幕間

帽子の見る夢

 長い、長い、夢。

 光の無い、闇。

 いつまでも。どこまでも。

 深淵の底。

 けれど、それでよかった。

 開けられるべきではなかった。

 赤い瞳。

 解き放たれた。

 それは様々なものを生み出し、そして失わせた。

 均衡を変えた。

 争いの種を生み、力を与えた。

 彼女は後悔の念に苦しんだ。

 だけど世界は変えられない。

 戻すことはできない。

 時は一方通行だ。

 長い、長い、夢。

 時は過ぎる。

 それは忘れられていた。

 でもどこかで。

 静かに。

 まだ終わっていない。終わりはない。

 人が人であるかぎり。

 求め続ける。

 目を開いた。

 そこに相棒の姿を見つける。

 あいつはわかっていない。お前が俺を見つけたんじゃない。俺がお前を見つけたんだ。

 窓から見える景色は移りゆく。決められた進路を走る鉄道。新たな旅路。

 どこかへ向かっている。生きているかぎり、人は。

 お前は気づいているか? お前は俺が見てきた誰よりも、悲しい目をしている。

 俺はお前のその目に、

 惹かれたんだ。

 俺はもう、お前の涙は見たくない。

 だけど、世界はそうできていない。

 世界は奪うためにできている。

 命を授かった、その日から。

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