101号室 紫李鳥さん


 2021年1月〜2月開催 全46作品。涙涙の……(?)。

【笑いのヒトキワ荘・第二回住人募集中】シュール&ナンセンス杯

 https://kakuyomu.jp/user_events/1177354055597805191


 激戦だった今大会を制したのはこちらの作品です。


 落語 漢字ん帳/ 李鳥りとり

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054889620848


【ヒトキワ荘・作品分類】

 ・落語小説 (ギャグ系)


【作品概要】

 架空の落語家、秋風亭しゅうふうてい流暢りゅうちょうの今回の演目は『漢字ん帳』。長屋住まいのカン太は父ちゃんと母ちゃんと弟と、大の仲良し四人家族。ある日、母ちゃんのお使いで「”魚に春”」を買ってくるように頼まれたカン太だったが、間違えて買ってきてしまったのは……。魚偏の漢字をネタに流暢ギャグが冴え渡る!!



 管理人室より


 紫さんは私が結構前からフォローしていた作家さん。つまり、好みとしていろいろ読んでおりましたし、この秋風亭流暢師匠の語り作品も何種類か、読ませていただきました。


 どれもそれぞれ個々の味わいとドラマがありとても楽しい作品。ですが全体感想でも書いたとおり、今作は一際抜きん出ている! という感じがいたしました。


 私はカクヨムでの「星」と「ハート」のつけ方の正解がいまだによくわからず、同じ作者様の作品で前作や一番好きなものと比べると「今回は2個かな」と思うのですが、他の作者様につけている星3個よりこっちの方がおもしろいんじゃないの? とふと気づいたとき、なんとも自分の判断に釈然としないような、妙なジレンマを感じることがあるのです(同じ3個でも実質は5個以上じゃないか、というくらい大好きなものもありますし)。


 中には、「短編や詩には2個しかつけない」という、文章の長さ、小説か小説でないかで判断しておられるユーザー様もおられるようで、ますます混乱します。


 結局、やはり星では作品への本当の気持ちは表せない、だからコメントやレビューを書きたい──けれどもちょうどいい言葉が浮かばないこともある。なので、こういう企画で、このように事細かに自由に感想を述べさせていただけるのは、本当に幸せな気もします。ただ、そう言いながら、この作品にはコメントもレビューも即行で書いた記憶があります。すぐに言葉が浮かんでくる、というのは、ある意味「魅力やおもしろさがはっきりしている」ということかもしれません。込み入った感がない、という感じですね。


 そして、私がこの作品を101号室に選ばせていただいたことで、「管理人はどうしようもないゲテモノ好きである」という悪い噂が立つことを防げるのではないかと、そういう効果も期待できちゃう気がします。ええ、そうなんですよ、私だって正統派な笑いの作品をちゃんと選べる人間なのです。


 と、個人的な思いはこれくらいにしまして(前置きが長すぎる!)、


「漢字ん帳」は、落語でおなじみのまくら(冒頭の小話)からはじまって、蘊蓄うんちく披露→本編という形になっていて、隅から隅まで惜しげもなくギャグが盛り込まれています。紫さんのギャグセンスの好もしさは言ってみればいつものことなんですけれども、今作は特に、作品全体としての整った美しさ、というものを感じた感じで漢字んなのです(え?)。



 また内容に注目すると忘れがちですが、段組みなども工夫されていて、読みやすさといった心遣いも素敵です。きっと紫さんはとても几帳面な方なんでしょうねえ。私は頭が堅いのか空間センスがないのか、「絵文字」でさえも一苦労します。美的センス、かもしれませんね。


 でも私が一番気に入っているのは、江戸っ子口調って言うのか、「語り口」です。読んでいますと、本当に流暢師匠の声が流れてくるようで、頭の中で「でぃ」待ちになります。この語尾の「でぃ」がたまらなく好きで、これだけでご飯三杯はいけますね! (誰よ、こんな常套句を作ったのは! お肉でも三杯食べたことないんですけど!)


 ギャグはたしかにナンセンス・テイスト。私のツボは意外にも「……参加することに意義があるからよぉ」でした。それから家族ネタですね。紫さんは他の作品でも愉快な家族を登場人物に据えた作品を結構書いておられますね。お得意な、という感じ。そしてときどき現れる「艶展開」も非常にコミカルで好きです。こういうものをさらりと挟んで崩れないという物語世界が羨ましい! 庶民的ですが不思議にそこまで下世話な感じはしません。


 私が一番はじめに読んだ落語作品が「江戸・Oh!掃除(落語風)」だったと思います。こちらも雰囲気が大好きだったのですが、今読み返してみるとやはり「漢字ん帳」のすごさがわかります。本当にお話として短いのに、内容が厚い、でもギャクは軽い味わい。

 それからプロフィールなどを見させていただきふと思ったのですが、「なんでこんなすばらしい作品を企画に投じてなかったのか」と全体感想で言いましたけれども、カクヨムにユーザー登録されて割合すぐに書かれたのがこの作品かもしれないですね。この……すごい作品が……はじめの頃ですか……おそろしや。そういったところも企画参加が少なかった理由かもですね。


 落語の世界は現実でも結構多様性があるみたいで、この「流暢落語」も今後小技が増えていく可能性もあるでしょうかね。その点、管理人は笑いの作品ならたら 河豚ふく 食べられますので(ご飯三杯ネタ回収成功)、鱶々ふかぶかとカブトを下げてお願いしたい 気持ちがトロ箱いっぱい溢れています(結構しつこい……笑)。


 懸念があるとすれば、こういったシリーズものはファンの方たちから「前作(あるいは一番好きだったエピソード)と比べられてしまう」というところかもしれません。でも全部が全部同じテイストになってはいないので、今度はどれかな? という楽しみが私の中で生まれています。紫さんの「階段箪笥もびっくり」といった抽斗ひきだしの多さを思えば心配ご無用といった感じでしょうか。これからも新作、楽しみにしたいです。




 紫李鳥さんへ


 管理人がつけたあだ名  「瑠璃鳥ルリチョウ印のよろず書店」


「し・りとり」さんと読ませているお名前だとずっと存じあげず、しばらくの間、頭の中でずっと「ムラサキさん」と呼び続けており、大変失礼しました。

 ネット上で紫色の羽の美しい鳥の画像を見ましたので、それをちょっと拝借して。もちろん「カクヨム界の和風◯本家」もちらとよぎりましたが、既存の番組名とかキャラクター名はいろいろ権利がうるさそうですし、プロフィールに「古本屋さん」とありましたので、「よろず書店さん」とお呼びできたら、ちょっとかわいいかなぁと思いました。


 まさにカクヨム界のエンターテイナーというように、現代ドラマもコメディーもミステリーも、落語も一発ギャグ作品もあればコンクレーテ・ポエジー(具体詩・視覚詩)もありと、本当に多彩でいらっしゃると思います。「昭和風」ということですが、おそらくは文学の、そしてまた文化の「美」というものを味わうことを重じておられる作風ではないでしょうか。そう思っています。


 読む方でも読まれる方でも、いつも大変お世話になっておりまして、私のお話でお目汚しとなっていなければいいのですが(きっとなってる)。他の作者様もそうですが、あれほどすばらしい作品を書かれている方に自分の作が読まれているのだと思うと赤面するばかりです。でももう手遅れですのでこのことは忘れたいと思います(潔し)。


 作品数が200超えですかぁ(2021年2月現在)。今回、アトリエにおじゃまして他の落語作品も漁りまして。もう、落語作品だけでディスコグラフィー作ってほしいな……と思っていたら、ありました! 「カクヨム☆ダイアリー」(投稿作品一覧)が。落語作品は「その他」になっているのですね。しかしこれも、めんどくさがりな方にはできないことですよね。URLまでついているし、ファンサービスとしては万全です。これで私も好きなときに好きなだけ「流暢作品」が読めますね! 


 自主企画参加も積極的な方であられると思いますので、今後もお時間がありましたら、ぜひご参加ください。ぜひ常連で! よろしくお願い申し上げます。

 101号室獲得、おめでとうございます。


 ヒトキワ荘・管理人&フォロワー 崇期より。












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