第5話 ENDmarker 3.

 腹と左足に、銃弾をくらった。


「痛いなあもう」


 かなり血が出ている。

 これで、仕事も終わりかもしれない。


「まあ、いいかな」


 彼女との学生生活が終わって。2年かけて、内偵をしてきた。必要な証拠もすべて送信してある。必ずしも、自分が生きている必要はない。


「いい人生だった」


 本当に、そうだろうか。


 倒れた。


 床。

 紅く染まっている。自分の血だと気付くのに、しばらくかかった。


「なんだったんだろうな、俺の人生」


 青春もなく。人並みもなく。ただただ、仕事に生きた人生。ほんの少しの学生生活が、唯一の娯楽だった。


「まあ、娯楽があっただけ、ましか」


 なんとかして、寝返りを打つ。


 空。


 さっきまで降っていた雨が、やんでいた。


「彼女と別れたときも」


 こんな感じだったっけ。なんか、記憶が混濁してきた。走馬燈。こんな感じなのか。


 目の前に、彼女がいる。

 死ぬ前に、会えたらいいなと、ちょっとだけ思っていたから。嬉しい。


 ふわっとした、終わりかただけど。


 彼女に会えて、よかった。

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