「おっ」


 彼。現れた。


「あら。今日は早いのね」


「クリスマスだから。最近、狙った時間に出てこれるようになってきたよ」


 彼は、ちょくちょく、こうやって消えてしまう。空気みたいに軽くなって。認識できなくなる。


 でも。


 それだけ。


 私が忘れなければ。

 あなたと一緒にいたいと思えれば。

 彼はまた、私の前に現れる。私の視界に入ってくる。


「わたしも、たまには消えてしまおうかな?」


「じゃあ、一緒にここからいなくなっちゃおうか」


 彼と一緒にいて。私も、消えることができるようになった。空気みたいに軽くなって。いなくなってしまう。自分がいるけど、自分じゃない。そして、彼がいる。


 幻想的な空間だった。

 夜の灯りと、街のネオンと、星空と、雪。すべてが混ざりあって、やさしく輝く。


 あなたといる。


 消えてしまったとしても。

 私は、あなたと一緒にいる。


 恋が終わって。


 愛が始まる。あなたといる幸せが。たしかに、ここにある。


 それだけでいい。


 流れ星が少しだけ、輝いて消えた。

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恋の終わり、聖夜 春嵐 @aiot3110

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