&α あなたの味

「おかえりなさい。いつもより長かったね」


「うん。ごめんなさい」


「うん?」


「ごめんなさい。あたし、セックスを、しすぎて。あなたに迷惑を、かけてるかもしれないのに」


「迷惑だなんて、そんなことないわ。女同士だもの。いくらセックスをしても、出るものがあるわけでなし」


「でも。あたし」


「どうしたの急に。謝ったりして」


「手。握っても、いい?」


「どうぞ」


 手が握られる。やわらかく、暖かい。


「あたし。欲求が強くて。あなたに迷惑を、かけてるかもって。思って」


「そんな切ない顔をしないで」


「ごめんなさい」


「こわいことを、おしえてあげる」


「えっ浮気?」


 握った手が、思いっきり引き絞られる。


「次言ったら、あなたの手を引きちぎるわ」


「いだいです。ごめんなさい。もういいません」


「私があなた以外の誰と寝るのよ。ありえないわ。口に出すだけでも嫌」


「ごめんなさい。いだいですちぎれます」


「ごめんなさい。握力強いほうなの」


「強すぎるよお」


「こわいはなしをします。おちついてきいてください」


「はい」


「私は、あなたよりも、えっちな気分が強いです」


「はい。はい?」


「気分も長く持続します。あなたが果てたあと、私があなたの身体を舐めながらひとりですることもあります」


「うそ。えっこわいこわいこわい」


「まだこわい部分ではありません。この先があります」


「あたしもうききたくない」


「じゃあ、ここでやめる?」


「ううう。きく。ききます」


「あなたとのセックスを断るのは、あなたを美味しく味わいたいからです」


「美味しく?」


「はい。毎日していると、あなたはすぐ満足してしまうから。ときどきこうやって、お預けするの」


「お預け」


「うん。そうするとね。次の日のあなたは、なかなか満足しなくて、長く楽しめるから。えっちな気分の一日充電」


「うそ。じゃあ、あたし。え。あなたに」


「あなたがいつも早いから。私は、あなたの味を舐めながらひとりでしないといけないの。こわいでしょ?」


「こわい」


「今日。セックス。する?」


「うう」


「私は、本当は、毎日と言わず、十時間に一回ぐらいの頻度でしたいわ。でも、あなたはすぐひとりで満足する。不公平よ」


「あたしが、がんばれば」


「うん」


「あたし。がんばる。がんばるから。今日もセックスしてください」


「じゃあ、お風呂入ろっか」


「うん」


「今度、夜のドライブにも一緒に行きたいわ、私。憧れなの」


「うん。今度は、一緒に。心が落ち着くよ」


「落ち着いちゃだめよ。ざわつかせて、波立たせないと。セックスをするのだから」


 手を繋いだまま、浴室へ向かう。

 窓から朝の光が差して、二人を照らすけど。

 二人が疲れて眠るまで。まだ夜は終わらない。


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環状道路、あなたの味 春嵐 @aiot3110

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