妹の想い
「いや、何言ってるの?」
妊娠させてください、といろはに言われ、祐介は驚きを隠せない。
妹が兄に告白するだけならまだわかるが、まさか妊娠したいと言ってくるなんて思ってもいなかった。
よほどいろはは裕介のことが好きなのだろう。
「好きな人と結婚したい、子供がほしいと思うのは当たり前のことです」
まだ涙を流しているものの、いろはは自分の言っているのは当然だと思っているようで、何故か首を傾げる。
確かに結婚出来なくはないが、やはり兄妹で愛し合うのは間違っているとは思う。
でも、付き合ってしまえばいろはに余計な虫がつかなくなるので複雑な心境だ。
「俺たちは兄妹だぞ」
「ラノベでは兄妹でも愛し合いますよ」
それはいろはが兄妹物のラノベを読みすぎであって一般論ではない。
「私は兄さんのものなので好きなようにしていいんすよ? 思春期の男の人はエッチなことばっかり考えているんですよね?」
確かにそういった男子もいるが、全ての人が当てはまるわけではないだろう。
もし裕介もエッチなことを考えているのであれば、今の業況でいろはを襲わない理由がないのだから。
「俺はいろはのことは大好きだ。だからってエロい目で見たことはない」
初めていろはを見た時は神秘的な容姿に衝撃を覚えたほどだが、あくまで妹なので付き合いたいとかエッチなことをしたいとかは思ったことはなかった。
恐らく兄妹でなければ同じ学校だろうと関わることもなかっただろう。
「一緒にはいるから我慢してくれ」
ギューっと祐介はいろはのことを抱き締める。
「わかりました。私も無理矢理するのは不本意なので」
とりあえず落ち着いてくれたようだが、間違いなくいろはは絶対に諦めないだろう。
いろはの希望でしばらく抱き合っていた。
☆ ☆ ☆
「あう……恥ずかしいです」
一人でお風呂に入りながら、いろはは顔を真っ赤にさせた。
湯船に浸かっているから赤いわけではなく、恥ずかしい気持ちになったからだ。
陽菜が告白したことにより自分の気持ちが抑えられなくなってしまっていろはも祐介に告白した。
兄妹だからという理由で祐介に断られてしまったいろはは、思わず妊娠させてほしいと言ってしまったのだ。
恥ずかしいと思わないはずがない。
でも、いろはの祐介への気持ちは本物であり、兄妹物のラノベのように結ばれたいと思っている。
実際に妊娠したいし、幸せな家庭を築きたい。
「兄さんにフラれてしまいましたね」
祐介に愛されているという自覚はあったが、その愛が異性としてじゃないのはいろはもわかっていた。
だからって初恋相手をそう簡単に諦めるわけにはいかないし、ましてはライバルである陽菜に渡すつもりはない。
祐介は陽菜の告白を断ったようだが、あの様子からしても陽菜が諦めることはないだろう。
「ラノベみたいにエッチなハプニングでもあれば兄さんも意識してくれますかね」
思わず呟いてしまった。
現実でラノベのようなハプニングがそう簡単に起きるわけがなく、いろはは今まで祐介に着替えシーンなどを見られたり、胸を触られてしまったということはない。
ラノベでは何故か主人公とヒロインとの少しエッチなハプニングが起き、いろは自身も祐介とのハプニングを期待している。
色々計算してエッチなハプニングを起こすことは可能だろうし、少しでも意識してくれたら嬉しい。
出来ることならエッチなハプニングで興奮し、自分のもとを襲ってくれたらな、といろはは思うくらいだ。
愛する祐介に襲われるのであれば幸せで、初めてを奪ってほしい。
「少し長湯しすぎましたかね」
湯船に浸かっている肌が少し赤くなってしまっている。
いろはの肌は紫外線だけでなくて塩素にも弱く、長時間のお風呂は禁物だ。
基本的にはシャワーだけも場合が多いが、今日のように考え事をする時は湯船に浸かったりする。
「これ以上は兄さんに怒られてしまいますね」
祐介はいろはの肌の弱さを知っているので、これ以上長湯をしてくればお風呂に来てしまうかもしれない。
ラノベのように裸を見てもらうチャンスであるが、赤くなった肌を心配されるだけで興奮してくれないだろう。
興奮してくれないのであれば、エッチなハプニングを起こす意味がない。
「お風呂から出ますか」
心配されるのはよろしくないので、いろはは湯船から出た。
兄と結婚するのが当然だと思っている妹に妊娠を迫られた件 しゆの @shiyuno
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