とぅるーInゼリー杯、参加作品の講評ページです。
笑いのヒトキワ荘・第八回大会「とぅるーInゼリー杯」
全27作品の講評を書きました。(参加者数 18名)
【大会URL】
https://kakuyomu.jp/user_events/16817139555050857098
今回、管理人の好み度をハートで表しております。ご参考までに。
あくまで、作品評価とは別の個人的「好み」のお知らせです。
また、「笑いのヒトキワ荘」上で読ませていただいておりますので、「笑い」に多く反応していると思ってくださって結構です。「管理人が個人的観点からおもしろいと感じている度合い」だと思ってください。
❤❤❤❤❤ 私の太陽、そして月(好み加減がSランク)
❤❤❤❤ すばらしい!(好み加減がAランク)
❤❤❤ 素敵!(好み加減がBランク)
❤❤ 好きですよ(好み加減がCランク)
🙇♀️ ごめんなさい(読めませんでした、評価ができません)
順番は、企画の参加者一覧順です。同じ作者の作品は投稿順に関わらず並べております。
講評ページ約3万字……自分で笑っちゃう。
目次がなくて泣きそうな貴方へ、管理人から「リンクのない贈り物」。
やはり講評はnoteがいいですね……。
この順番です。
#1 @ss9さん
#2 おくとりょうさん
#3 田中ざくれろさん
#4 猫鰯さん
#5 チェシャ猫亭さん
#7 朽木桜斎さん
#8 猫とホウキさん
#9 🍞🍞🍞🔨さん
#10 春雷さん
#11 なかとさん
#12 杜松の実さん
#13 つくおさん
#14 八壁ゆかりさん
#15 友未 哲俊さん
#16 みさかさん
#17 超時空伝説研究所さん
#18 和田島イサキさん
【管理人からのご注意】
七月に国内で社会を震撼させる事件があったことは皆様もご存じであると思います。
今回の参加作中に、関連する単語・文章がありますが、いずれも事件が起こる以前に投稿されたものであり、講評につきましてもその時点で書かれたものです。
こちらは特定の事件や出来事、個人へ向けた言葉ではないということと、また別意も含んでいないことをお知らせするもので、それが事実であると主催者が保証いたします。
もし不快な気分になる可能性がある場合は、読まないようにお願いいたします。どうぞご理解ください。
また、講評はどうしてもネタバレが含んでいるものです。これからこれらの作品を読むご予定のある方はご注意ください。
【ここから講評です】↓↓↓
#1 @ss9さん
こんな世界があったら……めちゃくちゃ嫌だ!
https://kakuyomu.jp/works/16817139555051290852
管理人の好み度❤❤
初ご参加の方だと思います。二作もありがとうございます。
主催者として応募要項について念のため書き記しておきます。作者様へというより、ほかの参加者様に対して、こちらは要項を守られているということで。
キャプションに「アルファポリスに掲載したもの」と書かれていますが、調べましたら過去作ではなく、ほぼ同時期に発表されたものかと思いますので、書き下ろしと承認しました。うるさいことを言って申し訳ないのですが、「書き下ろし」は平常、「その企画用に書いたもの」という認識です。ほかに出されていないことが前提となっていると思います。一ユーザー企画のちっぽけな大会に書き下ろしをお願いします──というのはなかなか贅沢な要求で心苦しいところもあるものの、要項は要項、守られて当然と思われる参加者・読者もおられるでしょう。なので、調べております、ということをお伝えしておきます。
作品ですが、語り手で主人公の角道百(かくどうひゃく)が、「もしも世界が◯◯だったら」という世界に──しかもなかなか過酷なフィクション世界に──足を踏み入れていて、「こんなの嫌だー!」と叫んでいる小説。
主人公がビジネスマン代表なので、「ひたすら社会に絞られている私」というものが
ここまで手を変え品を変え毎度苦しめられるのに「もう割り切ってて、むしろ楽しんじゃってますよ」的にノリツッコミする主人公の「図太さ」が気持ちいい作品ですね。シリーズものですのでネタを考えるのは大変でしょうが、読者側としては、次も結局なんだかんだで乗り切ってるんだろうな、という期待と、同じ型が来るとわかっている安心感で読める、というものだと思います。シンプルな作品ですので、キャッチフレーズで大げさに盛り上げてる感じもすごくいいなと思いました。
要所要所をきっちりギャグでしめていますし、主人公のキャラクターを立てたのもよかったと思います。
世界の紹介文の箇所はどうしても説明口調になってしまいますので、その辺のバランスですね。第3話以降の冒頭、ブログのような自己紹介文はつかみとして非常におもしろくて、よく効いていると思いました。
昔は、野宿と呼ばれたのに……
https://kakuyomu.jp/works/16817139555072649898
管理人の好み度❤❤
冒頭の丁寧な自己紹介がなんとも真面目で惹き込まれました。キャンプが趣味の岡崎さんの語り。
「文化」は「化ける」という字が入っている、ということに関しての文章を以前どこかで読んだことがあります。人々のライフスタイルや物の考え方といった時代の変化から「呼び名」が変わることってよくありますね。
ほとんどの場合、「偏見」というものを正していこう、という公平思考、優しい感情がそうさせているのだと思います。
タイトルどおり、一人でキャンプを楽しんでいた昔、周りから「野宿」とからかわれた、と
(引用)
野宿!ノジュク!のじゅく!ののの……
ここのところなんか、とてもおもしろかったですが、最後はいやにあっさりしていましたね。しかし冒頭からそういうトーンでしたし、それが、四十にしちゃあ老成した岡崎さんらしさ、なのかもですね。私とほとんど同世代ですよ。まだまだ老け込む歳じゃありません。ソロキャンでブイブイいわせてください(ブイブイって……セルフツッコミ)。
ヒトキワ荘はショート作品、ギャグ作品もお待ちしてはいるのですよ。でも、住人に選ばせていただいているのは「ザ・小説」みたいなものが多いので、もしかすると「ここの主催者はそういうものを高く評価してくれない」とか思われているかも……。そんなことはありませんから! なので、今回から選考をちょっと変えておりますので、よろしくお願いします!
#2 おくとりょうさん
可愛いお魚
https://kakuyomu.jp/works/16817139555052864883
管理人の好み度❤❤❤
かわいらしい作品ですよねー。主人公の弟に対する愛情の深さが、ラテの泡のように「ふんわり」浮かびあがってくる内容でした。上品でやわらかみのある語り口が非常によかったです。方言は関西弁でしょうか?
このお話を読んで、私も思い出したことがありました。
はい、ここでも「お食事のときにはオススメしません」を前もって言っておきます。
私が中学・高校生のころ、犬を飼っていまして(中型犬・雑種)。誰がやったのかは憶えていませんが、「お刺身」を与えたことがあったんですね。
ナマ物は一度もやったことないので、犬も食べ慣れていない様子で、口には入れるんですけど、飲み込むのをためらって出すんですよね。でも、やはり食べたいらしくて、また口に入れる、飲めずに出す、これを何度もくり返していくうちに、お刺身が最後には「真っ黒!」になるんですよ。
ええ、ほんとに、
「グニグニ」もそうですが、擬声語が多めなことと、「何だか妙に湿っていて……」「頭を廻って……――。」といったいわゆる「言いさし表現」がくり返し出てきて、実にやさしい雰囲気を
エッセイ風小説ですと、自分がおもしろいと思っているものは「勢いで好きなように語っちゃえ」みたいにまくし立て、一方的な感じになることが多々あります。それはそれで成功すれば問題ないでしょう。しかしこちらは、現実の家族について話しているからか(作家としての自我を強めに出すには
表向きはとても微笑ましく、日常としては衝撃的な内容を素敵に仕上げてくださっていると思います。「ただこのエピソードを紹介したかった」というものを浮かびあがらせていますので、シンプルでごちゃごちゃもなくて、その辺も大変好ましかったです。
ただ、タイトルが「可愛いお魚」って……え? かわいいのは弟でしょうが!(子どもがまだ食ってる途中でしょうが、のトーンでお願いします)
#3 田中ざくれろさん
銃声
https://kakuyomu.jp/works/16816927862359365163
管理人の好み度❤❤
このタイトルよ……。
これを企画欄で見たとき、「やってくれたな」とほくそ笑みました。
自主企画をテーマを立ててやるからには、主催者には当然「こういう作品に来てほしい」というような狙いがあるわけですよね。つまりは、出題に対する「模範解答」です。
今回、何パーセントかは実話である、ということを読者は念頭に置いて読むわけです。どの部分がそれか……など想像しながら読むのが楽しいんですよ。
そこにこのような
本当に「例のブツ」が出てくるんじゃないか……くるわけないよな? と思いながらドキドキ感が高められ、かなりの時差をもって、別の方の作品『パチ屋に行った話』の方にまさかのブツが出てきて「いや、こっちに出てくるのかよ」と、若干
タイトルのみならず、キャプション欄にまで
「さて、何%がフィクションでしょう( ;∀;)」
と期待を
いわば、タイトルで期待させて、実際「こうでした〜」は予想通りの展開ですが、そこにもう一段階のスリルを仕込んでいて、それもお見事でした。冒頭DVDの回収ですね。
そうですね、何度も読み返して分析しましたが、おそらく、マニアックなDVDを購入したところは実話ではないでしょうか!(誰一人得をしない推理を堂々披露)。
今回、もう一つの作品もですが、短文で構成し、改行して積み重ねていくスタイルで、文章デザインという見た目のよさもそうですが、プツプツと切れることで予断が与えられず緊張感が生まれ、読者を話に集中させる、ということが実現できていた気がします。また、「すわ事件か」というような文をウェブ小説で読めるだなんて思わなかったですね。
男っぽい作風の方だと思いますからね。モチーフもぴったり
しかし、わざわざ電車で何時間も離れた場所へ買い出しに行くとは……なかなか苦労しますね。以前、知り合いの女性が、ある男性宅に届けられた「入念に包装された小型宅配便」に対して、「あれ、絶対怪しいやつだよね」と話しているのを聞いたことがあります。そう、ネット通販でさえ万全ではない。隠してあっても万全ではない──やはり危険なブツですね。
大喜利大会(第六回)のときにも実力を見せつけてくれましたが、今回も冴えまくっていますね。
世界最小のショー
https://kakuyomu.jp/works/16816927862359365163
管理人の好み度❤❤❤❤
話の惹きつけ方や文章がすごくいいな、と思いました。
冒頭で『ジョジョの奇妙な冒険』のことを取り上げ、「実はあのネタが知られるより以前にこういうことが自分の身にあったんですよ」という昔語りのような感じですね。有名な作品だけに、インターネットで調べれば年代ははっきりしますし、そういった意味で現実味というものが出て、フィクションではなく本当にあった過去のお話なんだ、というエッセイ感が増しますね。
主人公は一人の少年で、そして舞台は小さな教室の中と、これが実話であったとしても、それを知る者が少数であるところも実にいい線をついています。
私はジョジョについてはくわしくないので言及は避けますが、「ジャンケン」という古典的な遊戯をネタにギャグ作品を書く、ということ自体かなり冒険的な気がしますよね。カクヨムでは、前大会で101号室を獲得された真花さんが、『ひとり遊びの覗き見に』という作品の中で、「ジャンケンの第四の手を考える」というネタを書いておられました。
あえてジャンケンを取りあげるという意外性や、シンプルな遊戯を盛り上げるために付け加えられた+α要素やストーリーがウケる、というのはあると思います。
たかがジャンケンであっても、うまく知恵を絞ればクラスメイトを驚かせることくらいはできる──。少年が挑んだ世界を見守る時間が非常におかしく、また適度な緊張を生みだす実況的な語りがよかったです。
この披露されたギャグ自体、前々から準備していたのか、それとも最後の二人になったとわかった時点でふと思いついて実行に移してみたのか、細かいところまではわからないのですが、クラスメイトに大ウケして、しかも運命の女神の働きかけがあったとしか思えない驚きの結末が待っていたというところが、物語にさらなる価値をもたらしています。
席替えという懐かしさ、そして中身のくだらなさ。また本人はいかにも平静を装っていますが、内心ドキドキだったんじゃないかと想像できるのも楽しい。
(引用)
この世に運命の女神がいるならば、そいつは最高に馬鹿で無茶な奴に惚れるだろう。
これ以降の文章も実に決まっていました。内容はもう十分におもしろかったのですが、引き際までかっこよく締めてくれましたよね。「ちょっとだけ生きていきやすい、学校生活が始まる」という一文も、学校という狭い、特殊な空間の中で、私たちは結構な苦労をし、悲喜こもごもな生活を送っていたよな、ということを思いださせてくれます。
ただのジャンケン、ただのギャグが、少年にとっては「大きな何か」になったという、「世界最小のショー」。読後に改めてグッと噛み締めたくなるナイスなタイトルですよね。
#4 猫鰯さん
Gのストラテジー ~俺は、刻の涙を見た!~
https://kakuyomu.jp/works/16817139555062618252
管理人の好み度❤❤❤
猫鰯さんも初参戦ですよね。ありがとうございます。
……全然関係ない話をして、いいですか?(よくないと思う)
今、こちらの講評を「Googleドキュメント」の新機能「ページ分けなし」で楽しく書かせていただいているのですが、Googleってさ、「スペルと文法チェック」で間違いと思われる文章に赤や青の波線が入って教えてくれるんですよ。
たとえば私が、「講評書いてまして」と書くと、「講評(を)書いてまして」に修正しろと勧めてくるんです。お節介ですよね。もちろんオフにできるんだろうけどさ。
それでですね、上記の挨拶の部分、「猫鰯さん」に赤線が入っていて、クリックしたら「『猫鹿さん』に修正する」という候補が出てきました。
誰よ、それ……。有名人? Googleってのはすべての固有名詞を把握しとるのか?
あ、本当に関係ないことをすみませんでした。ちょっと気になったもので。講評を続けたいと思います!
こちらの作品、文章デザインもさることながら、構成も興味深かったです。
キャッチフレーズ、サブタイトル、冒頭はホラーテイストで攻めましたね。いいですよ。夏ですものね。
(引用)
黒くギラギラと光るポルシェの様なシルエット。
羽を広げた様はさながらカウンタック。
そしてF1マシン並みの速さとラリーカー並の取り回しの良さ!
そして、フロントカウルにはGの頭文字。
もう、この文章、笑いました(「そして」は重なっちゃいましたね)。
Gはあいつのことで、あいつのことに決まってるんですけど、まさか車に例える人がいるとは思わず、意表を突かれました。頭の中で黒光りしたあいつが「格好いい」フォルムで浮かびあがったという不覚! 前の三行だけでも十分満足だったのに、空白を置いての最後の一行にもやられました。本当にエンブレムとか付いていそうですよね……。なかなかの手腕です。
「人間VS虫」というお話は笑いの世界では定番で、過去にも参加作で結構ありました。誰でも共感しやすいところもありますが、想像がつきやすいものなので、どういう切り口でいくかとか、あとは文章力・描写力で勝負するしかない、というところで、難しいんですよね。私は書ける自信がありません。
(引用)あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
こちらのフレーズもくり返しが効いていてよかったです。同じ笑いをくり返すことを「天丼」と言うらしく、海老が二本載っていることでそう名付けられたと聞いたことがあります。こちらは、一話目はまさしく、あまりの出来事に
一話目の「俺の◯に滑り込んだG」、そして二話目の「まさかの◯◯待ちをするG」という、シンプルな話をおもしろく盛り立てるリアクション芸的な文章で読ませた筆力に拍手を送りたいです。
最後の作者様のごあいさつ、作品紹介もウェブ小説ならではのおまけで楽しい。全体として爽快に読めた作品でした。
#5 チェシャ猫亭さん
渦と鍋とラジオ体操/チェシャ猫亭
https://kakuyomu.jp/works/16817139555066639119
管理人の好み度❤❤
以前の企画、「昔の笑いで出ています杯」のときにご参加いただき、素敵な作品を投じてくださいました。『シニア読書感想文「杏と寿司郎」』は特に好きで、おもしろかったですねえ。こちらの作品も、サブタイトルが「何の関係もない言葉」ですので、「言葉」について言及されています。
端的に言うと、「読み心地」が非常によかったです。エッセイ風の語りとは思うのですが、どこか違う、と思えるのは、やはり小説という形態を感じさせるからだろうと思います。
七十歳の女性、キミ子が日課のラジオ体操をやりながら、日常や気になることにスポットを当て、心の声を披露していきます。ちなみに、管理人の母親も七十代なので、想像がしやすかったです。自分の親だけでなく、周りも、元気な方が多いですよね。自分がその年齢になったときに同様に健康でいられるかどうか自信はないです。
キミ子さん、毒舌が効いているんですよねえ。ラジオの興味深い話題の途中で入ってきた地震情報に思わず「F××k」は笑っちゃいました。不意打ちでおもしろかったです。
話題はあれこれ移ろいますが、マスクやコロナ、健康法など身近な話題が多めでスムーズに入ってきます。流れが自然ですね。これは主人公が「体を動かしている」ことにも関連しているように思います。読んでいる最中にも体の曲げ伸ばしが見えますし、あのラジオ体操のゆるいテンポに文章も乗っているような感じでよかったです。
何作か読ませていただいていますが、日常を取り扱っておられるものの、ユーモアセンスが洒脱ですよね。いつか読んだ作品が「現代ドラマ」だったでしょうか。静かな迫力を感じたというか、ユーモア小説にしても、文章にそのような気配を感じ取れました。
コメディはどこか、突拍子もないことが現れないと、起こらないと、という決まりがあるみたいに思えますが、ありふれた日常やシリアスなものから立ちあがってくる「笑い」というものもあります。ネタに対する私の切り口、私の「レスポンス」が、キミ子さんと作者様の人間像を読み手に浮かばせてくれ、作家の持ち前というか、信じているものの強さ、のようなものがある気がしました。
それと「三題噺」ですね。私はいまだ挑戦したことがないのですよ。すぐに思い浮かぶものとしたら「オカンとボクと、時々、オトン」とかですかねえ。「いかオクラめかぶ」(ス*ロー)。同種で並べたら行き詰まるやろ……。ちょうどいいお題三つ、くださいっ!(誰かー)
#6 崇期(私です、主催者です)
『初恋』で参加しました。講評なし。
https://kakuyomu.jp/works/16816927862525597858
#7 朽木桜斎さん
怨念ポルカ
https://kakuyomu.jp/works/16817139555130777729
管理人の好み度❤❤
桜斎さん、お忙しい中、ご参戦賜り本当にありがとうございます。
冒頭から登場人物たちの秋田弁での会話、いいですよね〜。しかしまあ、「ほっこり」くる内容ではなかったようです。
桜斎さん、結構ブラックな作品が多いんですよね。世界からまだまだ無くならない不条理、闇の部分をしかと見つめる姿勢、作家として大切なことだと思います。
40男と祖母の、クラシック曲について語り合う仲睦まじい家族の姿が一変──音楽の向こうでなにかが聴こえてくるって、めちゃくちゃ怖いですばい(突然の筑豊弁)。そして実は◯◯だった、という驚愕の展開となり、祖母サチコの想いは虚しく届かず……という内容。
おばあさまの短い言葉で少しずつ明かされていく部分、演出としてゾクゾクしますし、途切れていく最後の方、孫を想う気持ちに胸が熱くなりました。またそこから変わっていく場面との落差がすごい。
笑いとオチの展開として、ある程度予想できるというか、めずらしいものではないと思います。なので方言やクラシックで作家色を出したところがなかなか効いていますし、なんというか、ある意味「方言対決」みたいになっていまして、たまたま春一の奥さんが関西だというだけで、関西の人がどうと言うつもりは毛頭ありませんが、春一とサチコさんの絆に比べたら、この奥さんの最後のギャグの軽さ、そういったところが引き比べられるようになっていて、薄気味悪さが「倍増し」しました。そういう演出の意図というものが、すばらしかったと思います。
#8 猫とホウキさん
『大正義!!』バス運転士の日常/猫とホウキ
https://kakuyomu.jp/works/16817139555061395344
管理人の好み❤❤
多分、公共の乗り物「バス」を私物化しているドS運転士物語ですよね。
今大会のテーマは「実話入り小説」ですが、ジャンルとしてエッセイはダメ、としているのですから、私が「フィクション作品」を求めていたことはおわかりいただけるかと思います。こちらは猫とホウキさんがおそらくバスを利用した際に体験したり目撃したりした場面が含まれているのでしょうね。どちらかというと「バスあるある」であり、個人的体験を期待して楽しむというものとしては弱いものだと思います。
しかしバス・ドラマとして、また笑いとしても最高でした。
「ハートフル」(正しくはハートウォーミング?)の逆の言葉が存在するのか否かは知りませんが、非常に「ハートレス」で、終始「非情」に徹する鬼畜みたいな主人公がおもしろかったです。
私も普段の職業ではサービス業に従事する人間です。いわゆるお客様商売。転職していますので業種や取り扱い商品はいろいろ変わっていますが、まあ、トータルで十年くらいはやっていますかね。「お客様は神様ではないけど、大事です」をモットーに勤めていますよ。そんな私からすると、久里浜は「風上にも置けぬやつ」ですね。
その主人公の久里浜太郎が、なんの罪も落ち度もないはずのお客様を「愚かな市民」「社畜ども」「悪の組織に魂を売るお前ら」と罵り、バス運行の日常上、思いつく限りの(!)悪行を披露していたぶっていく、というお話。
最初の方で、「大正義」からするとライバル企業にあたる「東日本社畜鉄道」のことが書かれてあり(名前に個人的感情出てるのなぜよ……)、あんな会社の鉄道に乗るやつらを運んでやらにゃならんのか……みたいなことが久里浜の憎しみの動機になっているようなのですが、これはちょっと響きにくかったかな、と思いました。それぞれ別の区間を担当しているようですし、お互いが「お陰さんで」もうかってるところもあるんじゃないかと。
バス狂の運転士が血眼になってなにがなんでも客を届ける──でもグズな客たちのせいでそれが阻まれる──という物語の方がなじみが深かったとは思いますが、そこが逆になっているおもしろさと言いますか、「大正義」やタグの「勧善懲悪」の反語表現でわかるように、久里浜はドSで間違いないでしょうからね。なので、彼の行動はなにか動機や背景があるというよりも、ほとんど「クレイジー」「意味不明」と見た方がおもしろかったです。
バスという庶民にとってはなくてはならないもの、生活に大きく食い込んでいる存在、その「笑いのない姿」「現実」部分もしっかり描いて、そのどこか無愛嬌なナレーション的文章がドキュメンタリータッチで、そこに割り込んでくる「久里浜の悪行」「唐突なコメディ展開」が非常にアクのある独特の世界を創りだしているように感じました。
作者の猫とホウキさんもコメントでおっしゃっていましたが、乗客の爆発に関してはたしかに「思い切ったことやったなー」とは思いました。発火剤が怒りというのはわかりますけど、一番爆発しそうなバスを差し置いて人間の方が爆発するとは。すごい発想です。
爆発オチの自主企画もあったと思いますが、コントの終わらせ方としてはやや古い感じがしますからね。タイムボカン的な、というか。
「モルモル駅」や「風強駅」というガチムチ(?)ネーミング、お得意のルビ芸もくだけてはいるのものの、物語の舞台自体は現実部分が多くを占めていると思います。
久里浜の車内喫煙もそうですが、突然のリアル崩壊場面に、一読目には「なにが始まるんだ、これ」と思ったものの、乗客が石になったり花火になったり槍になってバスに突き刺さるなどパターン化してエピソードを締めるようになっていますし、これはある意味、久里浜の熱望の形であり、快楽の象徴ですよね。
ええ、この人は鬼です、悪魔です。ですので、彼の横暴にさらなる「意味のわからなさ」を加える形になっていて、やはりガチムチでしたね(何なのその表現、流行らせたいの?)。
とにかくベクトルとして間違っていない、と。むしろ、最近の猫とホウキさんのコメディ作品が極めていっている「アクの強さ」がここでも失笑必至となっていて、悪が心地いい、という感じですね(ダジャレじゃないよ)。そういう感想が持てる作品だったと思います。
それから、カフェオレ。カフェオレ無糖のオチは非常に好きでしたね。ここまで来たら締めのギャグはものすごく悩みますよね。最後に少しだけしんみりさせておいてからの、久里浜の爆発。しかもこんな理由で、というところが実に決まっていました。
カフェオレ無糖は私にとっても「なんじゃこりゃあ!」的に許せなかった事柄の一つでした。職場の先輩のおばあちゃんがカカオ90%のチョコレートを食べて「吐きだした」と聞いたことがありますが、まあ、はい、甘いは正義……これ間違いないですよ。
誰でもいいから私に謝れ!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860679599131
管理人の好み度❤❤❤
コメントでわかりましたが、エッセイが苦手でいらっしゃるのですね。今大会は、普段からフィクション性にこだわり、創作している作者様からすると、難解なお題だったかもですね。文章の雰囲気からして、エッセイもよさそうな気がするのですが、たとえばですが、性格的に照れ屋であるとか、フィクションという型を通した方がのびのびと自由自在に語れる、という向きの方は、たしかにエッセイは不得意分野かもしれません。
こちらも公共の乗り物ネタになりましたね。列車の遅れと友人とのすれ違いのイライラを描いた作品で、他人事とはいえ同情がわいてきて、日常として共感性も強いもので、題材選びとしてもいいですね。
列車の遅れの原因は人身事故ですから、致し方ないというか、鉄道会社にはそこまで非はないでしょう。アナウンスはちょっと、どうにかして……と言いたくなりますがね。
おもしろいのは友人のふわ子ちゃんですね。あとがきを見るかぎり実在するご友人ではないかと思います。しかし、「◯◯ぜよ」という語尾とか、自分のことを「
冒頭から六行目ですが、「悪魔が天使に変わるほど入念に化粧をする華月だが、」となっているので、三人称が交じってしまったのかな? と思いました。
かなりややこしい説明過多な話になりがちなのを、時間経過などをわかりやすくまとめて、とても読みやすかったと思います。もう、タグがスゴイっすよねえ。かなりイカってますね。ゴッサム・アッサムって、ただの地名じゃないですか? 「おまけ」「あとがき」も物語をより身近に感じられて大変よかったです。そして「五千円払った」の作者渾身(?)のオチが、個人的に非常にウケました(他人の不幸がおもしろい、みたいでゴメンナサイ……)。
#9 🍞🍞🍞🔨さん
(大会期間中次々筆名変わりましたので、その時点のお名前になっています、ご了承ください)
パチ屋に行った話
管理人の好み度❤❤
筆名がまた大胆に変わりまくりましたね……。夏の猛暑がさせたことでしょうか。
私の企画にはもう結構いろいろご参加くださっております作者様です。
企画終了後に下書きに戻されることが多く、現在は近況ノートで作品公開(?)されているように存じておりますので、下書きになってしまったら講評を書くことができない……ということで、どの作品よりも真っ先にこちらを書かせていただいております。
パチンコ店に怪しげなナリのオジサマ(文中では『おっさん』)が現れた──というお話ですね。「わい」の目の前でとんでもないことが起こりはじめそうになり、実際起こったという内容。
ちょっと格好いいキャッチフレーズはもちろん裏切りますよね。冒頭の文章から心を掴まれますし、関連性のなさそうな事柄で説明したりキャッチーなフレーズで意味も合っているのかいないのかよくわからない、というところで絶妙な笑いを生みだすという、作者様特有の文彩が光っていて、そういう意味で、本当に「言葉の匠」でいらっしゃいますよね。
また、田中ざくれろさんの講評でも書かせていただきましたが、「実話が含まれる」がテーマの企画に「ライフル」やら「殺し屋」が出てきちゃうのも、まあ、ご愛嬌と言いましょうか……ギャグとして受け止めたいです。これ実話だったらやばいな(汗)。
なにはともあれ、こういった〝才気ック〟な小説にナンセンスなことは言いたくない、というのが管理人の信条であり、「私はこれを理解できる人間なのよ」とか、そういう通ぶるつもりも毛頭ありません。
単純にこの方の文章や笑いのセンスが大好きなんですよ。
そして大好きであるからこそ、この表現世界の中で、「芸能人の名前そのまま表記」とか「下ネタ」問題はたしかに気になってはいます。これらは作者様の作品の重要なモチーフですので、ある意味なくてはならないものですが、モラル&リテラシー的なものが頭をちらつけば、講評は非常に書きづらいですよ、ほんと……。
言いたいことはですね──心の中では「はさみ先生」「刀さん」とか「田中さん」とか自由に呼ばせていただいておりますが──この作者様の作品を堪能したい気分になったらnoteという方法しかないのか! ということ。
運営様が望む作品像・ルールと合わないのか、ご本人のご意向に合わないということなのか……今後もこちらのサイトでは堂々と読むことが叶わないとしたら、寂しい気持ちです。
「笑いのヒトキワ荘」を気に入ってくださっているのならば、今後も刀さんの作品が読める貴重な自主企画として存在するのもいいかな、と思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
まあ、無理くりケチをつけるとすれば、ギフトが贈れない設定なのに「サポーター限定」記事があるんかーい、と思いますし、作品ジャンルの「歴史・時代・伝奇」が目に入って「違うやろ!」となってしまいました。心の狭い主催者で申し訳ありません。現在のところ、私は作品ジャンルは遊び(笑い)要素には入れない、というスタンスでやっています。真面目な読者から「詐欺やん。間違って開けてしもうたやん。クリックどろぼー!」って言われたら、独自のロジックでもって正当性を主張できるという自信はないからです。
キャプションのYou Tubeの動画も観させていただきました。パチンコで負けるとああいう感じになるんですね……。私は行かないようにしたいと思います。
プールに行った話
管理人の好み度❤❤
笑いのヒトキワ荘に人生かけてます! って。
うれしいんですけど、サブタイトル!
顔文字はいいですけど、これはちょっと……。もしかすると内容に絡めているつもりもあるのかもしれませんがね……。
もし単純にツッコミ待ちだったとしたら……私は主催者として責務を果たしました。もぅ、世話を焼かさないで。これを何度もクリックするはめになったかわいそうな私に、誰か、夏のボーナスをください……。
でもまあ、講評は頑張って続けたいと思います。今回そういう約束ですからね。
物語はよかったです。プールあるあるみたいな。文章も毎回おもしろいのですが、いつもの言葉イリュージョンは控えめでストーリーとしてのつながりがありましたよね。オチも偽BLみたいな、ちょっとかわいらしいお話にしたのかな? と思いました。めずらしくないですか?
「講評が大変」とコメントで正直に告白したところ、ナイトプールに誘ってくださいました(お優しい)。でもそれって、私に水着姿になれってこと? 40歳だけど大丈夫?(端数は切り捨てています)私にはそんな勇気はないかも。でも、焼きそばはいつか一緒に食べたいですね。ドンゴンさんによろしく。
僕がいちばん尾田栄一郎をうまく使えるんだ
管理人の好み度😅😅
このタイトルはすごくいいですね。惹かれました。やはり、この人のこういうセンスはほんと好きだな、と思います。筆名はいろいろ変わられて、プロフィールの文章も──元ネタがすぐに浮かびませんが──めっちゃかっこいいし……。
内容は、「悪魔の実」で不思議な能力を身につけたら、こうしてこうなった……というお話なんです。
おそらくはタイトルを捻ろうとしたんだろうと思います。しかし、このタイトルからは、笑いではなく表現者としての「プライド」的なものが感じられるんですよね。「断定」でありながら、チャレンジ精神のようなものも感じます。かっこよい。
内容が内容ですが、作者様はおのが信じる「笑い」を描ききろうとしている。ブレない表現世界をお持ちでいらっしゃる。それは全作に通じていると思っています。
今回、タグの言葉が気になって、中身を読んでみたらまた「芸能人の名前」と「下ネタ」が満載であったので、「あー、ほんとにカクヨムで書く最後の小説にしようという覚悟で書いたのでは……」と思いましたね。別にそういう意図ではなかったということでしたら、すみません。これからも読みたいですね。
私は以前、ソーシャルゲームをやっていて、もう続けるのもつらくなってきたのでやめて、それでカクヨムを始めたんですけど、同世代の人が家庭の事情で次々やめていく中で、私もやめようと決めたものの、「別にやめなくても、ボチボチやってけばいいんじゃないですか?」というメッセージをお仲間から頂いたことがあります。
それはもちろんそうだと思うんですけど、そこで得られる成果やそこに時間を費やすだけの意味のようなものが見出せなければ、やはり続けられないですよね。
私はカクヨムをいつまで続けていくのだろう……は、ときどき考えますね。
まあ、今しばらくは続けられそうな気はしています。
大会上限の3作を書いてご投稿くださったこと、大変ありがとうございました。
カクヨムに留まるご予定でしたら、ぜひまたご参加ください。お待ちしております。
#10 春雷さん
酩酊
https://kakuyomu.jp/works/16817139555324535011
管理人の好み度❤❤❤❤
初参戦を大変ありがとうございました。
そしてまた、これ、なんか好きでしたねえ。
ダンスに力を入れている学校に通う、ダンスが苦手な高校生の青春語り。
いわゆるガチムチの笑いの作品とは違った、「現代ドラマ」というトーンの小説でした。で、その中に、キャプションの「無駄話」にあたる、主人公を取り巻く高校生たちの漫才めいたおもしろい会話があり、結構な文字数を占めています。
ボケとツッコミの応酬なんですが、高校生らしい話題を選んで、あくまで彼らの会話の中で自然に発生しているもの、といったわざとらしくない感じがすごくよかったです。次々足していて、結構詰め込んでる?……と思わせるところ、かえってこの小説の魅力を上げている気がしました。
一通り終わると、また本筋であるダンスに物語が戻っていくわけですが、ここへ謎の男というか、酔っ払いが登場。ちょっと来い、と主人公が隅へ連れて行かれたときにはドキドキしましたが、まあ、こういう人、どこの町にもいそうですよね。勝手に絡んできて、結局自分の話、どうでもいい話をしだす迷惑な人。
タイトルの「
それから、「麻婆中毒」は明らかに狙っていますよね。なんで麻婆豆腐なんだろうと最初は
笑いを意識して書かれた作品だとしたら、当然「オチ」のようなものが用意されていてもおかしくはないですよね。で、締め部分で、
(引用)
ちょっと待て。高校生が主人公なのにパチンコとかカクテルとか、まずいんじゃないか。
これは「メタ的発言なの?」と少しびっくりしました。一人称ですからね。「主人公」という言葉が、その辺どうなんでしょう。
#11 なかとさん
この国の未来に愛を込めて
エピソード【崇期様企画ヒトキワ荘8回大会参加用】にて参加
https://kakuyomu.jp/works/16816700427138498406
管理人の好み度❤❤
どこか懐かしい漫談風の小品ですね。
通常、一つのネタに対し、もう少し引っ張りたくなるものだと思うのですよ。結構短く仕上げたんだなぁ、と驚きました。ロマンティックに語る前半から現実に突き落とす後半、このくり返しがお見事です。とぅるーに関しても、まさしく実話なんだろうなぁという話題の数々ですね。
(引用)
目玉と鼻が脱着式なら余裕でポリデントするよ?
花粉!頼むから異世界にでも連れ去られてしまってくれ!
これは花粉に悩まされている人は共感できるでしょうね(私は現在のところセーフで過ごしています)。「目と鼻をはずして洗いたい」はよく聞きますが、それがポリデントまで行っちゃってるのはおもしろいです。ポリデントの周知度と信頼の厚さが生みだしたギャグですね。企業の力はすごいですよ。
区切られたネタのはじまりと締めくくりに──(ダッシュ)と……(三点リーダー)で区別はつけていますが、基本一行空けが続いているようなので、ネタとネタの間はもう少し空けてもいいかもしれませんね。文章の余韻、味わいもこのセリフからは感じられます。
私はこういう短いネタを積み重ねて作る小説の場合、「その中の最強ネタ」のようなものはどうしても意識しちゃいます。この中ですと、やっぱりポリデントですかね? また「パピコ美味しいよね」みたいなフツーのこと言って終わる、というのも変化が生まれていいですね。企業はやはりすごいです。
最後も見事に美ネタで着地しましたね。なかとさんらしさが溢れていて、素敵でした。
怒気滅鬼☆本気狩る♡ 埴輪ハオちゃん♪
https://kakuyomu.jp/works/16817139554756763368
管理人の好み度┌│∵│┘┌│∵│┘┌│∵│┘
タイトルの漢字、「はにわ」以外読めませんでした……(笑)いや、マジですって。「マジ」自体、管理人、実生活で一度も口にしたことありませんから。
ええ、このお話、好きですよ。ネタの自由度や力の抜け具合がいいですよね。ふざけ方がいいと思います。こういうの、ハンパにやるのが一番よくないと私は思っているので、やるときは迷うことなく振り切って、トコトンやってほしい。この作品は「トコトン」に関しては
突然堅ーい話題が出てきたときは呆然としましたが、これも自由の為せる
とにかく、企画も終了間際になって、こちらと友未さんの「ふららちゃん」が来たと知ったときには、さすがに「オー……マイ……ガッ(講評!)」となりました。まあ、人生にはいろいろな試練が待ち受けているものです。
でも、それでこそ「ヒトキワ荘」なのかもしれません。ギャグ作品で戸惑わされるのは大歓迎です。
本当にありがとうございました。初出が5月になっていて、すでに抜け目ない管理人がこっそり読んでおりましたが、闇の中をさまよい続けていたのがこの機会に明るみへと復帰したということですね。新装開店ということで「書き下ろし」として受け止めました。
#12 杜松の実さん
未題(四編揃ったのち、改めて付ける)/杜松の実
https://kakuyomu.jp/works/16817139555745598824
管理人の好み度❤❤
いやー、この小説は講評書くのが難しいですね……。
スケッチっぽい小説なのかなぁとも思いましたが、読んでみるとやはり、登場人物二人の会話が強く印象に残りますよね。ジャンルも「恋愛」となっていますし。
「笑い」の作品を多く読んでいるとですね、それこそ大抵の展開では驚かない自分ができあがってしまうんですよね。今回の他参加作のように、人間が爆発しようがおいちゃんのゴルフバッグからブツが出てこようが──ですね。そちらの方が常飲常食の「いつものやつ」なんですよ。
だから、そういうお話ではないだろうと思っていたところへ、このような不思議な感覚の会話が出てくれば、嫌でも驚かされます。「
笑いの作品と、純文学のような小説ではまず、「美」とするものがまったく違いますよね。あまり良い言い方ではないかもしれませんが、それぞれ「手柄」が違う、といったような。
雨の河土手の東屋や、赤い躑躅垣、草に覆われて見えない川面などの風景も本当にきれいですね。杜松の実さんが丁寧に描いておられるので、楽しめました。またこの作品の個性になっている先輩後輩お二人の会話ですが、明らかに恋を意識して、はぐらかしながらも互いが駆け引きを楽しんでいるように思える。様々な誘いかけや提案が女性からあり、重くなったり軽くなったりする先輩の心の様子が伝わってきます。激しく変化する空模様とは別に、二人の間では実に
これからこの小説がどういう姿になっていくのか、続きを読んでみないとなんとも言えませんね。四季がテーマの企画に投じられていて、季節ごとに足していく、とのことですから、大分待たなければならないかもしれませんね。
#13 つくおさん
ナイスワーク
https://kakuyomu.jp/works/16816927862537928063
管理人の好み度❤❤❤❤❤
今大会の中で一番好きだったものはこれです。もうなんか、文句なしでしたし、オフィス小説、会社員コメディは大好き、というのもありましたが、気持ちのいいお話ではないのに「笑い」はふんだんで、しかも「
つくおさんのブラック小説の主人公らしく、こちらも感情の起伏がやや少ないといいますか、実に淡々と観察し、語っていますね。
「ブラックユーモア杯」のときの名取さんの作品でも感じたことですが、こういう主人公の態度はきっと「自衛」であったり「
お話は外回りからオフィスのデスクに戻った主人公が、いつの間にか置かれていたお菓子を食べたところから始まります。余談ですが、このお菓子、文章から「白い恋人」かな? と想像しました。あれ、おいしいですものねえ。速攻で食べますよね。また、ここのシーンが実話かな、と思いました。そうですね、「会社あるある」ですね。それが料理されて実に怖い話になってしまいましたが。
そのお菓子が原因で倒れ、死んだ自分を発見しても悲しむ態度はそれほど見せず、主人公は職場観察を開始します。十二階建てというビルの中だけをずっと見て回るのです。職場恋愛をしていた相手も、だらけた態度の同僚たちも、決して褒められた人間ではないと思うのに、主人公からは強い嫌悪感は伝わってこないし、むしろ「快適だった」「死んでもここにいたいと思うくらいだ」と非常にこの閉じられた空間で行われていた生活に執着していることがわかります。まさに飼い殺し状態というか、会社にも問題あり、とは思いますよね。
オフィスの中の様子やそこに挟まれる主人公の声に独特の「
文章が改行なしで続いていき、ビルの中だけの話になっているため、へたをすると冗長がもたらされそうなところ、挿し込まれるエピソードの容赦ない嗤いや滲みだす人生の姿がよかったですし、物語もよくここまで二転三転させたな、と。そしてブラックユーモアらしい最後……。
とにかくすばらしかったです。
#14 八壁ゆかりさん
八壁ゆかりに関する噂
https://kakuyomu.jp/works/16817139556177290553
管理人の好み度❤❤
ゴハッ……(喀笑)。今回、「実話が含まれる」ですので、筆名そのまま主人公も現れるやもしれん……とは思っていましたが、まさかタイトルに入るとは。思い切ってますね。あの八壁さんにどういう噂が──と俄然興味を引かれました。
舞台の「私立ワキトヒ学園」……サービスをありがとうございます。100%とぅるーと告白してくださいましたから、そうなのでしょう。いやはや、最後に出てきた「学園恋愛シミュレーション妄想」そのままに、これでもかこれでもかとイケメン男子たちが出てきましたね。私は実は「逆面食い」なのですよ。かっこいい男性はALLダメなのですが、それでもこの学園はちょっと興味が出てきました(誰も知りたくない情報をすみません)。
いや、わかりますよ。異性の友人が多い方っていますし、話しやすいとか、付き合いやすいとか、そういうのがあるんですよね、きっと。
おそらく、「素敵」「かっこよひ……」みたいな感じで来られると、若干の鬱陶しさ、扱いにくさがあるので、そうではなくざっくばらんに接してくれる八壁さんの態度がイケメンたちにとっては過ごしやすいものだったんじゃないかな、とも思います。
「ビッチ」についても大変勉強になりました。こういうのは助かりますね。なにかを表現したいときに便利な言葉は世には必要で、だから生まれるのだと思います。しかし、無料アプリで漫画を結構読んでいるんですけど、そのコメント欄で、異性に対して行動派な女性キャラクターに対しての「ビッチ発言」を見ると、あまり気持ちのいいものではありませんでした。短絡的すぎる、という理由な気がします。
話を小説に戻しますが、実話として学生時代の小エピソードを登場イケメンに絡めて紹介しつつも、ありがちな物語に嵌めずにさらっと流して読者に渡したところが非常におもしろかったです。
ただ普通に学園生活を送り、思うままに交友しているだけの主人公に対して、振り回されてやきもきする周囲がなんともはや、ですね。その辺の「本人つゆ知らず」な、悪びれない感じがカラッと描かれていると思います。
こっぱん 〜若き母の笑ってはいけない奮闘記と余談〜
https://kakuyomu.jp/works/16817139556573378783
管理人の好み度❤❤
八壁さん、二作目も本当にありがとうございます!
いや、まさか、ここまでの現代ドラマが来るとは予想していませんでした。
正直申し上げると、ヒトキワ荘にいただくにはもったいない作品ですね。この企画をはじめてもう二年目になりますか。最初のころは、もっと「デンジャラス」でもっと「閉口必至」な作品ばかり集まるだろうと予想していたのに、ここまで感動の悲鳴をあげるような始末になろうとは思ってもみませんでした。ま、たまに、そういうものもチラホラ来ることは来ますけど──「カクヨム作家さん恐るべし」ですし、私は凡な書き手だと思いますので、大変勉強させてもらっています。
文章がすばらしいですね。内容はまさしく「ドラマ」ですからね。
物語は若き母の奮闘記という、ある意味感動物語ですが、岡山の方言「こっぱん」がキーワードになっていて、まさにそれにより「事件」が起こっています。
時代設定を現代に直していて、「スマホ」「推し」などの言葉が出てきますが、「育児放棄」のような由々しい問題は皆無な世界でした。夫がそばにいない状況でも気丈に務め、子どもに愛を注ぐことを誓う主人公の弥生さんがすばらしいです。DIYの部分を読んだときは、世のお母さんたちの努力が目に浮かんで胸が熱くなりました。
「こっぱん」「ほろせ」に関しては、私もウェブ検索させていただきました。ほかにも何通りか言い方があるようですね。作中でも解答があるように「
弥生さんと救急安心センターの原さんの間に「こっぱん」という壁(強敵)が立ちはだかり、二人はほどなくして乗り越え、読者としてもほっと息をつくわけですが、この小説の一番の特色になっているところは、余談でも語られているとおり、最後の原さんの人生展開ですよね。
ハッピーエンドとしては、夫が帰ってきて「こっぱん」が夫婦の間でも無事着地して、それで終わりでも十分よかったんですけど、これはこれで一人の人間の人生を変えるまでになった「こっぱん」ということで、ドラマティックでおもしろいな、と思いました。現実にもあり得ることはあり得るわけですが、フィクション作品の良さ、を感じます。
『金を払うから素手で殴らせてくれないか?』は知りませんでしたが、結構話題になった作品のようですね。
「医療用語の方言」──。たしかにこれを極めたら世界を救うかもしれませんね。
混ぜる夫 〜ゆなちゃんとひーちゃん〜
https://kakuyomu.jp/works/16817139556412325561
管理人の好み度❤❤❤
八壁さん、上限である三作もご投稿くださり、本当にありがとうございます。それに二作は心温まるコメディタッチのホームドラマでしたね。八壁さんもこういう作品をお書きになられるのだな、と少し意外でした。私の中でもパンクで格好いいイメージがありましたからね。作品も。
さて、お話なんですが、八壁さんの旦那さんが「なんでも混ぜてしまう」(多趣味であり同時進行でいろいろできちゃう)といった特徴があり、それをフィクションの形に書き起こしたものですね。
丁寧語で語られるやさしげな文章と、かわいらしさとたくましさ(!)を同時に備えたゆなちゃんにマイペースそうなひーちゃん、とても惹き込まれましたし、内容もおもしろかったです。
ただ一つだけ気になったのは、情報量に関してでしょうか。穏やかなテンポが続き、話題の重なり(料理など)もあったために、読みながら脳が情報整理をはじめてしまったところがありました。
具体的には、「そういえば三年付き合ったってことだったけど、そのときには複数タスクは見られなかったのだろうか」とか、「お部屋におじゃましたときには本も趣味の物も一度も見なかったのだろうか」などで、これは最初の方に「知らなかった一面を発見した」と書かれてあったので、そうだったのだろうな、とは思います。
2作目の『こっぱん〜』でも思ったのですが、丁寧な背景の書き込みや真面目に問われるべき内容など、シリアスな割合が多くなってくると、どちらかといえばコメディよりは現代ドラマ寄りとなり、「これはいいかげんな作品ではない」と、読み手の意識を一段あげてしまう、ということが起こります。物語を真剣に吟味するような精神が生じるわけです。
「ほのぼのホームコメディ」であれば、エピソードを紹介しながらやりとりや空気感を届けるものだと思いますので、この緩やかなテンポも好ましいものでしょう。それに実話ですので、内容自体がネタとして重要であったとも思います。ただ私個人は、「混ぜる夫」の笑いを際立たせるのならば、情報や描写をもう少し削ってテンポよく行くのも手だったかな、と思いました。
私はゆなちゃんが、「混ぜラー」であるひーちゃんの「普通」についていけず、積もり積もって爆発してケンカになってしまうあのシーンと、その手前にあるひーちゃんが手作り餃子に感激するシーンはとてもよかったと思います。なので、十分に楽しめる内容で、魅力やかわいらしさは出ていました。
いろいろ申しあげてすみませんでしたが、ここまでヒトキワ荘に熱心に来てくださるのが私個人としても純粋にうれしいので、管理人による一つの意見ということでお許しいただければと思います。
三作とも色の違った、また丁寧に仕上げられた内容の濃い実話小説をお寄せいただきました。また機会があれば拝読させていただきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
#15 友未 哲俊さん
オルフェーヴル!
https://kakuyomu.jp/works/16817139554754520841
管理人の好み度❤❤❤❤
こちらの作品は久しぶりに興奮しました。長さ(読み応え)もさることながら、なかなかの名作、でしたから。
私がヒトキワ荘の企画をはじめてから読ませていただいた作品の中で、〝最推し・四強〟というものがあるのですが、それが、七草すばこさんの『非性的ストリップ劇場に集い、秘密裡な炙りに興じる、寄る辺なき人々』、凪常サツキさんの『付加価値食堂〈カフェイヨ〉』、真花さんの『寸止め知らずの路上面談』、そして、企画にはご投稿されていないのですが、「参加する予定がありました」と聞かされていて、もう勝手にヒトキワ荘作品だと私が思い込んでいる、つくおさんの『仏頂面のララバイ』。
この四作品は、私がもう、非常に気に入ってしまっている笑いの作品で、友未さんの『オルフェーヴル!』もここに加えたい、と読んだ瞬間に思いました(これは、非常に個人的な趣味、密かな心のコレクションという意味での発言なので、どうかどうか、こちらに挙がっている作品の作者様は広い心でお許しくださればと思います)。
『オルフェーヴル!』は
この心温まる物語の中の、ズッコケたくなるような、ツッコまずにいられなくなるような「くだけ感」も、私が思うユーモア小説でした。そしてなんとは言っても、登場人物たちの魅力。一番はやはり主役の「杉本くん」ですね。
内容は本当に「Theフィクション」という感じなので、しらけてしまう方はしらけるでしょうね。一話目の「神戸肉仙」で起こった事件が見事なまでに全回収されてしまう二話目の「逸走」。洒脱で優雅な生活を送る杉本くんは、平凡らしい「ぼく」と読者からすると理想像ではあるので、ハッピーエンドは「切望!」とは思うものの、こういった進行をするストーリーに対して「ご都合主義」という
青春小説として有名なP・オースターの『ムーン・パレス』を読んだときも、これはいくらなんでも偶然が過ぎる……と思ったもので、それを激しく批判するレヴューも多々見かけました。しかし、それを踏まえても、あの物語を素敵だと思った、胸がじぃんとしたという感想が剥がれ落ちることはありませんでしたし、そこにフィクションの輝き、なんともいえない滋味、物語の存在の価値を私自身は感じました。
現代ドラマとなると、さすがに「出来すぎている」のはキツイですよね。古今東西の書物を読み漁っている読者は容易には騙されません。しかし、友未さんのこちらの小説はユーモア作品であるために、そういった展開も「おいおい」というツッコミが起こるような笑いになっていますよね。特にルリカ嬢……馬券購入はいつからって? 二十歳からだぞ?
「オルフェーヴル」という実在する競走馬、そして実際に競馬界で起こった驚きのレースを見事に物語に組み込み、価値や思い出の再編が友未さんの中でされているように思いましたし、こんなことも実はあったかもしれない……という、痛快な虚構(夢小説)になっていると思います。
三菱アイやボーダーコリーのデベンなど、随所に友未さんらしさが溢れていて楽しいのですが、一つだけ気になる点があります。
コメントにも書かれてありましたが、人物たちの名前ですね。杉本清、横山ルリカ、井崎脩五郎さんらは実在する競馬関係者、有名人であります。これももちろん、競馬好きな友未さんの遊び心だと思うんですね。
主人公に関しては、作中で「脩五」と呼ばれているので、「そのまま」とも言い難いです。が、恋人二人はフルネーム表記は回避しているものの、明らかに「そのまんま」なお名前になっています。私はこちらは、一字だけでも漢字を変えるとか、もじった名前にして、「わかる人間にはわかる」という笑いにした方がよかったのではないか、と思いました。
人様の御作になんやかや言うのもアレなんですが、過去にヒトキワ荘にご投稿いただき、削除要請を受けたかなんかで「途中退場」してしまった作品が数作ありまして。そのすべてに「芸能人の名前がそのまま表記」されていたために、私も若干敏感になっているところがあります。
実在の芸能人をキャラクターとして扱っている小説もたくさん読みましたし、友未さんの小説も内容からして問題ないとは思うものの、作品が
また小説の一番最後に唐突に出てくる、「めめぎろしい」に関しても、わからない人もいると思いますので蛇足ながら解説しますと、友未さん主催の企画、「おバカの里 第2回」に投稿した拙作『博多発、5分で3PV』でギャグとして使った宮崎県の方言を友未さんがすごく気に入ってくださったようで、こちらも私に対するメッセージというか、二人だけに通じる「笑い」として非常にうれしいものがありました。こういうところから見ても、友未さんが、こちらの作品を笑いのヒトキワ荘用に、楽しんで書いて送ってくださったことは非常によくわかります。しかし、『オルフェーヴル』の出来の良さ、小説としての魅力は「個人的領域」を遥かに超えています。できましたら、ヒトキワ荘を知らない人にももっと読まれてほしい、と心から思うような作品です。
なので失礼ながら、そう思いました、という感想を述べさせていただきました。
いずれにせよ、愛と笑いに満ちたとても素敵な作品でした。私はカクヨムで、こういったユーモア小説をもっとたくさん読める環境というものを欲しておりますので、今後も書いてくれそうな作者様を見つけていきたい、もしできることなら「けしかけて」やりたい、と目論んでおります。友未さんもぜひ、どこかにそれらしい雰囲気を湛えた作者様、作品を見かけたときには、ご一報くださればうれしいです。またご自身で書かれたときにも、ぜひともヒトキワ荘参加候補に──なにとぞよろしくお願いします。
ふららちゃんの失敗
https://kakuyomu.jp/works/16817139555061395344
管理人の好み度❤❤
あうー……めまいがします……。
いや、あの、いい意味でのめまいではありません。倒れそうです。お話(太陽)がまぶしすぎて。
あのすばらしき『オルフェーヴル!』の後続としてこれを投げ込むという心意気(?)。そういう笑わせ方、たしかに好きですけどね。それでこそ真のユーモリスト。
キャッチコピーが「不健全図書かもしれない」ですか。そうですね。私の大好き(?)な「悪書ポスト」行きということでしょうか。
二話目の「きれいな電車」が実話部分であり、最も読ませたいところ、ではないかと想像するのですけれども、その導入として用意された一話目が、とんでもないわ……。
でもなんか、グリム童話の不思議で残酷なお話みたいで、カラッとしていて、いいですね。
二話目がほんと、ガラッと変わりますが、懐かしい昭和が香る思い出話。私の世代より少し前だと思いますね。私の頭がなんとかかんとか残してくれている幼少の頃の記憶を辿ると、そこには「銭湯」があり、「映画館」があり、「レコード」も辛うじてあります。街路樹の「柳」も強く思い出に残っているのですが、いつの間にか「切られて」しまい、今では柳の街路樹なんてすっかり見かけなくなりましたね(銀座にはあるという話で?)。私はそういう世代です。月光仮面はさすがに観ていなかったと思いますが、ウルトラマンの歌を赤いペラペラのソノシートで聴いたり、昔話もレコードで聴いていました。いや、昔語りはやはり懐かしい。
お巡りさんが勝手に持ち場を離れてしまったのが気になりましたけど、人々の心に巣食っていた傷が素敵なお話の効力で治ったところは本当によかったな、と思います。突拍子もないように思わせて、そういう着地のおもしろさはありますね。
「ふららちゃん」シリーズですが、今後もなにが出てくるかわからない「爆弾作品」として、怖いながらも更新楽しみにしようかと思います。お忙しい中を二作も渾身のユーモア小説を賜り、本当にありがとうございました。
#16 みさかさん
決意
https://kakuyomu.jp/works/16817139556288895776
管理人の好み度❤❤
お忙しい中ご参戦くださり、感謝申し上げます。
一筋縄ではいかないおもしろさ、と言いますか、どう解説したらよいものか難しい作品ではありますね。
冒頭の森口君、田口君のやりとりは大変おもしろかったと思います。文章もいいですしね。
どうして口がついている名字の人を並べたんやろ、と思い(通常は避けるところ)、「口を開いた」とか「口をついてでた」という表現も見られるので、あえてなのかな? とも思いました。
その後、場面が急に変わったと思ったら、それも夢だったというかなり強引な展開。
「夢だった」オチは昨今では使えない部類のものだと私は思っておりますが、そもそもが夢オチが必要と思われる流れでもない、というところに、寝ぼけてつぶやいた意味不明のセリフ、懇切丁寧な「安積高校」の説明と、「理屈に頼らない笑い」「掴めそうで掴めない」という世界はできあがっているとは思いました。
みさかさんの作品はヒトキワ荘で何作か読ませていただき、スピード感は持ち味だと思いますし、もちろん好印象でした。なので、「こういう形態の小説なんだよ」として行くのもいいのかもしれません。
もちろん好みは分かれるでしょうし、混乱させずに最後まで読ませる、というのが勝負でしょう。おのずと脚力、というものが必要となりそうです。方言も武器になりそうですね。
とにかく、「ボケとツッコミ」は凄腕をお持ちだと私個人は思いますので、今後も注目していけたらなと思います。
しりとり必勝法
https://kakuyomu.jp/works/16817139556428989817
管理人の好み度❤❤
みさかさんの二作目。
いやはや……これを私にツッコめというのか……。いや、ツッコミじゃなくて講評だった。
ここまでオチ一発勝負というのも久しぶりに読みました。その爆弾オチの効果をあげるための冒頭からの入念な解説はなかなかよかったと思います。
実話部分は「高速入眠」でしょうか。
唯一ツッコませていただくならば、
(引用)
かつやろうと思えば一人でもできることから、日本人なら誰しもやったことがあるアレです。
いや、しりとり一人でやる人おるんかーい。ただの独り言やないかーい。
大変失礼いたしました。もちろんこれもネタですよね……。
#17 超時空伝説研究所さん
漫才:脳内変換
https://kakuyomu.jp/works/16817139556620390671
管理人の好み度❤❤
初ご参加の方ですね? 漫才作品のご投入、ありがとうございます。
脳内による誤変換、というか、字面や雰囲気による勘違い、みたいなものですかね。
こちらは本当に実話という気がしますね。「あるある」でもあります。
ボケとツッコミによる会話形式の作品、漫才なので、最初はたしかに「ああ、それたしかにありますよねー」というところから入っていき、段々エスカレートしていくものと思いきや、しょっぱなから「???」と、かなり無理めなエグザンプルが並びましたね。
よく読んでいますと、だいたいツッコミ役の方が「おかしいだろ」と怒りだしそうなのに、ボケ役の方が「知らねえよ、◯◯だろうが」とキレ気味なのもおかしかったです。間違えてしまうものは、そう見えてしまうものは仕方ないんだから、という感じでしょうかね。
かなり自由度の高いネタになるので、話題を曲や映画などのわかりやすいものにまとめたところはいいな、と思いました。間違え方は「くだらない」「無理め」でも、ツッコミとのやりとりで笑わせる、という形でしょうからね。
今後、ヒトキワ荘ではショート作品の中からも賞を選出しようと考えていますので、また見かけたときにはご参加いただけるとうれしいです。
#18 和田島イサキさん
貞◯ vs アルマゲドン
https://kakuyomu.jp/works/16817139556846617635
管理人の好み度❤❤❤❤
やはり、まず触れるとすればキャッチフレーズですよね。既知となった今でも何度も目が吸い寄せられてしまいます。
おそらく、「口に出して言いたい日本語(キャッチフレーズ)」になってしまったのではないかと思います。実際、独り言でも羞恥心が勝ってしまい、まだ一度も発声してみてはいないのですが、今後も「言ってみたい」欲望と戦っていく気がします。参った。
こちらの作品、オチの意外なほどの「コミカルさが」やはり一番語られるべきところという気はしますよね。コメディ作品ですので、こういうオチは喜ばしい以外のなにものでもないわけですが、それにしても私、うまくだまされるものなんだな、と思いました。
タイトルに「アルマゲドン」とあり、作品ジャンルも「SF」と情報提示されてはあるのですが、「貞◯」と「来る、きっと来……」という視覚情報、冒頭からの幽霊と必死で向き合う主人公の熱い想いに心はかっさらわれて、どういう結末が待っているか、ということが度外視になってしまいましたよね。
「貞◯」についても、貞子は有名な商業作品の登場人物ですから、そういう「配慮」で伏せ字なのであろうと思っちゃったわけですよ。本当に私はいいお客さん(読者)です。
ただこちらの作品は、オチだけの魅力で終わるものではないと思います。語りは独特ではありますけれども、そういう状況下で「死に方」について必死に思考する主人公に惹き込まれずにはいられませんでした。バイクをかっぱらってしまって、逃げて、それでその物件に辿り着いたと書かれてあり、それくらいしか経緯はわからないのですが、突拍子もないように思えてそれでも支離滅裂とまでは思わない。性欲を持ち出すまでもなく、彼の言葉から伝わってくる「生」の熱風がすごくて、胸を掴まれてしまうわけです。
最後の幽霊の行動に関してもですね、この幽霊も気持ちを動かされたんじゃないかと。「死にたくない」という気持ちを打ち明けられたら、「だったらなんとかしてやろうじゃねえか」みたいな、かっこいい幽霊による
主人公の時間の流れで言うと、「貞治」と名付けた後での「あの行動」でしたから、名前どおりの行動取るんかい、しかもほとんど「未経験」っぽいのに、とその辺も非常におかしかったですが、アルマゲドンに対するこういう思いもよらない戦い方、主人公と一緒に「わりと好きな方ではあるけど」って思わずつぶやきたくなりました。こういう「生」が強く立ちあがってくるコメディ、大好きです。サブタイトルの「Oooh」らしい……も、こっそりネタばらしが憎いですね。
実話に関しては、Twitterで「どこが実話かは内緒」と書かれてありましたが……うーん、と考えましたよ、考えました…………激辛ラーメンではないでしょうか!! きっとそうや!!
また今回、以前からずっと読みたい読みたいと思って読めていなかった和田島さんの渾身作『アリス・イン・ザ・金閣炎上』もようやく完読しました。
実は過去に二度開いて、冒頭だけ読んでいたのですよね。通常、おもしろくなかったから離脱したんじゃないかと思われがちですが、私の場合そんなこともなく、家事の間にちょこっと読むことも多いので、また用事に戻る必要があり離れることもあるのです。もちろんサラッと読める内容の話であれば、最後まで一気に読むかもしれませんが、お察しのとおり和田島さんの文章のエネルギーはすごいですから、「また後で時間があるときにゆっくり読みたい」という気持ちが起こり、離れました。二度離れてもまた戻って読む、はたしかにすごいのかもしれません。またTwitterで他のユーザーさんが勧めていると、和田島さん作品はついつい読みたくなってしまうという「タイトル」「キャッチ」の吸引力がすごいです。
また別の自主企画でお見かけすることもあると思いますので、次の作品も期待したいですね。ご参加を本当にありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます