未来の君へ

ノン❄

第1話

『未来の君へ』




2050年 東京


整然とした街

どこもかしかも塵一つなく

空気は汚れることのないように

バリアで囲まれる息苦しい空間


「なぁ、今度の彼女はまた、AH(artificial human)なのか?」


「あー、だって、自分好みにすべてプログラミング出来るんだから、それに越したことないだろ」


「まぁーなぁー、でも、俺は断然、人間がいいなぁ」


「そりゃあ、お前はモテるからいいさぁ。人間は姿は整形でもなんでもして作れても中身までは作れない。

所詮、モテるモテないは昔っから変わらないよなぁ」


「いやいやそう言うなよ」


「いいんだよ

俺は絶対裏切らない彼女がいるからな」


「AHが誤作動するなんてことはないのか?」


「大丈夫だろ

もし、そうなったら、そこで終わりってこと」


「え?捨ててしまうってことか?」


「そうだよ」


「そんなこと出来るのか?

彼女だろ?」


「相手に感情はないよ」


「海斗、お前の感情は?」


「さぁなぁー」


「ふーん」


いくらAHだとしても毎日一緒に過ごしてるんだ。

情もわくし、好きになるかもしれない




数ヶ月後

海斗から連絡があった

相談があるとのこと

いつもの店に向かった


運ばれてきたビールをグイッと1口飲むとすぐに話し始めた


「なぁ……実はな、調子が悪いんだよ」


「どっか悪いのか?」


「俺じゃないよ。アイツ」


「アイツって?」


「ayaの調子が。AHセンターへ連れていったんだけど原因が分からずで·····」


えらく落ち込んだ様子の海斗


「お前さぁ、この間言ったこと覚えてる?」


「あー。あれは·····」


「やっぱり、心配だろ?海斗お前は完全にayaに惚れてるんだよ」


「惚れてる?まさかAHだぞ」


「相手に感情がなくてもお前にはあるだろ?なら、好きになってもおかしくない」


「·····そうなのかもしれないな」


「直るといいな」


「あー·····わりぃ、俺、帰るわ。ごめんな。呼び出しといて。話を聞いてほしかっただけだな」


「いや、いいんだよ」


そして、数日後

海斗のAH ayaは止まってしまった


ロボットが動かくなくなれば、不要品扱い。

けれど、それを愛した者としてはモノではない

大切な人だ


「最後にayaは涙を流したんだ。

面倒だから泣かない設定にしていたのにそれなのに、泣いたんだ。きっと、誤作動だとは思うんだけど、なんかさ、本当の涙のように見えて·····」


残してもらった小さな部品を握りしめて

泣いてた海斗の姿は俺は忘れることは出来ない


一年後

海斗はAHセンターで研究を始めた

人間と同じように老いていくロボットの·····。


ロボットは決して感情は持たない

でも、例えば、昔、職人が長年使った道具がその人に危険を知らせたり、命を守ったりという数奇な出来事もある


そういう理論では説明できないことが起こりうる


きっと、それは人の魂が宿るということなのだろう




今の世の中

次々と機械化され

生活が円滑に進むようになってきた


しかし、

命に限りがあるように

その機械たちでさえ

寿命がある


世の中に永遠なんてものはないのかもしれない


だからこそ、大切に生きていかなければならない

そして、愛することをが軽んじてはならない


どんな社会になろうとも

人の心は100年前から

全く変わらない

100年先も


ずっと先を生きていく未来の君へ

訪れる世界が

人の心が通い合う世界でありますように





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未来の君へ ノン❄ @non_non129

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