11.「X(ピー)」の語源。

「その名医、めっちゃアホやん!」


 大阪城の広間は笑いにつつまれました。アホの名医の話で、笑いにつつまれました。


「いやー、さすがソロリちゃん、盛り上げ上手!」


小早川こばやかわさんがニヤニヤしながら言うと、


「それがしの話であろう!」


三成みつなりさんは、大きく目を見開いて、小早川こばやかわさんにツッコミました。笑いがさらに大きくなります。


 笑いがひと段落すると、策伝さくでんさんが、誰にともなく話始めました。


「さすが三成みつなりはん、見事でございます・・・ただ・・・・」


「ただ? なんであろう!?」


三成みつなりさんは、大きく目を見開いて、策伝さくでんさんに続きの言葉をうながします。


「この話の主人公は、ちんはんとはんやのうて、アホの名医の違いますか?」


「ほんまや!」


 わたしは大きくうなづきました。策伝さんが続けます。


「・・・とはいえ、学もコネもない私は、そないな名医知りません。干支かんし七度廻る未来からきたソロリちゃんならご存知では? どのみち『ちんば』は、干支かんし七度廻る未来では使えん言葉みたいやし、題名に、アホな名医の名前を使わせてもらいまひょ」


 わたしは、一人だけ思い当たる人がいました。でも、名前を思い出せません。


「うーん・・・あの人なら、切れた足くっつけれると思う・・・有名な女医さんなんやけど、名前が思い浮かばなくて・・・うーん」


「がんばれ! ソロリちゃん!」


 ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんが応援をしてくれました。


「・・・『わたし、失敗しないので!』が口癖の・・・うーん」


 ドラマのタイトルはわかるんやけど・・・あかん、お手上げや。しゃあない、ドラマのタイトル言うとこう。


「・・・ドクターX(エックス)?」」


 わたしは、じっくりじっくり考えてソロリと答えました。すると、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんが、


「えっくす? なんや、みょうな名前やな」


と、言いました。


「すみません、ホンマの名前忘れてしもうて・・・」


 わたしが、申し訳なくしてると、いきなり策伝さくでんさんが大きな声でしゃべりはじめました。


「そのX(エックス)ちゅう女医さん、エラいイキッとりますなぁ!

 『わたしぃぃぃ、失敗しないのでぇぇぇぇ!』

 言うて、エラいイキッとりますなぁぁぁぁ!

 そないイキリ倒しとるから、足を取り違いますねん!!!」


 大阪城の広間は笑いにつつまれました。


「イキッて失敗・・・まさに、三成みつなり


 小早川こばやかわさんが、追い討ちをかけると、笑いはさらに大きくなります。

 イキッた名医とイキッた三成みつなりさんで、大阪城の広間は大きな笑いにつつまれました。一番笑ってるのは三成みつなりさんでした。


 わたしは、「みんな、めっちゃ優しい」思いながら、ニコニコ笑いました。


 笑いがひと段落すると、策伝さくでんさんが、誰にともなく話始めました。


「X(エックス)言うんのは、南蛮なんばんの文字のひとつです。ちょうど【×(バッテン)】みたいな形としとります。

『わたしぃぃぃ、失敗しないのでぇぇぇぇ!』

言うて、イキり倒しとるエライ女医はんが、足を取り違える大失敗で【×(バッテン)】がつく。ええオチがつきましたな?」


 会場にどよめきと、拍手が起こります。


 わたしも、ニコニコしながら拍手をしました。そして、こう思いました。

 言ったらあかん言葉言うたとき、編集で口に【×(バッテン)】を出して【ピー】って音ならすん、この話がキッカケやったんと違います?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る