「動かないで。いま止血する」


「え?」


「なんでわたし遺して死のうとしてるの?」


「え。なんで。ここに」


「あなたが急にいなくなるから。2年間かけて探したのよ」


「そんなばかな。手がかりもないのに」


「あったよ。手がかり。三佐って名前。警察で訊いて、それからあなたと同じ場所に行けるように、とにかく頑張ったの」


「そんな、気軽にできるような仕事じゃないのに」


「わたしはね。追いかけるタイプなの。執念深くね」


「そっか」


「応急措置は終わったわ。死なないから。というか、死なせないから」


「学生生活。また、やってみたいなあ」


「この仕事が終わったらできるわよ。もう、わたしの青春はふわっとした感じで終わっちゃったけど」


「じゃあ、僕が青春しなきゃ」


 担がれた。


「さあ。逃げるわよ。追いかけてくる得体の知れない何かから」


「なんだそれ」


「青春は、なんかこう、そんな感じなのよ」


 虹が出ている。


 綺麗だった。

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ふわっとした終わり 春嵐 @aiot3110

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