第6話終章・アゴノとカケル

 ダーク・サイエンスの驚異的に強い兵器を一撃で倒した私・アゴノは、前線に大急ぎで戻った。兵器と戦っている間に襲撃を受けているのかもしれない、そんな懸念が私の頭に色濃く浮かんだ。しかし前線は特に攻撃された形跡は無く、誰一人として死者も怪我人もいなかった。マークとテグー教授が出迎えてくれた。

「凄いぞアゴノ君、いやこれはもう言葉では言えない程の活躍だ!!」

「ありがとう、君は本当の守護者だ!!」

 マークとテグー教授の絶大な賞賛を受けながら、私は二人に尋ねた。

「私が兵器と戦っていた時、二人はどうしていましたか?」

「もちろん前線を見守っていたよ、いつ攻撃が来るかわからないからね。」

「ただ今回はあの兵器以外は、攻撃していなかったね。」

「そうだ!!少し前に研究所内のパワー・ストームのコアが、膨大なエネルギーを発したんだ。それで一時パニックになったんだ。」

「ええ、その時はもう爆発するのかと思いましたよ。」

 私はマークの言葉に閃くものがあった。

「実は兵器と戦っている時、お前は平和を求むかという声がしたんです。私が答えると物凄く力がみなぎって、それで兵器を倒すことが出来ました。」

「何だって・・・。」

 マークは絶句すると、咳払いをして「ついてきてくれ。」と私に指示を出した。私がテグー教授がついて行くと、巨大なパワー・ストームの結晶が保管されている所についた。

「これは・・・?」

「これが想像平和研究所の大きな研究テーマにして、想像平和研究所の動力源、パワー・ストームのコアだ。」

 私は結晶の大きさと放つ光の神秘さに心を奪われた。耳元でテグー教授が囁く。

「凄いだろ、これがパワー・ストームだ。この結晶には意思があることが解ったんだ。」

「それは我々と同じようにという事でしょうか?」

「そうだ。以前の研究でパワー・ストームの力を浴びたとある研究者が、巨大な魔神になって暴れた挙句亡くなった、このような事例が過去に多く起きている。その疑問を追求していたある時、私もパワー・ストームの声を聞いた。」

「声をですか?」

「ああ、何故私を調べるとね。私が正直に答えると、パワー・ストームは『それは全て私が決めたのだ。』と答えた。つまりパワー・ストームは使用者を自ら選んでいるという事だ。」

「つまり意志にそぐわなければ、膨大なエネルギーで潰される・・・。」

 私はあの時死んでいたのかもしれないと思い、今更命拾いしたと思った。

「でも私はパワー・ストームに感謝している、平和な世界のためにエネルギーをくれた事を。そしてアゴノを受け入れてくれたことに。」

 するとほんのりとパワー・ストームが煌めいた。私はその煌めきに誓って、平和を求める意志を持った。









 『新兵器・キメラヘッド破壊、パワー・ストームの奇跡発生。』

 自分の部屋で新聞の一面記事を見ていた僕・カケルは、その記事を見てため息をついた。僕はまたお父様の機嫌が悪くなると思った。僕のお父様はダーク・サイエンスの総帥J・バレットである、お父様はパワー・ストームの力を人類の繁栄のために惜しみなく活用した。しかしパワー・ストームの強大なエネルギーをコントロールするために、パワー・ストームを闇に染めた。そして誕生したのがダーク・パワー・ストーム、この世界では全てがこれで動いている。

「ん?この顔・・・吉ノ丸か?」

 僕は想像平和研究所のサイボーグ・アゴノの写真を見た、それは孤児院時代の親友・吉ノ丸にとても似ていた。そもそも僕が何故あの孤児院にいたのかと言うと、僕の教育と世話のために、お父様が孤児院を買収してくれたからだ。そもそも僕は孤児ではない。

「まさかね。今頃どこかで貧しく生きてるか、野垂れ死にしてるに決まっている。」

 僕は新聞を折り畳んで机の上に置くと、窓の景色を見た。いつかお父様の後をついで、この世界を更に繁栄させる。それが僕の一生の目標だ・・・。


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始まりの嵐・アゴノ誕生 読天文之 @AMAGATA

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