「エライお人の子供の話」

17.学もコネもありまへん。

「・・・こうして、イジワル爺さんは、コブがふたつになりましたとさ」

 

 大阪城は、あったかい笑いと共に、拍手に包まれました。

 わたしは思いました。よかった。地獄から戻ってこれた。小早川こばやかわさんと、山名やまなさんは地獄から戻ってこれた。


 小早川こばやかわさんは「はぁ・・・」とため息をついて、おでこの汗をぬぐいました。バカ殿からカカシに戻った山名やまなさんは、無表情で、小早川こばやかわさんの背中をポンポンと叩きました。


「いやいや、干支かんし七度廻る未来では、イジワルなお人にバチが当たるんですなぁ!」


 三成みつなりさんが、ニヤニヤイキって言いました。そんな三成みつなりさんを見て、小早川こばやかわさんは、ヘラヘラ笑いました。


 わたしは、やっぱり戦国時代の人は優しい、思いました。カカシの山名やまなさんも、イキリの三成みつなりさんも、優しい、思いました。みんな優しい。と思いました。



「さー次行こうかー!」


 イジワルな小早川こばやかわさんと、カカシの山名やまなさんが自分の席に座ると、ちぃちゃいゴリラの豊臣秀吉とよとみひでよしの、関白かんぱくはんが言いました。


 三成みつなりさんが、サイコロを素早く拾って関白かんぱくはんに渡すと、関白かんぱくはんはすぐにサイコロを転がしました。


 サイコロは、てんてんと転がって、「安楽庵策伝あんらくあん さくでん」とかかれた目を出しました。


策伝さくでん和尚たのみます!」


 関白かんぱくはんにそう言われると、背が高くて顔が長い策伝さくでんさんは、関白かんぱくはんに、ゆっくりとおじぎをしてから話をはじめました。


「私は坊さんですが、皆さんのように、学もコネもありまへん。学もコネもなーーーーんもない、私のような愚かな人間は、とてもとてもオモロイ話など考えることできまへん。せやから、昔おったエライ能書家のうしょかの話をさせてもらいます。朝野あさの 魚養なかい ・・・都が平城へいじょうにあった頃のエライ能書家のうしょかさんの話ですな」


 わたしは、ニコニコしながら策伝さくでんの話を聞いてました。わからん。策伝さんの話はぜんぜんわからん。学もコネも何もない人の話は難しすぎてわからん。


・・・でも、多分やけど、学もコネも何もない言うんは「カシコイ」言う意味なんやと思います。

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