15.はて、聞いたことないのぅ?

 わたしが大阪城の前でPVを撮影してもらった、たった一曲だけ、センターをやらしてもらった曲を、大阪城の中で歌って踊り終わると、ものすごい拍手をもらいました。


 アイドルやらしてもらって、本当に嬉しいと思いました。今までで一番嬉しいと思いました。でも、わたしは思い出しました。今の仕事は、アイドルやなくて、お笑いのひな壇やと思い出しました。


 わたしは、深々をおじぎをすると、駆け足で自分の席に座りました。そして、ちょっとだけ息を整えると、話を続けました。


「・・・優しいお爺さんは、村で評判のめっちゃ踊りが上手いおじいさんでした。優しいお爺さんの踊りを見て、鬼は大喜びです。鬼は言いました。


『爺さん、自分めっちゃ踊り上手いから、明日も来てくれんか?』


でも、優しいおじいさんは、優しいけどウソはつけるおじいさんなんで、


『モチロンです! でも・・・夜もあけたんで、一度家に戻ってまた来ます!』


と、出まかせ言いました」



 ここまで話して、バカ殿の山名やまなさんが、首をかしげているのに気がつきました。山名やまなさんは、ボソリと言いました。


「・・・そう、やすやすと、逃してくれるかの?」


 山名やまなさん、やっぱり絶対にこの話知ってる思います。わたしは、話を続けました。


「鬼は『明日も絶対くるように、人質を取らしてもらう!』と叫ぶと、お爺さんのほっぺたのコブをむんずと掴み取って「ブチり!」と引き剥がしました。そして、

『人質として、このコブを預かる! 返して欲しくば明日の夜も絶対にこの場所に来い!』

と叫んで、笑いながら山の奥へ帰って行きました。」


「おお! 優しいお爺さんはついてるのう!」


 バカ殿の山名やまなさんは手を叩いて大喜びです。

山名やまなさん、やっぱり絶対、間違いなく、この話知ってる思います。


だけどその後、


「次の日、優しいおじいさんは、村のみんなに自慢しました。ツルツルのほっぺたを自慢しました。すると、『お前だけずるい!』と、イジワル爺さんが言いました」


と言ったら、


「イジワル爺さん?? はて、聞いたことないのぅ?」


バカ殿の山名さんが首をかしげました。


 山名やまなさんだけやなくて、関白かんぱくはんも、三成みつなりさんも、小早川こばやかわさんも、わたしに、『こぶとり爺さん』の話を知ってるか耳打ちしてきた策伝さくでんまで、首をかしげました。


 わたしは「ニコニコしてたらなんとかなるかな?」思っていると、策伝さくでんさんが言いました。


「どうやら、干支かんし七度廻る未来では、我らの知らない話の続きがありそうです。ソロリちゃん、続きを話してくれまへんか?」


「ええですよ。」


と、わたしが答えると、バカ殿の山名さんが、目をキラキラさせながら言いました。


「なに? なに? どーんなイジワル爺さん?」

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