳島いつくしまはわかるよね?」


「あー、なんか聞いたことあるような・・・ごめんなさい。もうちょっと、特徴を教えてくれます?」


 小早川こばやかわさんは目頭を抑えながえらため息をつきました。あかん、はよ正解せな・・・。わたしは、プレッシャーを感じました。


「えーと・・・女神様がまつられてあって、海におっきな鳥居とりいがあって・・・シカがいる・・・」


「ああ、奈良の大仏あるとこ!」


 わたしが、自信満々で答えると、小早川こばやかわさんはガックリを肩を落としました。

 大阪城の大広間が、クスクスと笑い声につつまれます。


 しまった! そういえば奈良県には海なんてない。海におっきな鳥居とりいがある言うてたのに。わたしとした事が・・・凡ミスや。


 小早川こばやかわさんは、もう、やけくそ気味に言いました。


「・・・あー・・・じゃあ、瀬戸内ってわかる? これわかんなきゃ無理!」


「ああ! しまなみ海道! 島がたくさんある! 中国地方ですか?」


 わたしが答えると、小早川こばやかわさんは、メッチャ嬉しそうに返事をしました。


「そう! 中国! そこの安芸あき国の厳島いつくしまで、いくさが起こったの。でね、僕は父君の毛利もうり元就もとなりや兄上たちと一緒に、すえ 晴賢はるたかの軍と戦ったの!」


「へー、そうなんですか。・・・あ、でもなんでお父さんと名字違うんです?」


「いろいろあったの!」


 小早川こばやかわさんは、食いぎみに突っ込みました、

 大阪城の大広間が、クスクスと笑い声につつまれます。


 わたしは、みんなヒドイと思いました。みんな、小早川こばやかわさんの家庭の事情を笑ってヒドイと思いました。他人の不幸で笑うんは、良くないと思います。


 あ、でも元を正せばわたしが失礼な質問したせいでした。お父さんと名字が違う事質問したせいでした。


 わたしは、かなり落ち込みました。小早川こばやかわさんを傷つけて、反省せな、思いました。

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