死を想う。それはすなわち、生を想うことである。
死を望む「僕」の部屋にいるのは黒のドレスをまとった美しい女。
「僕」とともに暮らして、珈琲を淹れたり食卓をかこんだりする彼女は「死」そのものだという。
希死念慮に捕らわれた「僕」はある日突然、死が視えるようになった。「死」はせかいのいたるところにいて、とても魅力的なすがたで、彼をみつめている。
素晴らしい発想です。
最後は胸がきゅうとなりました。
死を想い、死に恋焦がれることは生者の特権です。死者はただ、二度と渡れない岸をぼう然と眺めるだけ。
ひとりでも多くの読者さまに読んでいただきたい短編です。
素敵な小説を拝読させていただき、ありがとうございました。