他薦です!
テハイザ王都、書庫。壁中に並んだ本棚はほとんどの段に隙間なく書物が並べられている。それぞれの棚には長い梯子がかかっており、天井まで届く棚の上段の書を取るにはこの梯子に登れば良い。
この書庫は紙の劣化を防ぐため採光が限られている。まだ昼だというのに薄暗い部屋の中では卓上に光が灯り、その明かりの下で幼い少女が高く積まれた書物に一つ一つ整理番号をつけていた。
「ねえクルックス兄さん、これ全部新しいのなの? 今年の?」
少女は顔をあげ、本棚の梯子の方へ叫ぶ。すると梯子の上から慣れた足取りで青年が数段降りてきた。
「そうだよ。下の方へ入れられるようにいまこっち整理しているから、スピカは場所があくまで適当に読んでていいよ」
「去年はもっとなかった? 少なくてもう全部読んじゃった」
「相変わらず早いなぁ。どれが面白かったのかな」
スピカは編み込みにして首元で結んだ髪の毛をいじりつつ、悩ましげにこっちの書物を持ち上げては置き、あっちの書物を持ち上げてはうーむと唸っている。それぞれの書には短い紙切れが挟まっており、紹介文があったはずだ。
「短いのはね、これがよかった。パズルを解くみたいに、謎を解いていくの」
「閉ざされた扉……なら開ければいいさ/流々(るる)様」(ミステリー)
https://kakuyomu.jp/works/1177354055361716578/reviews/16816410413890919865
紹介文:悔しいはずれた! あなたも挑戦して!
「あとこっちも楽しくて好き。おじいさんが考えていることがとてもとても思いつかなそうなことなのだけれど、とにかく女の子と男の子の出会いに一生懸命なんだけど、うん、おじいさん一人で頑張ってるのが」
「滝澤拓史の第二の人生/宇部 松清さま」(異世界ファンタジー)
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紹介文:求む続編! 最強タクシー現る
するとクエルクスはスピカが持っていた本の下にあった黄昏色の表紙の薄い本を指さした。
「僕はそちらが好きかな。何だろう、語り口も優しくていいのだけれど、読後にすごく静かな気持ちになるんだよね。大事なことを考えさせるというか。スピカにはまだ早かった?」
「みーくんは今日も夕陽を眺める (改訂版)/ゆうすけさま」(現代ファンタジー)
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紹介文:きっと夕陽を見つめる時の気持ちが変わる
スピカはふるふると頭をふると、あたしも好き、と大きく頷いた。ぱらぱらと改めて頁をめくり、次の書物へうつる。
「あ、そうだ。まだ読み途中だけどね、気になっているのがこっち。気づかないって強いわね。兄さんとかこの手の人たちの仲間入りできそう」
「公家顔君と木綿ちゃん ~頼れる親友は専属恋愛軍師様!?~/ 宇部 松清さま」(ラブコメ)
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恋愛小説というのでクルックスは少し驚いた。兄への評価は別として、スピカのような幼い子供がもうそんなものを読むとは意外だったのだ。しかし当人はにまにまと頬を緩める。
「お腹を抱えて笑っちゃった。あとみんな可愛いの。一人を除いて。あ、いい意味での『のぞいて』よ。ああ、あとこっちも」
もう一冊、読み途中があるらしい。スピカが持ち上げたのは空色の装丁の厚い本だ。空の絵が書いてある。
「天空マンション/ てるまさま」(現代ファンタジー)
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それは現実にいたはずなのに、現実界の中で不思議なことが起こるもの。一人の少女が気がついたら空に浮かぶ街でたった一人でおり、その世界の中でどう行動しようか模索していく……まだ序盤だが、クルックスも気になっているものだった。
もう一冊の書物をスピカが取り上げる。装丁を見て、クルックスはするすると梯子を降りてスピカのいる机に近寄った。
「それは記録書だから別の棚に置くよ。物語のように書いてあるから読みやすいけれど勉強になる。事件の事例研究にもってこいだ」
「こちら水瓶署生活安全課防犯係/薮坂さま」(現代ドラマ)
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紹介文:これほど面白い警察小説はありません
残りの書物を机の下の整理箱に入れると、スピカはぱんぱん、と手をたたいてクルックスを仰ぎ見た。
「ところで兄さん」
「なんだい?」
「兄さん、ユークレースの王女様のお手紙に名前がなかった?」
思ってもみない質問にクルックスは目を丸くする。
「えっと、僕は向こうとは全く関係がないはずなのだけれど」
「ええそうなの? だってロスさんが書いてあったって言ってたもん」
「何かの間違いじゃないかな」
「間違いかな」
自分で見ていないのでわからないが、きっとそそっかしい姫のどちらかが間違ったのだろう、と二人は納得することにした。そもそもクルックスが王族の書簡に出るはずもない。
***
図書館の話をするならなぁと思って『天空の標』のテハイザからお送りします、理由は後で。
他薦です。すみません、ご紹介が丁寧にできず。まだ読み途中もありますが、コンテストも終了間近なのでとりあえず続きが気になっているものの一部も含めてご紹介。
援護射撃になってください! との思いを込めて。
しかし今年は本当に読めている数が少ないです。昨年は長編だけで少なくとも10作は読めていたのに。
重複のご紹介もありますが、もっと読んで! と。しかしこのエッセイはフォロワーさんが少ないので効果薄いかも。力及ばず……の可能性濃厚ですが。
自作の方、今週になってまた読んでいただきありがとうございます。
宣伝は続けておりますものの、私の方はくれぐれもみなさま面白いと思ったら、かつお時間があったら、でよろしくお願いいたします。みなさん疲弊していると思いますし。
しかし自作、文章力も構成力ももっと向上したいと思う次第ですね。コンテスト応募期間を過ぎたので今からの改稿はコンテスト評価には反映されませんが、まだ実力不足なのだなぁと反省します。通過できるかもギリギリっぽいです。片方は無理かな?
さて、残りの時間でもう少し他の作者様の作品も読みたい&いいなと思ったものは読者選考通るよう応援したいです。
あまりうまくご紹介できていない気がしますけれど、掲載作品はどれも面白いのでぜひ。(ご紹介の仕方に不手際ございましたら、お手数ですがご指摘くださいませ)
***
なぜこの二人なのか。図書館以外の理由は。
二人が描きたかったというのに加えて、『天空〜』の「クルックス」を『楽園〜』の「クエルクス」とミスタイプすること数回。
投稿後のものは流石に少なかった(はず)だけれど、下書き段階で何度間違えたことか。言葉の意味は全然違うのに。
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