瞬く星々

 それは荘厳な光景だった。

 時計台前の広場。

 ランタンに火を灯し、被さっている袋状になった紙に熱気が溜まり、浮力を持つ。

 号令により、広場に用意された数百のランタンを一斉に空に向けて解き放つ。

 炎が舞った。

 ゆっくりと、ゆっくりと、揺らめきながら無数のランタンが宙を昇っていく。

 蛍の光のように。闇夜に浮かぶ星々のように。

 粒の煌めき。

 日の昇らないこの町に輝きが昇る。

 火の子供たちが空へ旅立っていく。

 リュナはこの光景を全身の感覚で受け止めた。

 視覚で受け取った情報が他の感覚へも流れていく。

 微かな花の香り。

 エレクトーンのような優しい響き。

 光の渦に包まれたような眩しさ。

 感動が体を伝い、鳥肌を立たせる。

 帽子のような小さな気球たち。

 小鳥たちが飛び立っていくような。

 暗い夜空のキャンバスに、無数の炎が彩りを与えている。

 光は昇っていく。

 夜へ、夜へ。

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