16.イジワル爺さん、イジワルなん?

「どうやら、干支かんし七度廻る未来では、我らの知らない話の続きがありそうです。ソロリちゃん、続きを話てくれまへんか?」


策伝さくでんさんに言われて、わたしは、話を続けました。


「イジワル爺さんは、優しいおじいさんとおんなじ、ほっぺたにコブがついてる、めっちゃイジワルな爺さんです。

 イジワル爺さんは、アイツだけ「こぶ」が取れてズルイ! と、思いました。

 自分も鬼に「こぶ」を取ってもらわな不公平だ! と、めっちゃ思いました」


 ここまで話して、バカ殿の山名やまなさんが、首をかしげているのに気がつきました。めっちゃ首をかしげているのに気がつきました。

 山名やまなさんは、めっちゃ首をかしげてボソリと言いました。


「ところで・・・イジワルな爺さんはどんなイジワルをしたのかの?」


 そういえば、どんなイジワルしてたんやろ? ・・・・知らんわ。どうしよ?

わたしは、ニコニコするのも忘れて困っていると、突然、三成みつなりさんが大きな声を出しました。


「ソロリちゃんに、バナナを食べさせたお人かと!」


 三成みつなりさんは、これ以上ないくらい目を見開いて、自分の真正面にいる小早川こばやかわさんに向かって言い放ちました。

策伝さくでんさんも関白さくでんはんも、じぃっと小早川こばやかわさんを見ていました。


「そちが、イジワル爺さんかの?」


 バカ殿の山名やまなさんが、小早川こばやかわさんに尋ねると、小早川こばやかわさんは、手で目頭を押さえながら上を見上げました。

そして、「はああああああ」と、大きなため息をつくと。


「いかにも! ワシがイジワル爺さんだ! これから、極楽浄土ごくらくじょうどの舞をお見せいたそう!」


そう言って、おもむろに踊りはじめました。


「♪ イジワル爺さん だから、イジワル爺さん ♪」


 小早川こばやかわさんは、変な歌を歌いながら、

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手、叩いて上 ♫ 手、叩いて上 ♫ 

手、叩いて上 ♫ 手、叩いて上 ♫ 

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変な踊りを踊り始めましめました。


・・・すべってました。盆踊りみたいな小早川こばやかわさんの踊りはめっちゃダダスベりでした。


 わたしは、三回ネタやって、三回ともすべった、赤くてちぃちゃいドリンクと同じ名前の大会のことを思い出して、背中がゾクゾクしました。地獄や思いました。


 そしてその地獄に、バカ殿の山名やまなさんが乱入しました。


「♫ イジワル爺さん だから、イジワル爺さん ♫

 ♫ イジワル爺さん だから、イジワル爺さん ♫」

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手、叩いて上、手、叩いて上

そして 腕をグルグル回したよ ♫


手、叩いて上、手、叩いて上

そして 腰を前後に振ってるよ ♫

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 バカ殿の山名さんが乱入して、地獄の踊りは、さらに地獄になりました。めっちゃ地獄になりました。


「🎶 イジワル爺さん だから、イジワル爺さん 🎶

 🎶 イジワル爺さん だから、イジワル爺さん 🎶」

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手、叩いて上、手、叩いて上

そして 腕をグルグル回したよ 🎶


手、叩いて上、手、叩いて上

そして その場でグルグル回ったよ 🎶

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 めっちゃ地獄の踊りは、どんどんテンポが早くなって行きます。

 そして、この地獄の流れを断ち切れるんは、わたしだけやと気がつきました。

 『こぶとり爺さん』の話のオチ知ってるのは、わたしだけやと気がつきました。


 わたしは、「すうっ」と大きく息吸い込んで、思いっきり大きな声で叫びました。


「もうええ!」


 小早川こばやかわさんと、バカ殿の山名やまなさんが、わたしのことを、すがるような目で見ています。


 わたしは、ありったけの大声を張り上げました。


「昨日取ったコブは返したる! もう二度とくるな!!」


 大阪城から、静かだけど、笑い声が聞こえます。地獄の空間に、すぅっと光が差し込んでくるのがわかりました。


 わたしは、ソロリとオチを言いまいた。


「・・・こうして、イジワル爺さんは、コブがふたつになりましたとさ」

 

 

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