13.あーあ、ヒマじゃのう・・・。

「殿! お触りは厳禁でございますぞ!!」


 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんがピシャリと叱りつけても、バカ殿の山名やまなさんは、ニコニコしながら、わたしの手を握り続けていました。


「ええから! はよ離せ!」


 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんの声が大きくなります。でも、バカ殿の山名やまなさんは、ニコニコしながら、わたしの手を握り続けています。


「離せ!」


 バカ殿の山名やまなさんは、ニコニコしながら、ずっとわたしの手を握り続けています。


「離せて言うとるやろが!」


 関白かんぱくはんは、ちょっとたこうなっとる自分の席からおもむろに立ち上がると、てんてんと転がっていたサイコロをひったくって、山名やまなさんにぶん投げようとしました。


 バカ殿の山名やまなさんは、パッとわたしの手を話すと、素早く身をちぢこませました。関白かんぱくはんは、サイコロを振りかぶったまま、バカ殿の山名やまなさんをニラみ付けて、


「調子のんなよ〜?」


と、言って、サイコロを放り投げてから、後ろを向いて自分の席に戻りました。


 バカ殿の山名やまなさんは、関白かんぱくはんの背中に「あっかんベー」をしました。小早川こばやかわさんと、策伝さくでんさんと、三成みつなりさんは、声を殺して笑いました。

 

 関白かんぱくはんが、ちょっと高い自分の席に座ると、バカ殿の山名やまなさんは、ようやくしゃべり始めました。


「あーあ、ヒマじゃのう・・・なんか、おもろいことないかのう?」


 策伝さくでんさんが言いました。


「・・・では、御伽噺おとぎばなしなぞ、いかがでしょう」


「じゃがのぅ。おまらの話は聞きあきたからのぅ・・・はぁ・・・ヒマじゃのぅ・・・」


 わたしは、ニコニコしながら、必死で考えました。山名さくでんさん、ちょっとなにいってるかわからん。さっき、『こぶとり爺さん』の話するて、自分で言うてたのに。


 そう思いながらニコニコしてると、関白かんぱくはんと、小早川こばやかわさんと、三成みつなりさんが、じぃっとわたしの方を見てきました。策伝さくでんさんは、座ったまま、わたしのとなりまでにじり寄ると、こっそりと耳打ちをしてきました。


「ソロリちゃん、『こぶとり爺さん』の話は知ってはります?」


 ・・・わたしが、無言でうなづくと。


「では、お願いしますな」


 そういって、元の席に戻っていきました。


 わからん。策伝さくでんさん、ちょっとなにいってるかわからん。ほんま何言ってるかわからん。せやけど、どうやら、わたしバカ殿の山名さんに『こぶとり爺さん』の話をすればいいみたいです。「しゃあないな」わたしは心の中でつぶやくと、元気よく手を上げました。


「はい! わたし話ます!!」


 わたしがニコニコしながら、元気に手をあげると、バカ殿の山名やまなさんは、目をキラキラさせながら聞いてきました。


「おおソロリちゃん〜! 何? 何? どーんなはーなし?」


「『こぶとり爺さん』の話です」


わたしが答えると、バカ殿の山名やまなさんは、目をキラキラさせながら聞いてきました。


「『こぶとり爺さん』?  何? 何? どーんなはーなし?」

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