Episode 3. answer
EDENにおける阿弥陀如来様の件から、俺達はどうしても指宿が気になって、英気を養っては瞬間転移一発で不思議な程に帰還出来た。あの上陸戦の雰囲気からアメリシア帝国の優勢で健在だろうも、そこは紛争だった。第四世代揚陸艦7隻は軒並み擱座の穴だらけで、指宿はフレームはあるものの大破だった。
やはり禁忌なのかと、皆の死線を思い倦ね堪らず頭を抱えたが、ノエルが泣きながら御影教会コミュニティから派遣された皆の思念波を捉えたと、声にならない安堵の溜息を漏らしては砂浜に倒れ込んだ。
そして第三次ハードサンライズ紛争はこのたった一日で休戦となった。その所以は、成層圏まで降りてきたおとめ座銀河団の中のエッセルボルト共同体同盟の5km超のギャラクシーウォーカー:クロノスMIXVの威風故だ。御影教会コミュニティの藤澤先輩が仕切りに上空を眺めては。上さ何かいるんだよな、ああクロワッサン食いたい。とぼやいていたのは食堂でグルになって中食に有り付くのではなく、実際に密やかに透視していたのかと今更力が抜ける。確かにこんな上等なバター風味漂うクロワッサンあるかだ。
そのエッセルボルト共同体同盟が仲立ちを務めた休戦協定は、当事者太守国だけではなく全世界の協調参加を呼び掛けた。その模様は今となってはだが、来訪者の技術を駆使して全メディアをこじ開けては世界中の人々の注視に至った。
エッセルボルト共同体同盟の切実な要望はたった一つ、各先代文明の遺跡群の使用厳禁だった。そもそもの21世紀のポールシフトは、太平洋に沈んだ第三文明のムーリアノルの完全気象装置が隕石群の襲来に誤検知してしまい、地球の内心部に直結したシリンダーがマントルを激しく活性化させた故の惨劇らしい。この様な惨劇の類いはおとめ座銀河団の惑星開拓時代の技術が進んだ何れの惑星も漏れなくで有り、私達はその警告に渡り歩いているが行き届かぬ事もあるのでご容赦願いたいとの謝辞だった。
今や使節団長のエルノシアス30137のその敬虔な佇まいと英邁な発言から、深く感じ行っては全地球人がこのスカンジナビアの夜以降を襟を正して生き抜こうになった。
そして今日2112年7月14日。俺達はエルノシアスとお茶会の約束を果たす日となった。
会場はアメリシア帝国第8艦隊の複合空母イケダ・ハヤトT。前面甲板と後面甲板をトランスフォームして一つにさせれば宇宙シャトルの着陸も受け入れられる長さになるので、総員が準正装で出迎えるのだが、まあか。
上空の母艦クロノスMIXVから降り立ったのはフリッカーと呼ばれる3車体で、地球で開発中の浮遊艇のそれに当たる。ただそのフォルムが秀逸で、懐古映画の青春グラフティに出て来そうな大型キャディラックの様な流線型の車体では、それはもう野朗共が残らず歓喜の涙に咽んだ。
そして果たしてのお茶会は、この延々長い甲板の一角を緋毛氈を集めに集めて日本由来の大野点相当になった。
果たして目の前に正座する準礼服のエルノシアスと側女2人は何れも地球人類そのものの褐色で、腰迄ある黒髪も艶やかで普通に見惚れてしまう。何よりお淑やかさが仕来たりに深い日本人そのものであり親近感しかない。ただ両指の中指の背に埋め込まれた翡翠の輝きを持つ輝きの玉石はハルクメモリと言うもので、生来の折衝事には欠かせないらしい。過度なデバイス事例はスカンジナビアの夜がピークなので、割と自然に対処出来てる。
会談は至って温和に、所々話が途切れた時にはコミュニティの識者が入っては、所謂星間差は感じなかった。
そして大切な事を教わった。所謂禁忌と呼ばれる事象は一三世紀の東洋魔術言語の重ねで、戦乱を拡大させない為の厳格な反魂であると。それがハードサンライズ上陸時に適用されなかったのは、大陸の局所的にあの橙色の結界で解除して、クロノスMIXVの解析で禁忌を無効にしたと。エルノシアスは理路整然と、所以の無い礼法も示唆するのも私達のお役目で有り不毛に方々の死はあるべきでは無いと切実に語った。
そして話も佳境に入り、エルノシアスが然もありなんと切り出した。
「ここでのお茶会で不躾ではありますが、総会の要請が有ります。私達と同じくおとめ座銀河団の同志として、御列席の皆様にエッセルボルト共同体同盟への出向をお願い出来ないものでしょうか。何分にも先日の紛争迄巻き起こしてしまった遺跡群完全機能停止条約締結同様事象には、多くの専任者を要します。特に各カトリック教会コミュニティの方々は伺う程に適正者が多く見られます。勿論衣食住福利厚生年金及びおとめ座銀貨での給与も、おとめ座銀河団立法に基づいて不当な格差なくお出しします。何より深い見聞を得られますので、主の御言葉の深さを知り得るやもしれません。どうか良きお返事を下さいませんか」
いやも、隣のノエルがだろうなと思いきや、驚く事に黒田師団長が慇懃にも畏まって受けてしまった。
それでもいやは、俺宛の思念波が突き刺さった。
(星間婚前旅行、素敵よね。ああ、ここはいつか私がきちんと声で言うから、よそ見は無しね)
そう、これは皆に聞かれて無いも、女子陣に目敏く察せられて微笑まれた。
俺は困り果てて空を見上げては、衛星軌道ギリギリに浮かぶ最速で艤装の終わった所謂ピンクチューリップ事指宿改ハローサーZWIを見つめた。
船首は大破した戦艦長門型指宿を改修しながら、あちらの星間随伴艦ハローサーと合わせ、最後部は同じくあちらの食糧プラントZWの輪転四季板も付随し、独立調査も可能とかのハイパーテクノロジーらしい。内覧会は追ってだったが、128人の聖なる専任者拝命有りきなのかと。
上妻司祭曰く、人生は希望しかない。それに激しく同意するのが今さ。
Last Eden Waltz 判家悠久 @hanke-yuukyu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます