08.三成! はよ話せ!

「それがしは、あらゆるもよものの総責任者! 祭事奉行さいじぶぎょうであろう!!!

 この『すべらない話』も、それがしが仕切ったもよものであろう!」


「はぁ・・・」


 あっかんくらいエライけど、あっかんくらい話がながおもんない、三成みつなりさんに、わたしがニコニコするのを忘れていると、策伝さくでんさんが言いました。


「差し出がましいこと言いますが・・・ソロリちゃんがホンマに困っとるんは、プロデューサーはんに怒られるからではありまへん」


「・・・ほーぅ?」


 三成みつなりさんは、妙な声を上げながら、ギギギぃっと、右に座っている策伝さんの方に顔を向けました。


 背が高くて顔の長い策伝さんは、三成みつなりさんを見下ろしながら話をつづけました。


「なんと・・・三成みつなりはんには、お解りにならない?」

 

「わかっている! だ、だ、だ、だが、折角の機会であろう? 策伝さくでん和尚おしょうに、ご教示きょうじ願いたいであろう!」


 心なしか、三成みつなりさんの目が泳いでします。

 背が高くて顔の長い策伝さんは、三成みつなりさんを見下ろしながら話をつづけます。


「ソロリちゃんは、干支かんし七度廻る未来から来られた、それはそれはお優しいお方です。私は、この二十日ほど、ソロリちゃんのおそばに仕えて、お世話をさせていただきました。

 ソロリちゃんは、とても心が清らかぁて、広ぉ〜いお方です。そんなソロリちゃんが、『怒られる』なんぞ、しょーもない理由で、エライお侍さんの三成みつなりのお言葉をさえぎるなど思えません!」


 三成みつなりさんは、ギギギぃっと私に顔を向けました。明らかに目が泳いでします。あっかんくらい目が泳いでします。


 わたしは「笑ってたらどうにかなるかな」と思って、だまってニコニコしています。


「ソロリちゃんは、とても心がお優しいお方です。おそらく・・・干支かんし七度廻る未来では、『ちんば』という言葉でふかーく心を傷めるお人がおられるんでしょう。ソロリちゃんは、そのお人をおもんばかって、心を痛めてはる」


 わたしは、無言でうなづきました。三成みつなりさんは、うっすら汗をかいています。

 策伝さくでんさんホンマスゴイ。でもホンマ話が長い。


「どーせ、『ちん』と『』がしょーもないイザコザおこす話だろう?」


 小早川こばやかわさんがニヤニヤしながら、話に割り込んできました。


「・・・ほーぅ?」


 三成みつなりさんは、ギギギぃっと小早川こばやかわさんに顔を向けました。だくだくと汗を流していました。あっかんくらい、だくだくと汗を流していました。


三成みつなり殿、すべると、打ち首獄門だからな」


そう言って、


 小早川こばやかわさんは、ニヤニヤしながらずっと三成みつなりさんを見つめました。

 策伝さんは、ずっと三成みつなりさんを見下ろしました。

 わたしは、ニコニコしながら三成みつなりさんを見つめました。


 三成みつなりさんは、ただただ、だくだくと汗を流しています。あっかんくらい、だくだくと汗を流しています。


三成みつなり! はよ話せ!」


 しびれを切らした、ちぃちゃいゴリラの関白かんぱくはんが言いました。


「題名は、ソロリちゃんに決めてもらえ!」


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