「厳島の戦いの話」

24.小早川さんは凡将です。

「絶対、誰にも見られん様に、倉の奥の奥の隅っこーーーーに、大事に仕舞わせてもらいます」


 策伝さくでんさんは、わたしに頭を下げながら言いました。


「勝手にしてください!」


 わたしは「どうでもええ」思いなら、ムカムカしながら策伝さくでんさん返事をすると、小早川こばやかわさんがニヤニヤしながら言いました。


「えーもったいない! 大阪城に展示しない? 安土城みたいに見物料を貰って」


「勝手にしてください!」


 わたしは、小早川こばやかわさんはホンマイジワルだと思いました。性格ねじ曲がってる思いました。


 三成みつなりさんが、わたしが描いた絵と、お習字セットを、エラそうに他の人に命令して片付けてもらうと、ちぃちゃいゴリラの豊臣秀吉とよとみひでよし関白かんぱくはんが、もっとエラそうに言いました。


「さー次行こうかー!」


 三成みつなりさんが、サイコロを素早く拾って関白かんぱくはんに渡すと、関白かんぱくはんはすぐにサイコロを転がしました。


 サイコロは、てんてんと転がって、「小早川こばやかわ隆景たかかげ」とかかれた目を出しました。


「・・・困りましたな」


 小早川こばやかわさんは、目頭を押さえながら言いました。


「うーん、どうしよう・・・では、あの話でもやりますか。厳島いくつしまの戦いの話でございます」


 大阪城の大広間がにわかにざわめき始めました。


「まさか、あの伝説の合戦いくさの話を聞けるとは! 小早川こばやかわ殿の武勇、しかと脳のシワに刻み込みます!」


 三成みつなりさんが、目を大きく見開いて興奮気味に言うと、小早川こばやかわさんは、首と手を、左右に振りながら言いました。


「そんな大層なモノではないです。私は、長兄、毛利もうり隆元たかもとのごとき叡智えいちもなく、次兄、吉川きっかわ元春もとはるのごとき任侠にんきょうもなく、ただただ恥をさらして、運だけでなんとか生きてこれた凡将ぼんしょうです。ですので、これから話すのは、凡将ぼんしょう恥運ちうんの話です」


 わたしは、小早川こばやかわさんが今までなにをしてきた人なのか、さっぱり知りません。だけど、目をキラキラさせてる三成みつなりさんを見れば、エライお侍さんなのは一発でわかります。


 おもろい芸人さんは、おもろい芸人さんを尊敬します。ながおもんないけど優しい三成みつなりさんが、性格ねじ曲がってるけどオモロイ小早川こばやかわさんを尊敬してるんは一発でわかります。


 そしてわたしも、性格ねじ曲がってるけどオモロイ小早川こばやかわさんの話を、ニコニコしながら聞くことにしました。

 性格ねじ曲がってるけど尊敬しているオモロイ小早川こばやかわさんの話を、ニコニコしながら聞くことにしました。

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