第3話 研究

「新しいサンプルか。しかも子持ちねえ……興味深い研究対象だね」


早速持って帰ったれいむ種を見せると、ユウヤは大喜びだ。それはそうだろう、と俺は思う。子持ちの、それも胎生妊娠をしているゆっくりなのだ。ゆっくりは基本的に植物性妊娠、額から茎が生えてその先に実のようにおちびがなる方式なのだ。しかし胎生妊娠をするゆっくりは、それしか方法がないと思い込んだ奴らに限るため、野良ゆの中では超レアな逸品なのだ。噂によれば、鬼威惨や鬼寧惨が集まるゆっくりオークション、通称ゆくオクにも超がつくほどの高値で競りが行われてるようだ。近くのショップで専用キャリーケースを買ってから持って帰った。持って帰るときの衝撃で死産してしまうのを防ぐためだ。


「よし、ケースを開けるぞ」


そう言うと、動物を病院に連れていく時に使うようなキャリーケースのファスナーを開ける。幸い(?)まだ息はあるようだ。


「ゆ?まりさとはぐれてしまったんだよ……くそどれいはまりさにあわせてね!すぐでいいよ!」


「心配しなくても、まりさ君には会わせてあげるよ。僕らの研究に協力して貰えたらね」


昼食のベーグルを決めるかのようにユウヤが答える、まあ嘘だが。仮にさっきの場所へ連れて行ってもそれはかつてゆっくりだったモノと化しているだろう。


「ゆ?けんきゅう?なんだかゆっくりできないよ!」


勘が良いゆっくりだな。ここで喚かれても困る。少し早いが……


「シャベルナァァァァ!」


そう言うと、ゆっくりショップでキャリーケースと一緒に買った強炭酸ラムネスプレーをかける。これは本来、ゆっクリニックに行くのを嫌がるゆっくりを眠らせてから連れていくためのものだったり、不眠症に陥ったゆっくりにかけてから眠らせてやるためのものだが、通常のものだと炭酸が弱く、ただ眠らせる効果しかない。炭酸が強ければ強いほど、麻酔として機能するため、強炭酸タイプのそれは虐コーナーに置いてある。解剖好きな鬼威惨や鬼寧惨の為なのだろう。今回はそれを使って、麻酔の代替品にしたのだ。


「ゆぅ……すーやすーや」


単純すぎる、眠ってしまったようだ。


「麻酔はした、慎重に切り開いて行くぞ」


果物ナイフで、腹を切っていく。目的は赤ゆがどうなっているかを確かめるためだ。


「もうそろそろ到達するぞ。中身がどうなってることか……」


ゆっくりの胎内を少しだけ切り開いて見てみると、親ゆと同じ赤いリボンが見えた。


「うわっ、リボンだけ残してドロドロに溶けてる……毒によるものだね」


そうなのだ、未成熟の赤ゆは、母ゆの胎内で生まれる前にドロドロに溶けて、お飾りがないと元のゆっくりがなんだったのかすら分からないレベルなのだ。よしんば母ゆが無事だったとしても、なにも違和感がないまま過ごしたのだろう。まあ、あの煙を浴びたないしは吸ったゆっくりが無事であるはずがないが。


「どうやら、未成熟の赤ゆがあの毒を摂取すれば、ドロドロに溶けるようだ。これは新しい発見だな」


「だね。このれいむどうする?」


「どうするもこうするもない。どのみち毒が中枢餡に到達して死ぬだろ。得られるものは得たから、こうするのさ!」


そう言って、果物ナイフを深く突き刺す。中枢餡を貫通したような手応えがあった。


「ん?れいむが震え始めたよ?」


中枢餡を貫いた瞬間、れいむが震え始めたのだ。


「何だ?何があったんだろうか(すっとぼけ)」


果物ナイフを抜いた途端、餡子を吐き出して絶命した。


「隠者(ハーミット)の逆位置、欺き……まりさに会える場所と言うのは先ほどの公園ではなく、あの世だ」


ククと笑って、タロットカードを1枚とる。


「そう言えば、2度目の時にまりさ種が全身が焼かれるような苦痛を受けたような反応をしてたんだが……1回目の時はおちびはそんな反応示さなかったが」


「ああ、あれね?少しだけ、改良してみた」


嗜虐心をそそるものを作ってくれる……だが嫌いではない。


「おちびに気を取られて親ゆの中身がどうなってたか確認し忘れてたな」


そう言って、チラリとれいむの方を見ると、はみ出た餡の色は最初に捕獲したおちび同様黒紫色になってしまっていた。内部も見てみると、じわじわと黒紫色の場所は侵攻していた。どうやら、死んでも毒は中枢餡を破壊するまで止まらないようだ。


To Be Continued

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対ゆっくり用毒薬 @Darkmattervoid

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