十、 道
この集落には曲がりくねった一本道しか無いんです。
なぜかは知りません。
年寄り連中なら知ってるかも知れませんが、
聞く必要もないし、話す必要もない。
そんな感じで成り立ってたんです、あの時までは。
こんな辺鄙な場所で田舎暮らしがしたいって言う奇特な人が来たんです。
集落自体空き家はいくらでもあります。
顔役にも挨拶をして事情を話し、この集落に住むところまでは決まってたそうです。
ただ、場所が集落でも奥の方の空き家をあてがわれたらしく、行き来が不便だったようで、それで勝手に道を作ってしまったそうです。
曲がりくねった一本道の真ん中をスッと通れるような、集落の入り口から自分の家までの一本道です。
年寄り連中が騒いでたのが印象的で今でも覚えています。
「せっかく一番奥を渡したのに道を作ってしもうた」
そんな感じの事を言ってました。
あとのことはよく知らないと言うか、わかりません。
あてがわれたはずの奥の家はずっと空き家のままですし、作られたはずの道はいつの間にか埋められて無くなっていました。
ただ、こんな話が有るんです。
奥の家から村の入り口に向かって作られたその道の上に、何かを引きずったような痕が残されてたって。
それを隠すために年寄り連中が慌てて道を埋めたって。
それが本当の話かどうかはわかりません。
でもね、道は作られたし、埋められた。
それだけは本当です。
だって、道を作るのも埋めるのも、
両方とも手伝いましたから。
九十九語り(つくものかたり) 奇印きょーは @s_kyoha
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