「お話の題名を考える話」

07.三成さんはエライ。話は、ながおもんない。

「・・・今度、能島のしま村上水軍むらかみすいぐんのセガレ、元吉 もとよしに、バナナを調達するよう頼んでおきます。仕入れたら、関白かんぱく殿に献上しますゆえ。ソロリちゃんと一緒にお食べになるのがよろしいかと」


 小早川こばやかわさんの言葉に、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんは大喜びしました。


「頼むで小早川こばやかわ! ソロリちゃん、バナナもろたら、一緒に食べよ!」


「え〜! いやですー!」


 わたしは、いつもは「笑ってたらどうにかなるかな」と思ってニコニコしてるけど、嫌なことは、ハッキリ断るようにしてます。特に、事務所を通さないえらい人のお誘いは、キッパリ断るよう、マネージャーから、めっちゃキツく言われています。


「では、ソロリちゃんに悪い虫がつかないように、バナナの宛先は、奥方おくがた様のねね殿・・・北政所きたのまんどころ様宛さまあてといたしましょう」


 童顔で、顔のパーツが中心に寄った、小早川こばやかわさんが、ニヤニヤしながら言いました。


「・・・ま、ねねの所でもええわ、でもホンマ頼むで小早川こばやかわ。バナナっちゅう果物くだもん、わしムッチャ好きやと思う」


「うん、関白かんぱくはん、ムッチャ似合う思う」


 わたしは、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんに言いました。


「ほな! 次いこか!」


 関白かんぱくはんが叫ぶと、小早川こばやかわさんの向かいにいるお侍さんが、素早くサイコロ拾って、素早く関白かんぱくはんに渡しました。


 関白かんぱくはんは、サイコロを受け取ると、すぐにサイコロを投げました。


 サイコロは、てんてんと転がって、「石田三成いしだみつなり」とかかれた目を出しました。


三成みつなり! お前や!」


「ハッ!」


 さっきサイコロを、関白かんぱくはんに素早く渡した人が、素早くおじぎをしました。

 口と鼻の間に、おっきいホクロがある石田三成いしだみつなりさんです。見た目はおっさんやけど、実は結構若いそうです。


 あと、金にガメつくて、流行はやりもんが好きらしいです。策伝さくでんさんが言うてました。


 三成みつなりさんは、軽く咳払せきばらいいをすると、エラそうにしゃべり始めました。 


「では、それがしは、河内かわちで聞いた話をひとつ・・・『ちんばの由来ゆらい』であろう!」


「あぁ! それ、あっかん!」


 わたしは、三成さんが、あっかんこと言うたので、あっかん思って、思わず「あっかん!」て、大声出しました。


 三成さんが、ムッとした顔でわたしを見ています。


「その言葉、言うたらあっかんて、プロデューサーさんが言うとった!」


「プロデューサーさん!?」


 三成さんが、目を見開いてこっちを見てます。

 ・・・コワイ。


「プロデューサーさんが、あっかんて言うてました。制作局長せいさくきょくちょうにしばかれるから、あっかんって・・・」


「制作局長!?」


 三成さんが、目を見開いて圧かけてきます・・・ほんまコワイ。


「ダメだよ〜、ソロリちゃん怖がらせたら」


 小早川こばやかわさんがニヤニヤしながら言いました。


 あっかんこと言った三成みつなりさんは、目を見開いて、わたしに詰め寄ってきました。


「ソロリちゃんが、制作局長にしばかれる?

 そんなこと、ありえぬであろう! そんなやからは、それがしが切腹せっぷくさせるであろう!」


 あっかんこと言った三成みつなりさんは、目を見開いて、わたしにめっちゃ詰め寄ってきました。


「プロデューサーというのは、ソロリちゃんが出ていた、もよものの責任者であろう?

 そして制作局長せいさくきょくちょうとやらは、プロデューサーとやらの、責任者であろう?」


 あっかんこと言った三成みつなりさんが、めっちゃ目を見開きながら、わたしに、めっちゃ詰め寄ってきました。


「それがしは、あらゆるもよものの総責任者! 祭事奉行さいじぶぎょうであろう!!!

 この『すべらない話』も、それがしが仕切ったもよものであろう!」


 あっかんこと言った三成みつなりさんは、わたしに、めっちゃ、あっかんくらい、つめよってきました。

 めっちゃ、あっかんくらい、目を見開いて、めっちゃ、あっかんくらいつめよってきました。


 わたしは、三成みつなりさんに、めっちゃ、あっかんくらいつめよられて、ニコニコしとるヒマもありませんでした。


 そして、わたしは思いました。

 三成みつなりさんは、あっかんくらい、エライ。

 けど、話は、ながおもんない。

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