九、 狐狗狸

この土地に人が住むようになる、ずっとずっと前の話。

この土地は狐狗狸、すなわち動物達の物であった。


だが時が経つにつれて、人々が獲物を求め、土地を求め、この山に次々と入り込むようになっていった。


狗、オオカミは言った。

「人が我らの土地を荒らすのであれば我らが血の報復を与えよう」


狸、タヌキは言った。

「ならば我らは人が悪さが出来ぬように化かしてしんぜよう」


狐、キツネは言った。

「小さいのう、小さいのう。

 人間なぞ恐るに足りん。

 狗よ、狸よ、我が解決するゆえ、主等は寝てるが良い」


狗と狸が寝静まったある夜のこと、狐は猟を生業とする男の元に現れた。


「そなたが我を狩らず、我を祀ると約束するのであれば、この山の恵みを与えてやろう。

 我は祠を、そなたは肉と皮。

 悪い取引ではなかろうぞ?」


男は狐に言われるがままに祠を建てた。

祠の出来に満足した狐は、男を狗と狸の待つ住処に案内した。


「どうじゃ、これが山の恵みじゃ。

 愚かじゃのう、愚かじゃのう。

 喰らうてやれ、喰らうてやれ」


男は無数の狐狗狸に囲まれた末、頭を残して息絶えた。


男の頭は狐の祠に供えられ、それを見た人々は山に立ち入ることは無くなったという。

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