三人で手を繋いで。
* * *
たどり着いた会場は、もう既に人がかなり集まっていた。
ざわざわとした音が、屋台から漏れる灯りと混ざり合って、とても賑やかで楽しそう。胸の奥がそわそわするような、ワクワク感にスキップをしてしまった。
「絶対舞白、はぐれないでよ」
「まさかの名指し」
「あー、まあ、一番舞白が危ないよね」
軽やかな笑い声。
「茜まで! そんなにわたし、迷子になりそうなイメージある?」
むうっと頬を膨らませて二人を見上げれば、二人に片方ずつ突かれてしまった。
「うーん、そういう意味じゃないけど、そういうことにしておこうかな」
困ったように笑う茜に、どう意味なの、と迫れば、苦笑で返される。
「あんた、危なっかしいのよ」
「じゃ、手をつなごうよ! そしたらはぐれないかも!」
「かも、か」
「かも、ねえ」
「もう、二人とも!」
再び頬をむうっと膨らませて拗ねた振りをすれば、ごめんごめん、と謝られる。
「じゃあ、舞白を真ん中にして手をつなぎましょうか」
「わーい、二人と手をつなげる!」
「迷子になりやすいから、念には念をね」
「薫ー!」
ケラケラとひとしきり笑うと、薫ははい、と手を差し出してくれる。
それを掴めば、今度はそっともう片方の手を茜が握ってくれた。
二人の手は、温かい。薫の手は柔らかくて、茜の手はがっしりとしていた。
「じゃあ行こうか」
「あ、わたし綿あめ食べたい!」
「俺はたこ焼き食べたいかも」
「ちょっと、花より団子って言葉、知ってる?」
そう言いながらも、薫も楽しそうに笑っている。
茜も、もちろんわたしだって、楽しくて笑っていた。
忘れてたんだ。
夜は、危ないってことを。
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